第三百六十五話 第三第四試合混合 バトルロイヤル 飛んでいく三人
「グルオオオオオオオ!」
「しつこいっしょ! 本当にもう! 牛みたいなお乳のくせして!」
「しかし攻撃があまり効かないね。打たれ強さまで牛鬼並みになるのかな、ファナは」
「そうっしょきっと。イーちゃんファナの弱点知らない?」
「そうだね、あるとしたらルインとニーメ、それにメルザかな。後は足が不自由だが
彼女はそれを克服している。実はニーメ君に色々聞いてみたんだが、あまり話してはくれなくてね。
辛い過去があるのだろう」
「そっか……って今それどころじゃないっしょ! このイーちゃんの鎧が無かったら私とっくに
負けてるっしょ!」
「それはお互い様だ。私も彼女の攻撃の威力で場外まで押し出されていただろう。
ベルディーと一緒なのは実に戦いやすい。まぁ私としてはルインに身に着けてもらっている方が、彼の
照れる顔が見れていいのだが」
「あー! イーちゃんずるいっしょ! そんな表情私見たことないし!」
「あんたたち、そろそろ終いにするわよ!」
「いつのまにアルノーに! 矢が飛んでくるぞ!」
「せっかくルインが置いてってくれたモンスターたち、ちっとも動かないじゃない!
もう、おじさんといい私の周りのモンスターたちは本当に使えないわね!」
「ファナの弱点がもう一つあった。少々怒りっぽいところだ」
「あ、それわかるっしょ。サラもそうだったけど。私はあん中じゃ冷静なほうっしょ」
「ベルディーは思い切りがよく突っ込んで行ってしまうけどね……右だ!」
「甘いわね。これでも変身の練習中よ! 部分変身、牛鬼の手!」
「何!? ここにきて隠し玉!」
部分的に変化したファナの手がベルディアを捉えた。だが捉えた手が悲鳴を上げる。
「痛っ! イーファの鎧が武器に! もう、二対一なんてずるいじゃないの!」
「仕方ないっしょ。あっちの邪魔できないし」
「それもそうか。あれ、ルインもう終わってる?」
「え?」
「隙ありよ!」
「ふぐっ……この女ずるいっしょ!」
「ふん! お返しよ。誰が牛みたいな乳よ!」
「聞こえてたっしょ……地獄耳」
「体制を立て直すんだベルディー!」
「このままいくっしょ! えいっ!」
「わ、ばかなんで胸を押し付けてくんのよ! ない物ねだりなわけ!」
「くぅー、腹立つっしょ! ちょっとでかいからって! この!」
二人共もみ合いになり接近戦となるが、なかなか勝負がつかない。
そんな折ルインはター君、ホー君を回収しにファナたちの方へと歩いていた。
それに気づく三人。
「ふん、やっとルインが来てくれるわね。これで二対二。平等でしょ」
「何言ってるっしょ! ルインが来たらいくつもモンスターやら出しまくって平等じゃないっしょ!」
「彼は魔物使いな上に妖術使い。恐ろしい軍勢を呼び出せる事をあまり理解していないことが恐ろしい」
「そのモンスターの中に自分たちが入ってるの、忘れてないかしら?」
『あ……』
しかしルインはター君とホー君を回収すると、その場で座り込み上を見ているだけだった。
時折首を傾げている。何かを考え疑問に思っているようだ。
「……あれ?」
「うちらの戦いの邪魔しないようにしてるっしょ」
「間違いない。彼は空気を読める男だからね」
「ちょっとーー! ルイン、助けて、助けてよー! ピンチなのよー!」
「いやどうみてもこっちがピンチっしょ! あんた力強すぎまじやば」
「むむう。こうなっては分離もままならない。ええいこうなったらファナ事くっついてスライムで
まとめれば」
「ば、ばか! 今投げ飛ばそうとし……」
三人共スライムでからまったまま空中へ飛んでいく。
『キャーーーー---!』
「ん? 何だ? どわーーーっ! なんでこっちに投げるんだ!」
ルインの方面へ気付いてもらおうとベルディアたちを巴投げしたファナ。
ファナには足をアーティファクトで補っているだけなので、両手を牛鬼に
変えて腕力で思い切りルインの方へ投げ飛ばしたことになる。
本来巴投げであれば地面にびったんこするのだが、これはもはやフライングスロー。
三人まとめてルインを飛び越え、場外へとフライアウェイした。
「……なんだったんだ。ファナも混じってたようにみえたけど、新しい技か!?」
再びルインは座りなおし考え始める。
なぜセフィアさんがあんなにおっかないのかを。




