第三百九十四話 キンキドゥ洞窟を目指して
再び泉よりキゾナ大陸方面へ出た俺たち。
セーレとジェネスト、レウスさんは封印しており、エレギーとメルザ、俺の三人で動き出す。
なるべく目立たないように動きはしたいのだが、エレギーは大柄でちょっと目立つな。
後ろ姿だけ見ると、確かに頼れる兄貴といった風貌だけど。
「それでエレギー。その洞窟はどこにあるんだ?」
「弟よ! わてを呼ぶときは兄者と呼ぶのだ!」
「絶対嫌です」
「何ぃ! ……まぁいい。キンキドゥの洞窟はここより真北の方角だ。ついて来い!」
「ああ。結構距離があるならメルザをおぶっていく」
「わりーないつもよ。俺様体力が本当になくてよ」
「いいんだよ。メルザなんて背負っても背負わなくても変わらない位の重さしかないしな」
メルザは大食いだが軽い。太れないといった方が適している気がする。
この体のどこにあれほどの術を生み出す力があるのか……考えても謎である。
原初の幻魔人か……メルザの故郷がその者たちが暮らしていた地なのだろうか。
詳しい事は何一つわからない。ただ……メルザは知る必要がある。
自分の故郷がどうなったのかを。どういう状況なのかを。
残酷な状況かもしれない。決して見たくない状況かもしれない。
それでも……蓋をしていたままでいいはずがない。
……そしてそれは、俺もだ。
だが、何においてもまずはメルザを優先してあげたい。
俺の事は二の次で構わない。
「ターゲットに反応。上空二、東から四。相変わらずだな、この大陸は」
「むう!? もう敵襲か? ぐう、わて一人では隠れ蓑を作れん!」
「隠れてやり過ごしてたのか! まぁこの大陸のモンスターは強いからな。
今の俺の相手じゃないとは思うけどな。 剣戒!」
上空は……鳥形の魔物。見た事がないタイプだ。
東は……あれはアダマンカイコか。懐かしいな。ここにもいたのか。
「上は……メルザ。頼めるか。東は俺だけで片付ける。レウスさんたちは休んでてくれ。
この様子だとこれから洞窟までそれなりに襲われるはずだ。交代で戦おう」
「ふん。この程度のモンスター。例え数千匹来ても今のあなたなら敵じゃないのでは」
「俺だって戦えば疲れるさ。海底でちっと、次元が違う奴らを見過ぎたけどな!」
「風刃斗! ありゃ? こいつら弱くねーか?」
「赤閃! いや、弱くはない。俺たちがこの大陸にしちゃ強いってだけだぜ!」
遠目からだが赤閃で一閃できるくらいには強くなった。アダマンカイコは結構硬かったはずだが、だいぶ
威力があがったようだ。これを受けきれるベルドも相当強くなっていたんだろう。
「ターゲットに反応! 上空六、更に東から三! 相変わらず数が多い! すぐ集まって来る。
走りながら行く。メルザ、背中に捕まりながら行使できるか?」
「任せろ! おいおっちゃん。先行ってくれ! 思い切り走れー!」
「何ぃ! わてがおっちゃん、おっちゃんだとぉー! こう見えてもまだ二十三だぞわては!」
『嘘だー!』
俺とメルザははもりながら全力で否定した。
二十三て、それはいくら何でも盛りすぎだ!
そういや俺とメルザって何歳なんだ? お互いの年齢を知らない気がする。
それでもエレギーよりは若い……と思いたい。
これで年上だったら正直なんと声をかけたらいいのだろうか。
「風臥斗! 上はいーけどよ。地上のはどーすんだ?」
「妖赤雪造形術、赤雪鬼。頼むぞレドッピー!」
「レドッピーノ!」
頼れる仲間は他にもいる。俺の仲間は半端じゃない程多いんだ。
ただ、結構疲れるけどな!
「東はレドッピーに任せた。西から来たらブラッピーを展開する。正面は俺とエレギーがやるから
メルザは上空にだけ集中してくれ! 巨大な相手が出たらグリドラやトウマも出す!」
「わかった。いくぜーーー!」
俺たちはモンスターの襲来を防ぎつつ、洞窟を目指した。




