第四百五十話 ヨーゼフに会え
「おいよく聞けルイン。てめーはメルザを命に代えても守れるよナ。いや守レ。
こいつは俺様の命令ダ」
「いきなりだな。これまでもずっと、守ってきたつもりだ。あいつは俺にとって特別だ」
「特別だト。父親の前で随分と言うじゃねーカ。だが俺様が言いてーのはそーじゃねェ。
あいつは俺様の本当の子供じゃねェ。だが実の娘に変わりはねェ」
「本当の子供じゃない? ってことはここはやっぱり、アルカイオス幻魔とは関わりがないんだな」
「青二才に見えたが、その辺は知ってるようだナ。そう、このインシテッド村は関係ねェ。
メイアの故郷ダ」
「それは……メルザの母親か?」
「実の母親じゃねェ。メルザを拾ったのはメイアだがナ」
「そうか……いや、あいつにとってはあんたらが本当の父と母だろう。それでいいじゃないか」
「おめぇ……へっ、そりゃ当然だがヨ。いいゼ。おめーに俺様の全てを託してやル。
疾風のルーイズ。俺様より速く動けるやつなんテまずいねェ」
「その前に、いろいろもっと話を聞きたいんだが……」
「バカ野郎、時間があるわけねぇだロ。青い木、あったろ?
あれにわずかな力を封印していたにすぎねェ。ここにメルザを連れてこれる程の
奴なら、必ずその、あれダ。言いたくねェ。死ネ!」
「うおい! いきなり攻撃してくるなよ! 確かに娶ったけど、娶る前から俺たち
家族みたいなものだからなぁ。すでに家族はいっぱいいるし」
「何だト? 家族がいっぱい?」
「ほら、ウォーラス」
「かべ」
「レウスさんも」
「友達だ、な?」
「おめー、変わってるナ……そいつアンデッドじゃねーのカ? 何で一緒に
いられるんダ?」
「さぁ……俺が妖魔で封印したらこうなったんだが……もしかしてお義父さんも封印で
きるのか?」
「バカ言エ。無理に決まってル。俺様は既に本体がねェ。時間がない
つったロ。詳しくハ俺のダチだったヨーゼフに聞ケ。多分生きてル。どこにいるかは
知らねーけド。シフティス大陸あたりカ? 忘れるナヨ。
ヨーゼフに俺様から聞けと言われたっていやぁ通じるはずだからヨ。いいナ。
それじゃヤルゼ。本気でかかってこイ。俺様が気に入れバ最後に力をやル。そうすれば確実に
強くなれル。いいナ」
「それがお義父さんの望みなら、そうしよう」
「おめーにお義父さんと言われる筋合いはネー! シネ!」
「ちょ、待って! 準備くらいさせろ!」
なんかお義父さんに色々一気に言われたが、そのヨーゼフって人物と会って話を
聞く必要が出てきたな。
お義父さんはまもなく消滅してしまうのか……メルザにせめてあってもらいたかったが、その
思いは俺が受け止め伝えてやらないとだな。
元の場所で主が待っているならなおさらだ。
「なぁ。一つだけ聞いていいか? メルザのお母さんって、どんな人だった?」
「ふん。誰よりも優しく笑ういい女だった。あいつの笑顔だけ見てれば俺様は癒されタもんダ。
決して裕福じゃなかったが、俺様たちは幸せに暮らしていタ。
だからこそこの無念、おめーに託ス。あの時の災害、原因と、願わくば残された娘の
幸せヲ……余計な事言わせやがって、シネ! コロス!」
「ははは……なんだ、似た者同士だな。俺たちは。別に裕福である必要なんてない。
笑って明るく元気に過ごしたいだけなんだ。俺も。そしてできる限り手の届く範囲の仲間たちは
そうやって笑いあって生きていって欲しい。だから……封剣! 剣戒! あなたを倒して
俺はもっと強くなる。その手をもっと、広げられるように!」