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第四百六十五話 スピアとリンドヴルム

 スピアを連れて町を案内する三人。どこもかしこも人がいて、少し警戒はするものの、説明を

聞くたびにその警戒を解いていく。

 スピアが定義するところの人族は、殆ど存在しなかった。

 現在この町は、妖魔とモラコ族、そして亜人、獣人が殆ど。

 ルクス傭兵団やカッツェルの町人も数名いるが、魔族と亜人と人、魔獣などが

入り乱れる不思議な空間だった。

 そして極めつけが今目の前にいる者である。


「三人とも、いつまで呆けているのだ。そのような体たらくでは丈夫な子が産めぬぞ」

「だってだってぇー、ルインが戻ってこないんだもん!」

「弓の練習はしてるけど、町の中じゃね。変身術も鈍っちゃうわよ。ニンファにでも会いに行こうかしら」

「走り込みはしてるっしょ。シュッシュ」

「……おまえら普通に話してるけど、こいつ、とんでもない化け物じゃないか?」


 そう、目の前にいるのはブネ。神の遣いにして高い神格を誇り、様々な奇跡を起こせる異質な存在。

 竜種であるスピアが、直感的に化け物だと思うのも無理はない。


「ほう、火竜数体の混合生物か。面白い。それになかなか腕も経ちそうだ。貴様もよい子が産めそうだな」

「ブネって子供産ませることばっかりっしょ。しまいにはパモやドーグルにも産まさせそう」

「子はよいものだ。ルインが戻ったら……ああそうだ。あのハクレイと申す者と茶の約束があったのだ。

地下にある茶室とやらに行く。またな」


 そう告げると足音を立てずにすーっとどこかへ移動するブネ。

 それを見ていたスピアの顔は真っ青だった。


「この町にはあんなのがゴロゴロいるのか?」

「ゴロゴロはいないけど、何人かはいるわ。大分出払ってるけどね。

神々の世界も大変らしいのよ。さぁ次は温泉エリアに行くわよ」


 案内を続ける三人に従い、きょろきょろと町を見渡すスピア。そして……何かの鳴き声を聞く。

「ギュイオーーン」

「お、おい。今の鳴き声はなんだ? 他にも竜か何かがいるのか?」

「え? ああそっか。あんた竜なんだよね。それならあっちでもいいのかも。

でかすぎると入れないけど大きさは? まぁ人型でも入れるけど」

「割と自由に変えられる。どんなのがいるんだ?」

「うーん。ル―やカドモス、ピュトンは今いないから、リンドヴルムかしらね。おとなしい竜よ。

とんでもない能力を持ってるけど」

「そ、そうか。あっちに行ってみてもいいか?」

「いいわよ。私たちも温泉入って来るから、ゆっくりしてきてね。入り終わったら

中央の木の中に来て。美味しい食べ物用意するから」


 少し目を輝かせながら温泉へと走っていくスピア。よほど竜種が恋しかったのだろうか。

 急ぎ温泉へと突撃すると、横に伸び切った蛇のようなものがいた。

 すっかりルーンの町に居つくようになったリンドヴルムは、海底には戻らずほぼ温泉を根城にしている。

 突然の来客に少々驚いたようで、一瞬消えたものの、同族の匂いからか、すぐに姿を現す。


「ギュイオーーーーーン!」

「あ、ああ。よろしく。スピアだよ。へへへ、嬉しい。やっと竜に会えた」

「ギュオー?」

「うん。仲間はみんな……ここに来たのは自分がどうしたらいいかわからなくて……」

「ギュオーーー! ギュイオーー!」

「そっか。そうだよね。本当に皆いいやつばっかりだ。自分がどうしたいのか、どうしていけばいいのか。

教えてくれないかな」

「ギュイオーーーン!」

「好きにしろ。ここは自由だって? あはは、そうだな。あいつらに……感謝しないといけないんだよな。

でも素直になれないんだ」

「ギュオーーー!」

「それは私もだって? 面白いな、お前。なぁ、ここに来ればまた話せるか?」

「ギュイ!」

「そっか! それじゃまたくるな!」


 足を引きずりながら温泉を離れようとするスピア。


「ギュオーー、ギュイオー!」

「え? 怪我してるなら温泉につかれって? そうすると直りが早い? わかった。そのまま

水浴びする感じ……か?」

「ギュオー」

「ふ、服を脱がないといけないのか。わかった」


 こうしてスピアはしばらくリンドヴルムとは素直に語らい、親交を深めるスピアだった。

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