第四百三十一話 対クアドロプルドラゴン戦 前編
「厄介なブレスだな。上空にも左右にも避け辛い」
「壁を作っても簡単に貫通されてしまうカベ。どうするカベ?」
「レウスさん。四つある頭のうちどれかひきつけられないか?」
「俺に任せてくれれば大丈夫だ! な?」
レウスさんがふわりと飛び立ち地面に着地する。やや不安はあるが引き付けてくれるのは助かる。
「なぜスケルトンが人間如きに味方する。貴様はアンデッドとしての誇りがないのか!」
「何言ってんだ。ルインはただの人間じゃない。俺の友達だぞ? な? お前も俺の友達だ!」
「不死者無勢が笑わせてくれる。塵と化せ!」
四つ頭のうち二つが上方のレウスさんを狙う。相変わらずふわふわと上下左右に展開するため狙いが
定め辛い。怒れば怒るほど狙いは定まらなくなる。
【獣戦車化】
「グワァオァー! き、貴様ただの人間ではないな! なんだその形状は!」
「悪いが一発、入れさせてもらう。ちっとは人の話を聞けよ! 黒星式……カタストロフィ!」
黒星の塊を思いっきりクアドロプルドラゴンに打ち込む。すぐさま動けるように元の形態に戻る。
これでノーダメなら洒落にならないが……相当効いたようだ。
「う……ぐっ。許さぬ。絶対に許さぬぞ人間がぁーー!」
「これでも一応妖魔なんだがな。妖雪造形術……赤雪鬼、黒雪鬼」
『ピーノ!』
「かなり熱い場所だがいけるか? 二人共」
コクコクと頷く素振りを見せるレドッピーとブラッピー。
小さいこいつらに的を合わせる事は恐らくないだろう。
「封剣!」
「にゅいーん。てぃーちゃん参上でごじゃろ。なんでごじゃろ? クアドロプルドラゴン?
これは珍しいでごじゃろ」
「知ってんのか? ちょいと手を焼きそうなんだが……っとアブねぇ!」
猛烈な炎のブレスを薙ぎ払うかのように打ち出してくる。レウスさんをガン無視して直列四頭で
一斉ブレス。辺り一面炎の海と化した。
とっさにレドッピーとブラッピーを肩に乗せて後方へ飛翔する。
参ったな。遠距離でのカタストロフィは効くが、二発目をそうやすやすと受けてくれはしないだろう。
「御前、水や氷は得意でごじゃろ? 弱点を突けばたやすく倒せないでごじゃろ?」
「恐らく無理だ。あいつの炎の勢いは相当なものだ。この活火山の影響を受けて、相乗効果で力を
増してるのかもしれない。それよりなんであいつあんなに怒ってるんだ」
「知らぬでごじゃろ。てぃーちゃんは暑苦しい竜は嫌いでごじゃろ」
「ふーん。ちょっとだけ試したい技をお前で試すことにしたよ。うん」
「何するでごじゃろ! やめるでごじゃろー!」
「妖氷造形術、氷の鞘」
ぴきぴきと凍っていくティソーナ。こんなもんかな。
「いくぞ、氷のティソーナ! 氷のコラーダ赤連氷閃!」
氷の斬撃を飛ばす。それはクロスされ、勢いよく燃える地面を凍らせながらクアドロプルドラゴンへ
直撃する。
「グアアアアーー! く、この氷……妖術が練り込まれている。ぐっ、おのれえええ、一度ならず
二度までも! 消し炭にしてくれる! 飛翔モード」
「……おいおい、冗談だろ。レウスさん! もう挑発はいい! 戻れ!」
大型のクアドロプルドラゴン。そいつは形を変え上空へゆっくり飛翔し始める。
全身真っ赤に燃え上がる炎を纏い、恐ろしい声を発しながらこちらを全力で威嚇している。
「怒ったでごじゃろ。あんな技使うからでごじゃろ!」
「じゃあどうしろってんだ! こいつ鎮める方法とかないのか!?」
「あるでごじゃろ」
「……お前な。少しは主人を助けようと思わないのか」
「ふふん。てぃーちゃんに頼ってばかりでは、使い手として成長しないでごじゃろ」
「あーもう。全力でやってやるよ! いくぞ!」




