第四百三十八話 聖堂で待つ者
「……レミニーニ。あいつは来るんだろうな」
「知らなぁーい。ここまでは誘導したから約束通りだしぃー? ニニーの役目は終ーわりっ。バイバイ!」
「……くそっ。ちゃんと中まで案内する手はずだろう! 役立たずの無能が!
……いや、きっとくるだろう。ここに何が待ち構えてるかは気になっているはず。
奴は好奇心旺盛で直ぐに首を突っ込む。来なくても直ぐに村へ移動すればいい。
ようやくだ、ようやく恨みをはらすときがきた」
全身黒づくめのソレは、高らかに笑い声をあげ、聖堂に声が鳴り響いた。
ニニーの姿はもうない。
――――そのころのメルザたち。
「どうだ? これで動けるだろ? な?」
「宙に浮いた? どうなってるんだこれは」
「俺の技だ。いかすだろ? な? かっこいいか? な?」
「そんなにいっぺんに話したら疲れるカベ。さぁルインに言われた通り急いで移動するカベ」
「……主は私が背負っていきます。捕まってください」
「シュイオン先生、壁になってほしいカベ」
「ええ、もちろんです。ウォーラスさん」
「俺様体がなくてよ。わりーなジェネスト」
「……構いません。それに、あなたを背負っているとディーン様を思い出せますから……」
メルザを背負うとジェネストは先行。次にシュイオンが続き、最後尾にレウススピアが移動。
降りた地点からは大きく南下して聖堂を回避していく……が、火山の噴火の影響か、モンスターがこのあたりに多く集まっていた。
「邪魔です! そこをどきなさい!」
「グシュルウウウウ!」
「こいつ、食えねーかな。風刃斗! 風刃斗! 風刃斗!」
「ブシュルウウウウウ!……」
大型のサイのような魔物を次々と倒していくメルザ。後方でそれを見ていたスピアは驚愕する。
ただの小さい少女だと思っていたのに、とてつもない術使い。
前を走るシュイオンは見事な医術の持ち主だった。
「悪い、遅れた……赤閃!」
「ルイン! これ、食えるか?」
「封印出来たみたいだ。どうだろう、一匹持っていくか。コウテイ! 頼む」
「ウェーイ!」
「これはヴィーヴルでしょうね。ドラゴンの一種です。硬い角で相手を一撃に突き刺す獰猛な魔物です」
「一匹一匹は大したことない。弱点が見えるからな。それにメルザの術がよくとおる。
幻術に弱いのか?」
一匹のヴィーヴルを確保してそのまま南下していく。
先導役をジェネストに任せ、俺は後方へと回る。
「おい、もう一人いた女はいいのか?」
「あいつはそもそも仲間ってわけじゃない。同行者だ。正体も別物だった。
こちらから深入りするつもりはない。それよりスピア。後で俺たち一人一人、自己紹介させてくれよ!
赤閃!」
上空から襲い来る魔物に赤閃を浴びせる。先生を壁と一体化したウォーラスが頑張って運んでいるが
速度が遅い。アデリーに先生を乗せ、ウォーラスを封印に戻した。
「悪いなウォーラス。無理させちゃって。しかしそんな移動方法もあるんだな」
「平気カベ。こうしていればいつでも先生を守れるカベ」
「ありがとな。……スピア、お前は俺が運ぶ。じっとしてろよ!」
「さ、触るな。まだお前を信用したわけじゃ……」
「はいはい、今は急ぐから。お前はちょいと重量があるから、俺じゃないとかつげ……ぐはっ」
「誰が重いだと?」
「そういう意味じゃない! いくぞ、神魔開放!」
「う、うわあー----!」
さすがに一人担ぐだけならいい速度がでる。先生を乗せながら華麗に一回転ジャンプを
するアデリーを追い抜いた。ちょっと悔しそうにするアデリーが可愛い。
「モンスターの襲撃が途切れた。だいぶ離れたな。あの木辺りを調べて平気そうなら休もう」
「俺様……腹減ったよー-」
「ふふふ。私も少しお腹がすきました。ルインさんにもお話を聞かないといけませんしね」