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第三十四話 皆で快鉄屋へ

 俺たちは師匠のいる三夜の町へ向かう最中だ。

 ニーメはそろそろ一人の工房が欲しいようで、師匠の許可は

もらっており、一通りの道具もあるらしい。 

 メルザの領域で鍛冶をする許可が欲しくて、メルザもこれを快諾。


 「俺様の領域に鍛冶工房!」とメルザはぴょんぴょんしていた。


 ああいう少し子供っぽいところがメルザのチャームポイントだな。

 ココットとカカシは留守番をしているようなので、取り急ぎ快鉄屋へ向かっている最中だ。


 疾風の靴と無限闘舞を身に着けてから、俺の速度は

自分でも制御できない程速く感じてしまっている。

 

 感覚を掴むにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 メルザにも速度アップの装備を渡したいところだが……ファナは俺より速度は遅いが

それでも相当早い。もうちょい急ぐとするか。


「ファナ、ニーメを担げるか? メルザは俺が担いでいく」

「いけるわ、いつも担いでたしね」

「えっ? お姉ちゃん……僕ちょっと恥ずかしい」

「何言ってるのよ、毎日担いでたのなんて一年ちょい前くらいじゃないの」

「で、でも……」

「いいから、ほら!」


 そういうとニーメは姉におぶさる。両手が腕のところに行くが……なるほど。

 それはうらやま……じゃなかった。あたるよな……うん。


「メルザも俺の背中に乗ってしっかり捕まってくれ。飛ばすからな」

「えっ…? うん……わかった」


 メルザは俺の背中に乗ると、ぴっちりと身体をくっつける。

 うん、あたらないな。何がとはいうまい。


 俺とファナはかなり飛ばして走った。


 四十分程で三夜の町に着いた。かなり飛ばしたが

 ファナはちゃんとついてきた。さすがに息は荒いな。


「ぜぇっ……ぜぇっ。ちょっとあんた、どんだけ体力ついたのよ……」

「師匠にしごかれたからな。この装備がなくても片道この時間で行ける位は走らされたぞ」


 ファナの呼吸が整うのを待ち、俺たちは食事休憩をとりに

セサミの宿に寄り、せっちゃんに挨拶する。


「あらぁーいい男! 待ってたわよぉー!」

「いらっしゃいました」


 せっちゃんとセシルに暖かくお出迎えされる。

 この二人の骨は全く変わっていない。


「相変わらずだなせっちゃん。かなりお腹空いてるから

飯にしたいんだが」

「つけ、だいぶたまってるわよ」

「うぐっ これで頼む」


 幻薬(極小)を五個せっちゃんに渡す。

 一つ銀貨一枚ほどだ。


「あら、それじゃ奮発して作ってくるわね! いつもの席で待ってて!」


 そう伝えると、せっちゃんは厨房へ消えていった。


 ――それからせっちゃんの料理を一通り平らげた俺たちは、師匠のいる店

レジンの快鉄屋へ行く。

 中から声が聞こえるな。


「ダメよぉー、今日はもう離さないんだからぁ」

「だから引っ付くんじゃねぇ! 嚙み殺すぞ」

「あら、誘ってるの? そんなにチューしたいのね!」

「ちげぇ! くそっ、なんでおめぇは俺の言う事を捻じ曲げてきやがる!?」

「あら、私はいつも素直よー? 素直じゃないのはベルディスの方でしょ? うふっ」

「あの、師匠ー?」


 俺は扉を開けて部屋に入る。

 上半身が下着だけの女性が師匠にくっついていた。


「す、すみませんお邪魔しました……」


 俺はパタリと扉を閉めて何も見てないことにした。


「ち、ちげぇ! ルイン! 誤解だ! 頼む戻ってきてこいつをなんとかしてくれ!」

「よし、既成事実成功!」

「てめぇライラロ……今度覚えておけよ」

「あら、今度も何も私はダーリンとずっと一緒よ!」

「あぁぁー! ダメだ話にならねぇ!」

「うふっ」

「いいから服だけでも着やがれ!」


 ……中が落ち着くまでここで待とう。

 とてもじゃないがニーメには見せられない。


 ――――しばらくしてシーザー師匠が部屋の扉を開ける。


「入れ……」


 相当お疲れの様子だった。

 俺たちは中に入る。先ほどの女性は師匠お手製の

檻に閉じ込められて布をぐるっとかけられている。


「なぁにこれー、開かないーー! おかしいおかしい絶対変ー! はっ……これは

お前を檻に閉じ込めて俺だけのものにって意味ね! キャー!」

「わりぃ、あのうるせぇのはほっといていい……ちっと外出ようや」

「は、はい師匠……大変そうですね」

「全くだ。ライラロを呼んだこと、未だに後悔してるぜ」


 ちょっとやつれた師匠を連れて、俺たちは近くの団子を売っている店に入った。 


 団子屋モギ。

 この辺りでは人気の店だ。

 お金は師匠が払ってくれた。


「んで、ルインの目的のものは見つかったのか?」

「いえ、ありませんでした。ただ、いい装備は手に入りましたが」

「あぁ、見せなくていい。少なくとも今装備してる物以外はな。

人目につくとまずいもんもあるだろうし」

「はい……そちらは後で店裏辺りで見てもらいます」

「あぁ。んで用件はガキの件だろ? こっちは問題ねぇ。選別に

鍛冶道具一式もくれてやる。ガキ……いやニーメはよく働いてくれたからな。

俺も感謝してるぜ。おかげで懐もあったけえからな」


 そういうと師匠はニーメの頭を撫でる。

 ちょっとうらやましいがニーメはまだ子供だしな。


「僕、初めてお師匠さんに名前で呼ばれました! すごく嬉しい!」


 師匠はフンっと鼻をならすと少し照れ臭そうにしている。


「ところでてめぇら、闘技大会にはいつ出発するんだ? あそこまで行くのに

それなりに時間がかかるだろ」

「ニーメに装備を整えてもらったらすぐ出発準備にかかります。

ジョブカードとかをバウザーさんに

引き渡してもらう用事もありますが」

「そうか。ルインよ、ちっと一日だけ面貸せるか? 

そのスタイルになっての戦闘にはまだ慣れてねぇだろう

が、今の装備で一つ教えておきてぇ技があんだよ」

「この装備で? ですか?」

「あぁ、ちっと思いついちまってな。まぁ半分俺の趣味みてぇなもんだ」


 俺はサイクロプス戦を思い出す。

 あれくらい強いやつが闘技大会にいないとも限らない。

 覚えておくに越したことはないだろう。


「わかりました。よろしくお願いします」

「おう。そういえばライラロの奴も嬢ちゃんに用があるっていってたぞ。

後で聞いてみな。とりあえず今日はおれぁ逃げるからよ。明日また店にこいや」


 そういうと師匠は金だけ払い、ふらーっとどこかへ行ってしまった。

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