第四百六十三話 増えたメンバー
突如封印の申し出に驚いてレミを見るが……こいつは前から入りたがっていた。
当然いれてくれるよね? という顔をして見返してくる。
「アビオラ。言いにくいんだがこの封印はそんな便利すぎることばかりじゃない。
俺が死ねば封印されてるやつは消滅する。つまり死ぬだろう。逃れる術はないらしい」
「そりゃ本当か? 参ったな。おいレミ、どうするんだ」
「別にぃー? 構わないしー。どうせ諜報活動で失敗しても死ぬし、常闇のカイナに潜入してる時点で
命なんて無いようなものだしぃ? だから天国住まいに入りたーいのっ!」
「だそうだ。ちなみにその封印をお前さんが消滅させることも可能か?」
「……可能だ。人質としては十分ってことか……まったく、嫌になるくらい頭がきれるな、あんた」
「俺ってよりはもっと上だな。あんたにも会ってもらう事になる。それともう一つ。レミから俺が聞いた
話は口外しないことを誓おう。なんならそちらも何か条件をつけるが」
「いや、いい。俺たちの情報はどのみち隠し立てできるようなものじゃない。今のトリノポートは
ベッツェンが崩壊してからというもの、みな生きるために必死に努力している。俺たちだけが
町に籠って非協力的でいていいわけがない。キゾナ大陸と協力できない以上、あんたらと協力して
バルバロッサの町にも支援を願うべきだ」
「お前さん、やっぱり王の器だな。いいだろう、レミを通じて資材などの手配はしよう。
差し当たって一つだけやってもらいたいことがある」
「なんだ? こちらもシフティス大陸に向かわなければいけない用事があるんだが……」
「そのシフティス大陸での用事だ。直ぐ親書をしたためる。こいつをカルシフォン・ヴァン・ヨーゼフ
にもって……」
「おい今なんて言った!?」
「うん? だからカルシフォン・ヴァン・ヨーゼフにもっていってくれと」
カルシフォン・ヴァン・ヨーゼフ……いや、まさかな。ヨーゼフという名前はそれなりにいるだろう。
だが……だめだ。ふせておこう。
「……わかった。そいつはどこにいるんだ?」
「シフティス大陸にあるカルシフォン家当主だ。アビオラからの親書と言えば受け入れてくれるだろう。
中は別に見ても構わん。暗号化してあるけどな」
「いや、見るつもりはない。少しシフティス大陸について教えてくれ」
しばらくアビオラからシフティス大陸について話を聞く。途中メルザは眠くなったのか、俺によりかかり
眠ってしまった。
細かい話を一通り聞き、アビオラとのやり取りをする手段を決めた後席を立った。
メルザがはっ! と目を覚ます。
「それじゃレミニーニを封印する。本当にいいんだな」
「憧れの我が家ーっ! レミはついに手に入れちゃうんですね、やったー! あ、アイドルっぽいほうが
いいのっかなぁー? それともそれとも、レミちゃんぽい方が好みー?」
「どっちでもいい。俺に封印されればお前は命を取られたも同然。その覚悟がある者を疑う事はできない」
「……本当に女子に甘いんですね。でもそこがルインさんのいいところ! レミ、封印されます。優しく
してね……」
「誤解されるような言い方はよせ! サラとかが聞いてたら吊るし上げられるわ! いや待てよ。
どのみちレミを封印して帰ったら、吊るしあげられるんじゃないか、俺」
「あー……俺様、変な女ひっかけてこないよう、言われてたんだった。へへへ、まーいいか!
レミは変な女じゃねーしな!」
ふうとでかいため息をした後、レミをつついて封印した。思えば封印をするのは久しぶりな気がする。
随分とアクリル板もたまったし、また一度モンスター牧場へおろしに行かねば。
相変わらず強力なモンスターは封印してもなかなか技を使用できない。
妖魔の戦い方を忘れるなと、フェルドナージュ様あたりにどやされそうだ。
「わわーっ、本当に快適ー! 何これ、すごーい! どうなってるの、ここ。これなら何時間でも
眠れそうー」
「いいなー。俺様も入ってみてー……」
「こいつは驚いた。お前さん、本当に化け物だな……」
「それはいいとして、あんたはこれからどうするんだ?」
「バルバロッサの町まで送ってもらうつもりだ。それじゃまた近いうちに連絡を。
直ぐにシフティス大陸に行くわけじゃないだろう? また一杯やりながら話そうじゃないか」
「そうだな、こっちには無い酒でも持っていってやるよ。またな」
アビオラに別れを告げ、ルクス傭兵団に頼み俺たちもルーンの町に送ってもらう。
長い旅路を終え、俺たちは無事戻る事ができた。
道中色々な事があったが、この旅で得たものはとても大きかっただろう。
町に戻ってもまだやることはある。
ゆっくりしている時間は無いのだから。