第三百三十九話 武闘会開幕
舞台が整い、第一試合前。
ルーンの町から来た人たちも、かなり楽しみにしているようだ。
町には訓練場もある。激しい特訓を目にする機会も多いのだろう。
守ってくれるのが当たり前の世界ではない。だからこそ強くありたいと思う者は多い。
大切な者を守りたい。そんな気持ちは誰もが持つ物だろうから。
「始まるわよ。楽しみね! 第一試合はBチーム、リル、サラ、カノン対
Gチーム、テーセラ、ペンデ、エークシよ。ほらレウスも司会しなさいよ」
「いいのか? リル坊やは真魔化すると強いぞ! サラはだはっ!」
「ねたばらししてどうすんのよもう! あっちが不利になるように話なさい!」
……司会がえこひいきしてどうするんだよ……はぁ、この抜擢はいささか失敗じゃなかろうか。
けれど他に開設向きなやつが……ドーグルじゃだめだったのか? あっちでお茶すすってるな。
ドーグルの許へ行き、司会に加わるように交渉してみた。
先ほどの内容を聞いて、一つため息をついて、ドーグルは司会に加わってくれた。
本当にいつもいつもすまない……ドーグルと出会えた俺は幸運だったよ。
なにせうちのメンバーはボケ担当が多い。つっこみに回れるドーグルは貴重な戦力だ。
「コホン。ではわらが司会に混ざらせてもらう。いい試合が見れそうで何よりだったのだが、出来れば
ゆっくりみたかったのが本音だ」
「それはそうね。でも……喋りながらベルディスの試合が見れるなら本望よね!」
レウスさんがちょっとしょげているが、すぐ立ち直るだろう……リル、サラ、カノンは準備が整った
ようだ。対するは……追いかけ続けたテーセラ。足が速い……のか? 後ろ姿が
メルザ瓜二つなのは相変わらずだ。
そして……リルとサラ二人に変化しまったく同じに見える技を使用したペンデ。
それに、死の連鎖を見せたエークシ。実力はまるで不明だ。
だが全員神の遣い。普通の戦いにはならないだろう。
リルとサラは格闘と術。カノンは遊魔術をメインに戦う。
特にリルとサラは守護者を封印している。その実力は言うまでもないだろう。
「よろしくね。ここなら死んでも平気なんでしょ? めいいっぱいやれるのはありがたいな」
「めいいっぱいやれるなら、ルインとやりたいわね。全力をぶつけてやれるのに」
「それでもなるべくリルさんに怪我してほしくはないかな」
「君たちは、諦めるかな? 諦めないかな?」
「へぇ。彼と戦いたいって? いいね、その願い叶えてあげるよ」
「人の子よ。死の中に生を見出すがよい」
なんか遠目に見ていると、少し険悪なムードに見える。
サラとかちょっとビキビキしているように見えるんだが……一体何を話したんだ、あいつら。
そう思ってみていたら、ペンデが俺の姿へと変貌した!
ありかよ、あんなの。でもあいつ、リルとサラ二人に変化してたんだよな。
あの恰好で俺っぽく喋ったら確実に間違えるだろう。
「……これは、このまま始めてもいいのかしらね」
「わらも驚いた。瓜二つである」
「似てるだけじゃないさ。能力もだいたい使えるからね。おっと、ティソーナとコラーダは使えないよ」
「本当に似すぎていて、どうしようかと思うね。平気かい、サラ」
「へへへ、平気に決まってるじゃない。へ、へっちゃらよー!」
「凄い。声まで同じだわ。絶対間違えるわよ、これ」
「それじゃ、戦意喪失して諦める前に始めよっか。僕の速さについて来れるかなー」
「なぁなぁ、ルインもそうだけどあいつ、俺様に似てるぞ?」
「まるでメルザとルインに対峙してる気分になるわね、きっと。でも傍らに知らないおじいちゃんがいる
って不自然ね」
「おい! おじいちゃんと呼ぶでない! 神の遣いに年齢の差異はないのだ!」
なんか物凄く気にしている事が聞こえたようで、エークシが怒鳴っている。その怒鳴り声に合わせて
ビリビリと雷がほとばしっている。こいつは雷の術を使用するのか。いいぞ、ナイス引き出しだファナ!
「では、そろそろ開始しようか。司会さん、合図はあなたたちにお願いするよ。
上からゆっくり見させてもらおう」
「それじゃ、試合開始よ!」
ライラロさんの合図と共に、両者それぞれ一斉に動き出した!




