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第四百七十一話 妖紫電真化 一つ上の真化 耐えられない肉体

【妖紫電真化】


 全身に電撃をまとい、青黒い髪をなびかせながら、眼からは赤い光を発し、二本の剣を構える

それからは、正気の色が失われていた。


「やれやれ、相当たまっておったようじゃな。今のお主を受け止めてやれるのはわしだけだろうて……

その姿、妖真化、妖神真化の上をいくか。その若さにしてその器量。よい若者に巡り合えたもんじゃ」

「ウウ、ウアアアアアアアア!」

「よいよい、その力、受け止めてやるぞい。この魔王、ハクレイがのぅ」


 一方のハクレイは、全身に白き鎧を身に纏う老人。だが―――――徐々に鎧と一体化し――――

 やがて鎧と完全に一つとなる。


【白血鎧魔】


 鎧にまるで血液が送られるが如く、白き血が鼓動する。

 その姿は魔王と呼ぶにふさわしく、ルインの形態の三倍はあろう大きさとなっていた。


「妖赤星の彗雷撃・花電」


 電撃を発する花びらが無数に広がる。それはルインがメルザへと送った洞庭藍の花をか辿っていた。

 洞庭藍は青紫色の花をつけるため、あたかも花が咲いたように美しいが、攻撃の威力は美しいなどという

表現でとどまるものではない。

 花が舞い落ちた地面が黒こげとなっていく。


「むぅ。白血吸収!」


 対するハクレイは、無数の舞い散る電撃を吸い取っていく……が、数が多いようで身動きがとれない。


「乱れ赤連閃」

「ぐう、うけきれぬ。わしに第二の鎧を使わせるか!」


 中距離から恐ろしい速さで、コラーダ、ティソーナから斬撃が飛んでくる。

 それを見てとっさにハクレイは、左腰に手をあて何かの術を施した。

 すると――――白き鎧だった形態が変わり、赤き形態へと変化する。


「やれやれ、年はとりたくないわい。これくらいの連撃であれば――――なぬ!?」

「紫電清霜……サルバシオン」


 電撃をまとうルインは、あっという間に距離を詰めてハクレイの懐に迫る。

 その懐に強烈なサルバシオンを叩き込んだ! 大きく後方へと吹き飛ぶが、しかし……。


 斬撃は通らず、ルインは近づいたハクレイに捕縛され動きを止められた。


「もうよいじゃろう。お主の気持ちはわかった。そう、自分をせめるでない」

「ぐぅ……あああああ! 俺は、俺は! 俺のせいで、俺のせいで! メルザは……

自分の両腕を失ったんだ。俺がいなければ、俺さえいなければあいつは! ……もっと幸せに生きれたんじゃないかって。もっともっと笑って生きれたんじゃないかって、そう思って……なんで何度も俺を助けてくれるんだ。あいつを助けなければいけないのは俺なのに、だのに、どうして! どうして……そんなに優しいんだ……」

「よい。今はわしとおぬしだけだ。思い切り腹にたまったものを吐き出すがよい。男だって、泣いていい時はあるものじゃよ。わしはもう、とっくに枯れ果てたがのう」

「ううっ……俺はどんな顔をしてあいつを見送ればいいんだ。どんな顔をしてあいつを迎えればいい?」

「いつも通り、その少しも笑わないような表情で迎えてやればよい。そうすればきっと、あの娘は満面の

笑顔を向けてくれるじゃろう。お主があの子を生涯支えたいと思う気持ちと同様、あの娘もお主を頼り、支えたいと思っておる。己の非を責めてほしい気持ち、わしには痛いほどわかる。

じゃが――――」


 ハクレイがルインの両腕をつかむと、電撃で焼け焦げ、ボロボロになっていた。


「もっと自分を大事にせい! 今のお主にその技は早すぎる! まったく、これではあの娘に余計な心配

をかけてしまうじゃろう」

「っ痛。けど、気持ちが抑えきれなくて。メルザが何よりも大切。それはわかってる。でも、俺には大切な仲間ができた。みんな救いたい。救いたいんだ」

「ならば仲間と共に強くなれ。どれだけ背伸びをしても、一人救える範囲なぞ広くはないんじゃ……。

おぬしは仲間を思うがあまり、仲間を救うために命を削りすぎておる。

シフティス大陸で改めなければ、命を落とすかもしれんぞい」

「……ああ、わかってるつもりなんだ。けどさ……いや、ハクレイ。受け止めてくれてありがとう。スッキリしたけど……だめ、だ……」


 人形のようにどさりと崩れ落ちるルインを支えるハクレイ。

 まるで亡くした何かを愛でるかのようにルインを抱擁する。


 彼もまた、大切な者を多く失ったのだろう。

 訓練場の天を、ハクレイはずっと見上げていた。

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