第三百六十七話 第三第四試合混合 バトルロイヤル ユニカ族の恐ろしさ
正気を失った目のライラロさんが、 レヴィアタンの傍らに浮かび上がる。
目は完全に白目。ユニカ族の角が伸び青白く光を放っている。
あんな形態みたことないぞ……これがユニカ族ってやつの力なのか?
じっとしていればただただ美しいライラロさん。今の形態の方が師匠好みなのでは……
と思ったが師匠は珍しく冷や汗をかいているようだ。
よほどまずい形態らしい……。
「少し舞台を整える必要があるね。今のままでは少々危険だ。辺り一面水浸しになり、観客の方が
死んでしまうかもしれない」
イネービュが浮かび上がると、パチリと指を弾く。
すると俺たちのいるリングがどんどんと上空へせり出し舞台が切り離されていく。
「これでいい。そこから下へ落ちても死ぬことはないから安心して戦いなさい。
少し冷水を浴びることになるけどね」
戦う場所があっというまに上空かつ水の舞台へと変貌した! 伊達に海の神じゃないな。
「思う存分戦えるらしいですよ。まったく。武闘会にしちゃもう滅茶苦茶ですね」
「ちげぇねぇが、いざ戦いってのはそんなもんだろ。ルールありきで殴り合い出来る程、世の中
甘くはねえからな。こういうのにも慣れておかねえと、前のデイスペルの時みたくなっちまうだろうが」
「あ……おっしゃる通りです。ルールありで殴り合いできるのって、ルールがしっかり決まった人同士の
戦いだからか……」
「そういうこった。俺もウェアウルフ。おめぇは妖魔だろ。人の世界でもまともなルールは
おしつけちゃくれねぇ。これも修行だな。以前あれとやり合った時は死ぬかと思ったが……俺も
あれから随分腕をあげた。そうそう遅れをとるわけにゃいかねえ」
「二人共。無駄な話はその辺にしていきますよ!」
「相変わらず厳しいなジェネストは。毒を吐くのはブレディー譲りか?」
「……御冗談を。けれどディーン様譲りと言われて悪い気はしないですね」
三者三用の武器を構える……が、二人は必ず突撃すると踏んだ俺は、遠中距離からの攻撃を選択する。
……だが先にレヴィアタンの口が大きく開いた。
「っ! やべぇ! 全員攻撃より先に防御しやがれ! せりあがったせいで上空が使えねぇ!
くそ、これじゃ余計なハンデをもらったようなもんだぜ」
「うおお、確かにやばい雰囲気だ! でかい大技がくる!」
「ほーう。開幕から混沌の大海嘯か。全員耐えられるかな」
レヴィアタンの口先から、その口から放出されたと思えない程の水が噴き出される。
それは俺の赤海星術など比較にならないほどの圧倒量。
「やっべぇ! なんだあの水量! ふざけろ、まるで海そのものじゃないか!」
「くそ! ここじゃせめぇ! よりによって範囲が決められた場所での戦闘でこいつとはよ!
早急にくたばるんじゃねえぞ! 斧重裂撃! おらおらおら、連打だ!」
「土臥斗! ……これでは全然無理ですね。仕方ありません……幻神魔解放!
……ブレッシブディフレクションズ」
二人共とんでもない動きで大海嘯に備えだした。ジェネストにいたっては切り札中の切り札だろ、あれ。
俺は……迷ってる暇はない! 今出来るとしたらこうだ!
【真化、獣戦車化】
「ぐ、う……神魔解放しないときつい……炎は厳しい、水で撃ち合え……赤海星の変革なる一撃!」
俺は獣形態を戦車形態に変異させる最大級の技を正面へとぶっ放した。
更に水の勢いを殺せるよう正面に赤星の盾を張り巡らせる。
赤海星の変革なる一撃は正面をぶち抜き、水の流れる形を大きくそらした。俺は奥を見て絶望した。
分厚すぎる。こんな海嘯起きたら豆腐がつぶれるようにぺちゃんこになるぞ。
「おいティソーナ! 大ピンチだ。頼む力を貸してくれ!」
「なんでごじゃろ? さっき助けたばかりでごじゃろ……あら、本当にまずいでごじゃろ。錆びたくない
でごじゃろ」
「錆びるのかお前! とかやってる場合じゃないんだよ! 強烈な水を防ぐ術とかないのか! あっちの
幻魔人形がやってるようなやつとか!」
「御前、妖魔ということを忘れておるでごじゃろ? 妖術はイメージが大事でごじゃろ。なんでも
やってみるでごじゃろ。造形術、使えるでごじゃろ?」
「そうか、その手が……ぶっつけ本番だがやってみるしかない! ありがとよ、てぃーちゃん!」
「そう、麿はてぃーちゃんでごじゃろ!」
ティソーナに土壇場でヒントをもらった俺は、獣戦車形態を一旦解き、構えた。




