第三百九十話 キゾナ大陸の偵察へ行く者は
「いたいた。おーい! おーーーーい! セーーレ! 降りてきてくれー!」
「ヒヒン! やっと僕に話しかけてくれたね。やっとだよね。ずっと待ってたのに話してくれなかったよね。
酷いよね。酷いよねーーー!」
「悪かったって。でもずっと空飛んでなかったか?」
「ヒヒン! それはそうさ。僕は天馬だからね。飛ぶのは当り前さ。ヒヒン!」
「実はいくつか頼みがあるんだ。状況次第ではそうもいかないだろうが……」
セーレにキゾナ大陸の様子を伺いたい旨と、もしかしたら狙われる可能性がある旨を伝えた。
「ヒヒン! 僕を狙って撃ち落とすなんて出来ないね。絶対無理だね。仕方ないよね穆は天馬だからさ。
人族が遠目に狙ったって絶対当たったりなんかしないよね」
「それは頼りになるな。ルクス傭兵団に頼みたいってのもあるんだが、彼らは彼らで仕事がある。
それにルシアがいないなら、尚更勝手に動かすわけにはいかない。まずは二人で様子を見に行こう」
「おや、それならば私とドーグルも同行していいかな」
「わらたちは古代樹の図書館に向かわねばならぬ。二人だけで様子を見に行くのは少々不安なのだ」
「ドーグルはそもそも中に入れるのか?」
「イーファが登録を済ませているのでイーファと合体していくつもりだ」
「なるほど……そうすると中に入るときはミリルにも協力をお願いした方がいいな。
まずは安全を確かめに行こう」
「そうだね。彼女もベルド共々旅立つ予定だ。そうすればしばらくルーンの町には戻らないだろう。
妖魔の面々はまだ戻らってはきていないのかな」
「アルカーンたちと連絡を取る術が今の俺にはない。しいて言うならフェドラートさんより受け取った
居場所がわかる道具があるが、これも距離が離れすぎているせいもあって機能しないんだ。
彼らがいるととても心強いんだが……頼りすぎるのもよくないよな」
「そうだな。元王として不甲斐ないばかりだ」
「イーファが悪いわけじゃないだろう。そうだ! レウスさんがいれば少しは……」
「呼んだか? ルイン。 俺の力が必要なんだな? な?」
「うわぁ!? びっくりスケルトンすんな! レウスさん。ちょいとキゾナ大陸の様子を伺いに
行きたいんだけど、ついて来てくれるか? 円陣の都の状況までは探っておきたいんだ。少々危険かも
知れない。コンタクトを取りたい奴もいるし。いるかわからないけど」
「いいぞ。みんなで仲良く行こう。な?」
「レウス殿がいれば確かに戦力的に問題なかろう。わらとレウス殿、イーファ殿は君の中で援護役に
回れる戦力となるからな」
「ああ。ドーグルがいるかいないってだけで相当違うんだけどな。頼りすぎれば俺に甘えが生じる。
助かりすぎて、いない時に嘆くくらいだよ」
「そう言ってもらえるとわらも嬉しいものだ。さぁ行くぞ!」
本当はここに後ミドーがいると移動も楽なんだけど、あれはイビンに託してあるからな。
イビン、そういやどうしたんだろう。あいつも町で元気に兵士をしてくれてたから大助かり
だったんだけど。
ドラディニア大陸は一応行ったことがある地域にはなるが、滞在期間は極僅かだ。
ミリルの出身地でもあるから、里帰り中はついて来てくれると嬉しいんだよな……。
今はハクレイが訓練場に向かったし、きっと激しい訓練をしているだろう。
どうにもミリルは置いていかれたり忘れられたりする節がある。
出かける前にちゃんと挨拶していこう。
俺たちキゾナ偵察組は、キゾナ大陸側へ出る泉に入っていった。




