第四百六十二話 組織の名は
「うめーぞ。これ、ルインも食っとけよ! レミ、もっといっぱいねーのか?」
「あるよぉー。うふふ、やっぱりメルザちゃんかーわいい。レミと一緒にアイドルしない?」
「黙って食ってろって言ったろ。これから大事な話をする。この場所でなければとてもじゃないが話せない
内容だった。レンズでも不可能だ」
「ここはルクス傭兵団のアジトだが、そこまで安全なのか?」
「当たり前だ。ルシアの先代、ルシオはその身一代でルクス傭兵団を立ち上げ上り詰めた男。
あらゆる諜報活動を行うが故にこのアジトには鉄壁の防護壁と侵入を許さない仕掛けが無数にある。
正面から入る以外術はない」
「そうだったのか。先代の話までは知らないが、ルシアは確かに信用できるし優秀だ。運の良さがずばぬけて
いるようだが」
「ああ。それで話を戻すぞ。俺たちの組織についてだが……」
「それより前に聞かせてくれ。なぜ俺にレミをつけた。なぜキャットマイルドと戦わせたんだ。
その答え次第によっては取引に応じるつもりはない」
「そいつは簡単な話だ。お前さんの実力を知るため。それとお前さん自身で決着をつけた方がいい相手
だからだ」
「俺の実力?」
「お前さんの情報はいくつかおかしな点が多くてな。それに、確実に殺したはずの奴が生きていて、傭兵団
で活躍しだした……なんて話が出てから、俺たちの組織も、常闇のカイナもお前さんを相当警戒していた
のさ。足取りを辿るのが容易ではなかったし、おまけにお前さんがジムロを殺したうえ、行方不明
になっていた。今度こそ死んだと思った矢先にまた現れたわけだ。おっとこれはキャットマイルドにしか
知れていない情報。常闇のカイナにはまだばれちゃいないはずだ」
「成程。そっちの言い分は最もだ。だがもっとスマートに実力を見る方法はあったんじゃないか?
あんたが直接対決を挑むとか」
「見たかったのは実力だけじゃない。あんたが信用できる人物か、その人となりをこいつに確かめさせた
んだよ」
「えっへへー。アイドルはぁー。観察力が命なのよーだ」
「にしてもまさか俺たちの方がはめられてるとは思わなかったがな。がっはっは。やるもんだ」
「簡単に信用出来ないってのはそれ以外にもある。レンズってのがそもそも信用できない気がしてるんだ」
「そりゃそうだろう。ライデンの影響でレンズの信用はがた落ちだ。奴に取り込まれていた者は多い。
こっちでも信用できる奴を少しでも募ってるがどこまでつながってるかわからん」
やはりか。レンズで活動して資金を得ようと思っていたが、難しいようだ。差し当たってシフティス大陸
までの軍資金くらいならあるが。
「ん? ああ、レミ。ちゃんと金を渡せ。換金してきたんだろう?」
「わっすれてたぁー! はい、これ。レギオン金貨百七十二枚。ちゃんと数えてあるよー!
袋はアイドルのサイン入り!」
「なんだ、その途方もない金貨は……」
「今回の依頼の報酬だ。本来なら聖堂でお前さんがキャットマイルドを倒したら、その場で
支払うつもりだった。あの場でレミが助勢する予定だったんだが、ややこしくなっちまった」
「そうか、俺がレミをニニーだと先読みしたからか」
「本っ当にばれると思わなかったぁー。ニニーちゃん驚きだよぉーっ」
「まぁこいつがあの場で取り押さえられていたとしても、さして問題じゃなかったがな。お前さんは女に
手を出すような男じゃないという噂だし」
「ぐっ……確かに。俺は手を出さないだろうが、ファナやサラやベルディアが……全員いないんだった。
参ったな、これは弱点か」
「俺様だって悪い女がいたら戦うぞ! けどよ、レミは最初からわりーやつには見えなかったんだよな。
俺様にはよ」
「メルザちゃん……レミニーニの一番の友達はあなたよぉーっ!」
「わわ、抱きつくなって……なんかいい匂いするけど」
「やれやれ。それでだ。俺たちの組織……連光の法栄というんだが、お前さん方に正式に協力を申し入れたい。組織に入れとは言わん。だが情報を共有したり、互いに争わないようにしたい」
「具体的にはどうすればいいんだ? 俺たちも出来る事ならあんたらと争いたくはないし、常闇のカイナ
をどうにかしたいのは事実。情報も欲しい」
「レミニーニを引き取ってくれ。あんた、封印できるんだろ? こいつはあらゆる変化を得意とする。
あんたはあらゆる生物を封印出来ると情報にある。つまりあんたとレミニーニが組めば、どのような
諜報活動も行えるし、足もつかんだろう。最強のコンビになると思うが」
突然の封印申し出に驚かされた。これは……。