第三百四十話 第一試合 連携! 妖魔と遊魔
「さて、それじゃ小手調べといこうか。サラ、カノン。段取り通りいくよ!」
「はい、リルさん!」
「ちょちょ、ままま待ってよ。相手はあのルインよ? さっきの戦法通じないでしょ?」
「何言ってるんだい。あれは神の遣いだろう。先にいくよ!」
三対三の戦闘、リルが前、サラは出遅れてカノンは後方。
一方神の遣いチームは、テーセラが最前列、ルインと化しているペンデが中衛、大きく離れてエークシ
が布陣している。様子見の姿勢だ。
「あっははー。そんな速度じゃ追いつけるわけない。諦めるんだねー」
距離を詰めようとするリルだが、違和感を覚えるほど遠い。
武闘会の舞台は百メートル四方程のかなり広い舞台。だが百メートルという数値は彼らにとっては狭い。
追いつけないはずがない。
「……幻覚かな、これは」
「さぁどうだろうね。どうして追いつけないんだろうねー?」
「君、後ろ姿は可愛いけど、正面から発する言葉はまるで可愛くないね」
「挑発しても無駄ですよー。さぁ、追いつけるかなー?」
「そもそも追いかける気なんて、僕には……無い! 邪眼!」
中衛に立つペンデに邪眼を放つ。当然リルの方を見ているので回避されるが、すでに
背後にはサラが回りこんでいた。だがそれも見切っている。
「甘くみられたもんだな。このルインも」
「ふっざけないでよ! 偽物の分際で! なんで匂いまで一緒なの? おかしいでしょ! はぁいい匂い。
ちょっと待って今やるから、ちょっとだけ待って!」
「ふん! 隙だらけだぞ! ……なに? こいつも囮か!?」
「ずいずいずっころばしごまみそずい、茶壺に追われてとっぴんしゃん
抜けたら、どんどこしょ。俵のねずみが米食ってちゅう、ちゅうちゅうちゅう。
おっとさんがよんでも、おっかさんがよんでも、行きっこなしよ。
井戸のまわりで、お茶碗欠いたのだぁれ」
後方で遊魔独特の歌を唱え終わり、クインとニーナに変身していたカノンの技が発動する。
大量のネズミがエリアを駆け回り、上空から巨大なツボがルインめがけて被せられた。
「かく乱封印、完了……えっ?」
「……なんでサラまで中に入ってるんだい?」
「さ、さあ……。目標は確実にペンデへと絞ったんだけどね……」
「へーぇやるじゃない。ペンデ、油断したね。なかなかの封印術だ。しかも内側に伏兵までいれるとは」
会場にいるみなは見ていただろう。サラが飛び込んでいく用に見えたことを。
「司会のライラロ、ちみは今のをどう思うかね」
「あのバカ。絶対わざと飛び込んだわ! せっかく三体にで有利に戦えそうなのに! もう!」
「ちみもそう思うかね。ここからは二対二。新婚夫婦の戦いといったところかね」
「そうね! カノン! やっちゃいなさい! あんたの実力、見せつけてやりなさいよね!」
「随分とあの子には優しいのだな、ちみは」
「あったりまえでしょ。どれだけ可哀そうな子だと思ってるのよ。涙で化粧が全部取れた程よ、本当にもう」
「そ、そうか。わらも聞いたが決して許せぬ出来事だ。いや、今はそれどころではなかったな。
それよりも気になるのはエークシの方だ。まるで動かぬ。草臥れているのだろうか」
「おじいちゃん、どうしたのよ! 戦う気あるのかしら?」
「私はおじいちゃんではない! いい加減に、せぬかーー!」
「む、まずい! ブエルの甲殻!」
巨大な甲殻がリルの正面に現れ、放たれた雷撃を全て防ぐ。ボロボロになるが
すぐに再生した後、ふっと消えた。
「守護者を封印してきたんだねー。それじゃそろそろ、攻勢にうつっちゃおうかなー」
「いいや、君らに攻めをさせるわけにはいかないね。僕の愛しい人を守るためにはさ……最初から
一気に倒すつもりで行ってるんだよ! 彼みたいにね! ああああーー! 妖真化……そしてルインが
得た力を我が力の一部に。神魔解放!」
リルとカノン二人になり、更なる戦いが展開されていく!




