第四百三十六話 クアドロプルドラゴンのスピア
「……スピアだ」
「確か枝分かれする葉をつける綺麗な花の名前……か。真っ赤なスピアは一見すると荒々しさも感じる。
いい名前じゃないか」
「……うるさい。放っておけ」
「悪かった。それじゃスピアは先生に任せるとして……俺はあの聖堂を調べてくる」
「はいはーい! 私行きます。ジェネストさんも行きましょうよ」
「いや、ジェネストはここでメルザと先生を頼みたい。後ウォーラスとレウスさんもここで」
「いいでしょう。わかりました」
「なに? 戦っていた時もそうだが、変なやつが出てきた?」
警戒するスピア。だがどう見ても人ではないジェネストには、あまり敵意を見せてはいない。
ついでにレウスさんとウォーラスが出てきたが、ものすごく警戒する。
……本当にいいやつこそ見た目で損をしたり悲しい気持ちにさせられるんだよな。
「それじゃ行ってくる」
「めしにするから早くもどってこいよー!」
「妖雪造形術、コウテイ、アデリー!」
「乗っちゃっていいんですか! やったー!」
「待てって。偵察だから先に行かせるんだ。頼むぞコウテイ、アデリー」
「ウェーイ」
「ウェィ」
トテトテと歩き出すコウテイとアデリー。ここはルーニーにでも頼めれば最高だったんだが、ルーニーは
今いない。復活が待ち遠しいところだが……地底の状況はどうなっているんだろう。
あちらにはフェドラートさんもいる。余計な心配だな。
さて……「レミ、一つ聞いていいか?」
「それより先を急ぎましょうよ! ね?」
「いいや。聖堂を調べるだけなら優秀なあいつらで十分だ。少なくともお前よりは信頼できる。
お前一体何者だ? 目的がはっきりしない。それに色々と気になる事があってな。悪いが様子を先生に
ずっと見てもらっていた」
「……どういう意味ですか!? よくわかりません。私はただ……」
「依頼をってなら、他の大陸から募ったり、俺たちに任せれば十分だろう? それに、冒険したいと
いう風にはあまり見れないな。お前、十分戦えるだろう」
「で、でも一人じゃ……」
「あのおっさんがいるだろう。相当な手練れだ、あれは」
「……ついていっちゃダメだったんですか。私」
「いいや。お前がどうしてもこの聖堂に俺たちを連れてきたがっているきがしてな。
お前、セーレが俺に封印されて休めるのは知ってるよな。俺は疲れを見せていない。
メルザたちもだ」
「だったら私が聖堂に行って証明すればいいんですね! 安全だってことを!」
「動くな」
「……なぜそこまで疑うんですか?」
「いくつか引っかかっててな。これは感だが……お前、俺に会った事ないか?」
「っ!」
「図星か」
ずっと違和感があった。初めて会った気がしない。声も形も色々違う。技とかも見た事はない。
いや、直接会ってゆっくり話したわけでもない。そもそもあったのなんて最悪だと感じる場面だった。
だがこの驚き方。ほぼ間違いない。こいつは俺に会った事がある。
そして、何かを企んでいるのは間違いない。
つまりあの聖堂は完全に罠だ。そもそもあのおっさんが跡地と言っていたにもかかわらず、跡地ではない。
あの聖堂自体が能力である可能性もある。答えはコウテイ、アデリーでわかるだろう。