第四百五十一話 喋りだしたコラーダ
戦闘態勢になり、身構える。相手はアンデッドのようなもの。そして何より……今まで
どんな対峙した相手よりも――――速い!
「おせぇゾ! 紫電猛絶閃!」
間合いを詰めるというよりほぼ瞬間移動し、雷光のように切りかかってくる。
斬撃こそ痛みは感じないものの、目なんかで追っていられるような代物じゃない。
先ほどのように感覚を引き上げ、視覚に頼らずどうにか防……ぎたいが半分以上くらっている。
「おらおらどうしタ! かかってこいっつったロ! 感覚でとらえるコツを今すぐつかメ!」
「んな無茶な。あんたどんだけ強かったんだよ! あのギルドーガってやつはそれ以上に強いってのか!」
「笑わせんナ! あいつは街を、メルザを襲ったから半殺しにしてやっタ。逃げられたがナ。
問題はそいつじゃねェ! とんでもねェ化け物がそこにいたんだヨ! じゃなきゃ俺様が死ぬカ!」
「あれよりとんでもないやつだと……くっ、カタストロフィ! ……なんで俺の最強技のうちの
一つをあっさり避けれるんだよ!」
「かーーー、おめーこんなのガ最強必殺技の一ツなのカ。こんなんじゃ
ドラディニア奥地ですら攻略できねーゾ。気合いれやがレ! 神の百や二百くらい
葬れるくらい強くなレ!」
「物騒すぎるわ! 仕方ない……こいつはそうそう回避できないぜ。
リーサルレデク!」
コラーダの固有技、リーサルレデク。この技は一瞬にして相手を貫く。
放てば俺でも目で追うことはできない。
「ほう。武器だけはいっちょ前だナ。だが……武器が泣いてるゼ」
「しくしくでごじゃろ。てぃーちゃんは悲しいでごじゃろ」
「本当に泣いてやがるだト! 気持ちわりー武器使いやがっテ」
「気持ちわりーとは失礼でごじゃろ! 世界に二つとない名剣でごじゃろ!」
「いや、あまり気にしないでくれ。そういう年頃のやつなんだ……ってそれより嘘だろ……
俺のリーサルレデク、初めて止められた……」
「おめー何言ってやがル。予告して撃った上に一直線じゃねーカ」
「いやいやいや、一直線って言ってもいつ飛び出していつ突き刺さってるかも
わからない速度だぞ!?」
リーサルレデクを止めたばかりか、コラーダを手で持ち色々と眺めている。
剣戒をすれば戻るんだが……それどころじゃない。なんなんだ一体。
「ふぅン。確かにいい剣だガ、大分押さえつけてあるナ、ほイ」
「あーーー! だめでごじゃろ! 封印解いちゃ!」
「ふぅーー、あーーーーーーー! もっとわちし、丁寧に扱ってよぉーーーーーーー!」
「はい? ちょっとお義父さん! 何してんの一体! コラーダが、コラーダが!」
コラーダに紫色の何かを流し込むと、剣が震え始め……そして喋った。
そう、コラーダが喋りだしたのだ。一体何を言ってるのかわからないが、俺はおかしくなって
しまったのだろうか。
「ほら、返すゼ。いい剣ダ。もっと大事に使ってやレ」
「もーう失礼しちゃうよぉ。あちし、もっと優しく使ってほしいのにぃ」
「あのー……」
「早く受け取ってくれるぅ? あちしの持ち主さん!」
「は、はい……おいティソーナ、説明してくれ」
「はぁ。てぃーちゃんの静かな暮らしもここまででごじゃろ……」
「あーーー! てぃーちゃん! いつ戻ってきたの? 寂しかったよー! てぃーちゃん!
ねぇてぃーちゃん! あちしよ!」
「おい、剣をしまエ。うるさくてかなわン。続きをやるゾ」
「そうだな。俺もそう思ったところだ」
「えー! ちょっとまっ……」
「剣戒! 封剣!」
今起こった事は気にしないでおこう。気にしてはいけないに違いない。
あとでじっくり考えるとして……今はまず、この強大な相手をどうにかすることに集中しよう。