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第四百七十七話 背が伸びたニーメ

「うーん……もうちょっと加熱が必要かなぁ?」

「これくらい?」

「うん! ありがとうマーナ!」

「えっへへー。お役に立てて何よりだよ」

「おーい」

「次は、曲げだね。少し離れててね」

「うん!  がんばって!」

「おいってば!」

「わわっ!? あれぇ、お義兄ちゃん?」


 ようやく気付いたニーメ。

 俺はニーメの鍛冶工房に一人到着すると、少し前から声をかけていたが、気づいてもらえなかった。

 いや、ニーメだけではない。制作物を生業とする者にとっては作業こそがすべて。

 本来なら途中で茶々を入れるのは気が引ける……いや軽い気持ちではないから茶々を入れているわけではないのだが。


「大分熱中してたな。何作ってるんだ?」

「お義兄ちゃんが帰ってくるってきいてたから、新しい装備だよ! また直ぐに出かけちゃうって聞いたし。

ちゃんと守ってあげれる装備を作ってみてるんだ。あ、そうだ。はい、これ」

「うん? これは……手袋か? む、これはゴムっぽい感触だな」

「絶縁体を作ってみたんだ! なんか面白いおじさんたちにそういう道具がないかきかれて」

「そっか、多分あいつらだな……ありがたく使わせてもらうよ。俺の紫電の事は誰かから聞いたのか?」

「うん。ハクレイのおじいちゃんから。心配してたよ?」

「何から何まで根回しがいい爺さんだ。まったく、頭が上がらないな。大切に使わせてもらう。

後、これは俺からのお礼とお願いだ。ルーンの安息所に新しいお菓子を作ってある。

鍛冶に夢中になるのはいいが、ニーメはまだ子供なんだから、ちゃんと……あれ、ニーメ随分と大きく

なったな」

「えへへ。僕だっていつまでも子供じゃないよ! でも、ごめんなさい。ちゃんとご飯は食べるよ! 

お姉ちゃんにも怒られたし」

「ねぇねぇルイン。旅の話聞きたいなー。だめ?」

「マーナ。そうしてやりたいのはやまやまだが、やること山積みなんだ。そうだ、代わりにお願いがある。

ココットの装備品……みたいなものを拾って来たんだが、マーナが取り付けてみてくれるか? 

ココットの事だから暴れだすってことは無いと思うが、何かあったらすぐ連絡してくれ」

「うん! 面白そう! ココットちゃんにつけておくね。へぇ……ただの木の板みたいだけど」


 俺にもそう見えるんだが、おそらくこれは封印の一部だけを解除するものだろう。

 全ての木札を手に入れるのは厳しいと思うが、部分的に解除すれば、ココットも頼れる町の兵士には

なれるかもしれない。そう考えていた。


「さて、元気な顔も見れたしそろそろ行くよ。ブネとハクレイの許にもいかないとなんだ」

「ねえお義兄ちゃん。リル兄ちゃんやアルカーン先生やベルドお兄ちゃん、イーファ王様はまだ戻ってきてない?」

「イーファたちは古代樹の図書館へ調べに行ってくれているままだが……連絡はきていないな。あっちは

ドーグルがいるから心配してはいない。アルカーンさんは能力異常者だ。万が一はないだろう。心配なのは

ベルドたちとリルたちだな。無茶してなければいいが……」

「そっかぁ。僕ね、みんなの防具を作りたいんだ。でも材料があまりなくて」

「……その問題ももしかしたら解決できるかもしれない。

だが、今はそれより先に……」

「あ、引き止めちゃってごめんね! 僕ごはん食べてくる。いこ、マーナ」

「うん!」


 大きくなったニーメの背中を見送る。思えば知り合ってから随分と年月が経った。

 それでもニーメは変わらず、素直でいい子のままだ。

 神兵……ニーメも神兵の子なんだよな。この先、相まみえる事もあるかもしれない。

 敵か、あるいは味方となりえるのか。

 イネービュがつぶやいていたロキという名前……引っかかるな。

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