第四百七十四話 カボチャプリンと酸味をいかしたパフロールクレームアンジュ風クリーム
ルーンの安息所調理場に立つ俺。
カボチャを下処理して切った後、茹でて柔らかくする。
「ジェネスト。アニヒレーションズ頼む」
「あなたは私に野菜を切れというのですか?」
「あれ? お前の武器だと野菜を細かく切るのは苦手か?」
「何を言っているのですか! こんな野菜位、粉微塵にしてやりましょう! アニヒレーションズ!」
「ほい、ありがとう」
「……しまった。乗せられてしまった……」
ジェネストに微塵切りにしてもらったカボチャを、ピューレ状態にしていく。
さすがにいいカボチャだ。香りがいい。
あとは少しずつ残りの材料を混ぜ合わせていき冷やせばいい。これで一つ目は完了。
妖牛のクリーム。こいつを手に入れられたおかげで
クリーム系は作りやすい。そして、ここには多くの能力者がおり、そして皆スイーツが好きだ。
「サラ。邪術の糸ってどこまでこまかくできる? こんな風に網状にして細かくできるか?」
「真化すればできるかも。面白そうね」
「ファナには生地を作ってもらいたいんだ。以前メロンパイ焼いたの覚えてるか?
あれを作る過程で、今度は中をもっと空気が入るようにしたい」
「やってみるね。うまくいくかなー?」
「ベルディアは俺と生クリーム作りだ。冷やしながらかき混ぜるぞ」
「わかったっしょ。メルちゃん起こさないように静かにね」
それぞれに担当を割り振ると、一人でやるより何倍も早く準備が整う。
みんな真剣な表情だ。やはり女子は甘い物への思い入れが違う。
しかし……男でもそういうタイプは多い。現に先生も師匠も甘い物好きだ。
俺自身も甘味処は嫌いじゃない。辛い方がどちらかというと好みだが……。
「生クリーム、泡立ったな。角が立てば十分だ。このままスッパム果汁を混ぜると分離しちゃうから、こっちは煮詰めてジャムにする」
「何してるカベ? 手伝える事はあるカベ?」
「あー、ウォーちゃんだ。おはよーウォーちゃん」
「もう仲良くなったのか。さすがベルディアだな。ウォーラスはそうだなぁ……まてよ?」
妖牛クリームを手に入れてからずっと考えていた。
ヨーグルトが食べたいと。
しかしヨーグルトは菌を苗床にして作らないとできない。
自然界に存在する菌を適当にやってもうまくいかないし、微生物次第では毒にもなるだろう。
しかし……ウォーラスならあるいは。
「なぁウォーラス。毒を抜ける能力って微生物なんかにも有効か? 発酵章句品ってのを作るのに
どうしても毒性かどうか調べたりしたいんだけど」
「できるカベ。どんな毒でも除去できるカベ。でも強い毒だと動けなくなるカベ」
「あんた、凄いのね! 変な魔族だと思ってたけど、尊敬するわ! ルインに毒無効がついたのね!」
「お医者さんに毒抜きって、この町の医術能力やばくない?」
「メルザの命を救ってくれたり、道中色々助けられた。サラ、変な魔族とか言っちゃだめだぞ」
「はぁい、ごめんねウォーラス。そんなつもりで言ったんじゃないのよ」
「平気カベ。役に立てるだけ嬉しいカベ」
ウォーラスとベルディアにヨーグルトの制作依頼を出してみた。
必要となるのは妖牛クリームの殺菌、微生物などがいるであろう果物や葉っぱなどの表面、それから
適切な温度だ。
この安息所には既に多くの器具機材がある。ほぼニーメにとマーナによる制作物らしい。
あの若狭でこの器量。そのう聖剣なども作ってしまうんじゃなかろうか。
聖剣といえば……ラーヴァティンは持ち帰ってきてある。
これはかなりよくない剣なので、ほぼ封印してあるに等しい。
一度ブネに見せて確認しないといけない。
「ヨーグルトは二人に任せるとして……ファナ、どうだ?」
「うん、うまくいったわよ。これくらいの大きさでいいの? 小さいけど」
「ああ。今回はパイじゃなくてパフロールクレームアンジュ。パイ生地で巻きやいた
ものの中にクレームアンジュを添える。本来ならこのクレームアンジュにはヨーグルト
と生クリームを混ぜたいところなんだが、ヨーグルトはそうそう作れないので
クリームとジャムのみで代用しよう」
「ごくり……お、おいしそうな響きね。私でもそう思うなら、ライラロさんがいたら
大変なことに……」
「あれ? そういえばライラロさんどうした? 風斗車がぶっ壊れた報告をしてないんだけど
見当たらないな」
「さぁ……何せライラロさんだし」
ファナと首を傾げながら、お菓子をせっせと作り完成させ、保存した。