第三百五十一話 第二試合 どちらにしろ、これが最後の一手だ
「ル、ルピーーーーーーーーー!」
シュウがやられたのを見てしまい、ルーが大声をあげる。
自分を助けに行こうとしたのを理解していたのだろう。
「シュウ。師匠から言われてた通りどうしても、仲間のピンチになると慌てすぎてしまう。
それがここで裏目にでたか」
「むう。幼き竜よ。これでなお、抵抗できるか。む……」
オクトが力を強めようとルーに近づこうとしたとき、上空から槍を構えた竜騎士が
舞い降りて、鎖に槍を突き刺した!
「させませんわ! これ以上好き勝手は!」
「エプタを引きはがしてきたか。あやつが遅れをとるとはな」
「この試合、あれにとっていいきっかけになるやもしれぬ。だが……相手が悪かった、娘よ。許せ」
その槍事さらに鎖が巻き付き、ミリルを包み込んでしまった。
「ううっ! ……ドラゴニックデルト!」
「その状態で共有化したか。どうなっても知らぬぞ」
「あぁぁ! 何かが流れてきますわ! 竜の、意思……」
「おいおい、俺の獲物をとるんじゃねえ!」
急に割って入ったのはエプタだった。オクトとエンネアを蹴り飛ばした。
「貴様! 何をする! 控えろといったであろう!」
「試合中にこのような無礼を働くとは。イネービュ様の前だというに」
「うるせえ! そいつは俺の獲物だ!」
むちゃくちゃなエプタを見て思う。
あいつは本当にイネービュの分体なのだろうか。
そう……あいつは、神の遣いの中でもっとも……人に近いと思った。
はっきりとした怒りの感情がある。そして、対峙しているのは最も人間だと思われるようなミリル。
ミリルが人間なのかは知らない。だが、ミリル、シュウ、ベルドはどうみても人に見える。
ベルドだけが人魚と何かのハーフであることは間違いないのだが……。
「なぁなぁ。あいついーやつなんじゃなかったのか?」
「わからない。だが、あいつだけは他の神の遣いと違うんじゃないかな」
「……イネービュ様は何も言わぬか。ならばよい。もうこのまま見守ってやるとしよう」
鎖から解き放たれたミリルは、ルーと共有化したままベルドの方へ向かう。
シュウは起き上がれない。死んだわけではないが相当な深手を負ったので動けずにいるのだろう。
しかしシュウの敗北はまだ宣言されていない。
「ごめんなさいベルド。ルーの力では……」
「いや、あの二名の実力を見誤っていたようだ。残りは幻影竜一に、エプタ、オクト、エンネア。
辛い状況だ」
「一つ、試したいことがあるのですがいいでしょうか?」
「この状況でかい? 君ってやつは。あいつに少し似ているね」
「まぁ。それは嬉しいですわね。それでは……」
ミリルが竜騎士の跳躍力を使い、上空へと飛ぶ。
ベルドは自分の武器である短槍をミリルに渡して在り、ミリルは現在槍を三本所持している。
上空へ飛んだミリルへは、恰好のマトと思いルービックがブレスを吐こうとしている。
ベルドはそれをじっと見つつ、エプタ、オクト、エンネアも観察していた。
「いまだ! シュウ!」
「土式、怨嗟爆塵の術!」
「風臥斗!」
「こちらの槍も……! 風臥斗!」
それは瞬時の事だった。
倒されたと思ったシュウは地面へと溶け込み、何もないようなところから突然でてきたシュウが
土埃をあげ、ルービックを含む全ての視界をふさいだ。
そして、上空と地上双方から強烈な爆風が吹き飛び、オクト、エンネアを吹き飛ばした!
身構えていたならまだしも、エプタに対峙しており、完全に気を取られていたところへの爆風。
場外まで吹き飛んでしまう。
「なっ!? どういうことだ」
「なぜそもそも動けるのだ、あやつは」
「ふう……演技力もあがったようだね、僕らは」
「ああ、そうだな。これほどうまくいくとは」
「やりましたわ!」
「オクト、エンネア。場外により敗北。実にいい。素晴らしいよ。これは想定外だ」
あっという間に形成が逆転した。ミリル、ベルド、シュウ対エプタと、そしてげ寧竜だけが残った。




