第四十三話 ライデンの面会と初めての船旅
翌朝。朝食を済ませるとライラロさんが一人の老齢な男性を連れてきた。
とても良い身なりをしており、紳士的なオーラを放っている。
「こちらがライデン。前にも話したけどあっちでは彼の紹介で来たことにしてね」
「ライデン・ガーランドだ。君がルイン君か。シーザーは元気にしているかね?」
「師匠のお知り合いなんですか?」
「おや? 何も聞いていないのかね? 我々は元々
同じ軍隊に所属していてね。そのメンバーの生き残りだ」
「ライラロさんも?」
「あぁ、彼女は途中から加わったメンバーだがね。
結集時にいたメンバーはバラバラだ。私はその団長で
今はこのベッツェンの近衛隊長をしている」
「そうだったんですか。師匠は何も話してくれないので……」
「ベルディスならそうだろう。奴は昔から人と接するのが嫌いでな。
弟子をとったと聞いたときは驚いたものだ」
ライデンさんはそう言うと蓄えた髭を撫でる……確かに歴戦の将という感じがする。
この人も相当に強いな。
「実はベルディスからも試合を観に来るよう誘いがあったのだが
私はやる事が多くてね。今回は残念ながら行けないが
十分楽しんで来るといい。ライラロからも聞いているだろうが
注意事項だけは守ってくれ。ではまた会おう」
そう言うとライデンさんはあっという間に去っていく。余程忙しい人なのだろう。
俺たちも荷物をまとめて船着き場を目指す。
――――船着き場に着くと、なかなかに大きい船が見えた。
この船で、おおよそ四日程でデイスペルまで到着するらしい。
思っていたよりも近い位置のようだ。
大陸によっては船の移動だと、数か月かかるらしい。
別の移動手段もあるそうだが、詳しくは聞いていない。
「四名様分で料金は金貨四枚となります」
金貨を払うと、憧れていた船に初めて乗った。
前世でも船は乗ったことがなかった。
俺の視力では危ないからだ。
水面に浮かぶものに乗るってこんな感覚か……かなり揺れるな。
ニーメの顔が真っ青だ。これは船酔い確定か。
「出発ーーーー!」
――船は汽笛を鳴らしてゆっくりと陸路を離れていく。
思っていた以上に速度が出るな。風も強い。
メルザは俺と一緒に甲板で魚を見ている。
「すげー、ルイン見ろよ! 食い物だらけだ! ここで暮らそうぜ!」
「いや、水の中じゃ生きていけないぞ……」
「大丈夫だって、土斗で足場を作れば」
「海底がどれだけ深いと思ってるんだよ。水面の底見えないだろ?」
海の下を見る。波は今のところ穏やかだな。
ニーメにはどのみちきつそうだが、ファナがついてるし大丈夫だろう。
俺たち以外にも戦闘用の装備を付けた人や、亜人種? ぽいのが何人かいる。
今回の闘技大会の参加者だろうか? 強そうな人もいる。
だがそれほど変わった装備の人は見受けられない。
やはりあの領域や装備を獲得できる洞窟は特別のものなのだろうか。
ここから先は知らない土地になる。十分注意しよう。