第三百五十六話 第三試合 メルザ姫の大暴れ
「この状況は……確実に襲われるな。狙いはメルザか?」
「俺様、さらわれるお姫様役か? さらわれていーのか?」
「この大臣めが姫に変装しますゆえ、お逃げくだされ!」
「ダメに決まってるじゃない! さらうどころか見て! あのいやらしい顔」
「いや、覆面でよく見えないんだけど……」
「絶対いやらしい事しようとしてるにきまってるわよ! 私、お尻触られたし!」
「それは、この大臣だろ!? あれ、大臣どこいった?」
「なんかそこの岩陰に隠れて何かしてるぞ」
あっという間に取り囲まれたのに、やたらと冷静なファナ。
よほど頭に血が上っているらしい。
「なんだ、さらわれちゃだめなのかー。それじゃ、倒しちゃってもいいか?」
「いいわよ」
「いいのか!?」
「さっきのシュウたちの戦いみててよ。ためしてーことがあるんだ。
ちょっと可愛い名前になるけどな! いくぜ、燃風刃斗!」
「ウギャアアーーー!」
メルザが指先からとんでもないでかさの燃える剣を集団に叩きこんだ!
上級幻術のかけあわせ……しかし名前はゆるい。ゆるすぎる。
「あっちにもいるぞ。土臥斗! 逃がさないぜー。燃風刃斗!」
「ウゴアアアーーー!」
あたり一面を巨大燃剣でなぎ倒した。
燃刃剣姫メルザとなった彼女は、にっこり笑いながらポーズを決める。
……メルザもストレスがたまっていたのだろうか?
「……ちょっとやりすぎじゃないかしら」
「だよなぁ」
「へへ。悪者を退治したぞ! えっへん!」
「ところでこいつら何なんだ? あれ、大臣がいないぞ」
「なんか紙切れが落ちてるぞ……読んでくれよルイン」
「どれどれ……えーと」
【姫は預かった。返してほしくばサンドラ国との友好を切り、姫と離れる事を誓え】
はい? 姫はここにいますけど。あんたらがさらったのはもしかして大臣か?
「そういえばさっき、あの大臣姫に変装していたような」
「じゃあいいわね。無事解決よ。いきましょ。あの爺さんと縁が切れても問題ないわね」
「待て待て絶対あの爺さん死ぬって! 物語的にアウトだろ!」
「そうねわかったわ。それじゃ大臣を血祭にあげにいきましょう」
「あの爺さんと俺様、間違えられたのか……なんでだ?」
謎の襲撃犯。色々抜けているがこれもエーナの設定だろうか……しかもだ。
「これ、目的地も何も書いてないぞ。おまけにあの大臣がいないと、どこいけばいいかもわからないし」
「本当だわ。これからどうしろっていうのよ。もういっそ辺り一面破壊する?」
「わかった! いくぜ! 燃紅蓮斗! どんどんいくぞー! 燃紅蓮斗!」
「ちょ、ええ!? 町ごと壊すつもりか?」
「だってよ、ここ闘技大会の会場だろ?」
「あ、ああ……」
破壊神メルザが大暴れしていると、上から一枚紙が降って来た。
広げてみると……現在地と思しき場所と、大臣ココ! と書かれた内容の紙だった。
「おいエーナ! お前居場所記し忘れたんだろ!」
「そんなエーナちゃんも可愛いでごじゃろ!」
「んで、ティソーナはいつ使う事になるんだ。おい」
「きっとこの目的地にいるのね。大臣という名の親玉が」
「……あり得るから怖い」
こうして俺たちは、ファナのフラグを回収すべく、大臣が捕まっていると思われる場所へ
強制的に向かうことになった。
敵の術中にはまるってのは、まさにこういう事なのだろうか。
大臣の事を考えると、少し気分が重くなっていった。




