第四百三十四話 向かう先は
「おい! 勘違いされるような言い方はやめろ! これはあれだ。依頼のクアドロプルドラゴンだよ」
「えーーーーー! クアドロプルドラゴンをナンパしてきたんですか!?」
「ルインは見境ねーからなー。妖魔に人魚に俺様も幻魔だけどよ。後は骨に壁にパモにどぐう? エルフもいるぞ」
「ルインさんはそういう方だったんですね……」
「おーい、少しは俺の話を聞いてくれーー!」
「ヒヒン! それよりルイン。まずは行く場所教えて欲しいな! まだ適当に飛んでるだけだけど、重いから
早く降りたいよ!」
「あ、悪いセーレ。セーレの会話内容が伝えられないのがネックだな。レミ。聖堂があるって言ってたが
そこは休めそうなのか?」
「どうでしょう? 私も行った事ないので行ってみたいです!」
「行ってみたいかを聞きたいんじゃないんだが……いきなりアンデッドの巣窟に飛び込むわけにもいかない。
まずはこの子を快方して事情を説明しないとな。爪と鱗でいいんだろ、依頼は」
「まさかもぎ取るつもりですかー! キャーーー―! エッチーー!」
「あのな……そんなわけあるか! ほら、これだろ? 足りるか」
「先にもぎ取っておいたんですね! やるぅ!」
「はぁ……ちょっとだけ疲れたぞ……」
「ルインの事だからいつもどおりだけどよ。俺様もやきもちくらいやくぞ!」
「やきもちやかれてもな……あ、先生。気付け薬みたいなのって作れるかい? 結構派手に
やりあったからすぐ起きるかわからないけど」
「この方が人間であれば作れますが、それより治療を施した方が早いのでは?」
「そうかもしれないが……人間に強い怒りを覚えていた。いきなり襲い掛かってきてな。喋る竜種は
初めてだったから驚いた」
「喋るんですか!? がおーとかうがーしか言わないのかと思ってました!」
「かなり知力は高いと思う。逆鱗を凍らせたら静まったんだ。実力はかなりある。それにこんな竜種、俺の
知識にはない。五十メートルを超す巨体に四つの直列する頭の竜だぞ」
「おかしいですね。私たちに入ってきた依頼だと、小型の赤竜だとしか情報がありませんでした。竜種だから依頼料は高いですけど、ルインさんなら楽勝かなって」
「何か事情があるのかもしれないな。一応……レミが縛っておいてくれないか。起きたら確実に暴れるぞ」
「きゃーー! 縛るなんて! ルインさん! いけません!」
「レミがこの竜人を縛るんだよ! この子は聞き間違え思い込みの達人か何かか!?」
「それより一度、聖堂あたりで休憩しましょう。うまく縛れない……んーしょっと」
「それで、聖堂まではどのくらいかかるのですか?」
「ここからならそんなに遠くはありません! 頑張って! お馬さん!」
「だそうだ。頑張れよセーレ!」
「ヒヒン! 後でちゃんと美味しいもの作ってよね! 約束だからね! 絶対だよ! ヒヒン!」
「ああ、わかってるって。今回の旅はお前に感謝しっぱなしだな。あれ? メルザどうした?」
「俺様、腹減ったよーー……」
「ここにも食いしん坊がいたか……ふふっ」
「うん? もって? 俺様以外誰かいるのか?」
「ああ何でもない……お? あれが聖堂か。先生、ちょっといいか」
「ええ。はい、そうですね。わかりました」
遥か上空のセーレから見下ろすと、この位置からは小さく見える、綺麗な聖堂が見えた。
しかしあるのは聖堂のみ。村や町などは見受けられないが、聖堂だけが美しく輝いて見えた。
あの建物の感じ……どこかで見た覚えがあるな。
念のため十分用心しておこう。