第四百五十六話 黒衣を纏うサイクロプス 神暗鬼キャットマイルド戦
キャットマイルドが巨大化し、そして――――漆黒の衣を身にまとう、巨大なサイクロプスが目の前に現れた。
手には禍々しい剣を携え、暗黒の気配が満ちているそれの表情は黒でそまっていた。
変身した影響か、動きは今のところみられない。
「殿方殿。大丈夫か?」
「ああ。動けそうだ。それよりあいつは元々体術使い。剣は不慣れだと思う。
あの形態からどんな体術を使用するかわからないが……警戒を」
「承知。ラーヴァティンの攻撃を直接受けぬように、お気をつけて」
「大丈夫だ。俺がひきつける。そのすきに攻撃を」
「正気か? 攻撃なら私やジェネストが受けた方が……」
「問題ない。全て……回避してみせる。剣戒! 封剣!」
「パッ! コラちゃん参上ら!」
「にゅいーん。てぃーちゃん参上でごじゃろ」
「……こいつも喋るようになったんだった……まぁいい。今は、対峙する相手が強大だ。どっちも頼むぞ」
「あちしいやなのら!」
「てぃーちゃんも嫌でごじゃろ」
「……剣に嫌われた……」
「別にあちし嫌ったわけじゃないら! 扱い方、もっと学んで欲しいら!」
「てぃーちゃんも同じでごじゃろ。名剣の扱いが悪いでごじゃろ!」
「そういってもなぁ……まぁまずはお前らを頼らず頑張ってみるか。出しとくから勝手に消えないでくれよ」
「あちし、ちゃんと見ておくのら」
「てぃーちゃんは見飽きたでごじゃろ。まだまだでごじゃろ」
「紫電清霜!」
俺の体全身に紫色の電撃のようなものが走る。ルーイズが残してくれたもの。
あの時の感覚……ついに獲得した。待ち望んでいた術系統。雷。
これにより飛躍的進化をするものがいくつかある。
「まず第一……神魔解放!」
神魔解放による電気信号の飛躍化。あらゆる機能がさらに向上する感覚。
身体をほとばしる紫色が濃くなる。
【妖真化・獣化】
真化を経由して更に獣化し、全身を覆う毛が紫色に逆立った。
【真・ベリアール化】
「……あれが殿方殿? あの姿はもはや……」
「魔神、ベリアル。伝承にうたわれるまごうことなき姿ですね。雷炎の貴公子といったところでしょうか」
「それだけではなく殿方殿の本来の形態は海水や氷。まったく、大した方だ」
かつてないほどの高揚感。これが雷を帯びた世界。レピュトの手甲を放出しコラーダを
持たせ、ティソーナを構えながら立つ。獣戦妖魔ルインがキャットマイルドと対峙する。
初手……相手は微動だにしていない。二十メートル程の距離があるが、眼前にいるのと変わらない感覚だ。
「多分こう……か? 紫電脚! ……やべっ!」
獣化の脚力を活かし、一気に間合いをつめるつもりが、とんでもない方向まで突き抜ける。
これはかなり修行しないとコントロールがむずい!
それを見てジェネストとクリムゾンに少し笑われる。無理もない。技に遊ばれてる感じだ。
切り返して一気に近づき、眼前に迫る。いや、黒い……瞳さえも真っ黒。
こいつにはもう、俺は見えていないのだろうか?
「グオオオオオオオオオオオオオオ! ルイン、コロス!」
「理性すら捨てて復讐を果たしたいのか、キャットマイルド! 俺を狙え! |トゥルエノ・サルバシオン《雷落の贖罪》!」
雷撃をまとう一撃を思い切りお見舞いする。
【求】の字をてぃそーなとコラーダがそれぞれ紫色の光で切り刻んでいくが……
さして効いている感じがしない。並大抵の防御力ではない。
「あちしの攻撃、効いてない!」
「全然だめでごじゃろ。もっと上の固有技を使うでごじゃろ」
「殿方殿、援護を」
「加勢します」
「少し待ってくれ二人とも。この形態、まだまだ扱えていない!」
二人を制止した俺が考えている事。どうしたらこいつを……キャットマイルドを解放して楽にして
やれるかだった。
俺のせいでこうなった以上、その役目を誰かに譲るわけにはいかないんだと。