第三百十六話 決着
「改変! 時の中のルーニー! 己の中に類まれなるものを飲み込み我が許へ向かえ!
後世へと続け! アルデバラン!」
「汝、何を……吸い込まれる。闇の体が。消える……このバラム・バロムの存在が――――」
大きく光り輝くルーニーへと吸い込まれていくバラム。
全ての闇を吸い尽くした後、取り込めなかった賢者の石と、奇妙な札だけがそこに残った。
双方を獣の手でつかむ。
「はぁ……はぁ……やった……のか?」
「ディーン様は、一体いずこへ……」
「ヒヒン! バラムの気配が感じられないね。封印したのかい? 封印したよね? やったね」
「俺様、腹減ったよー……」
「神魔解放! 獣化……解放! ……ぐはっ」
吐血し膝が折れる。覚えたての同時発動。体がバキバキに痛む。
頑強そうな獣の体以外で使用したら骨がバラバラになる技だ。気を付けよう。
手に持つ賢者の石をよくみてみる。淡く光る翠色の石。
これがブレディーの体内にあったのか。
上空にいるルーニーはきらきらと輝いたままだ。
こちらをじっと見降ろしている。
「ルーニー。ずっと、ありがとう。一旦アルカーンさんの許へ行くから離れ離れだけど。
お前が強くなって帰ってきてくれるのを待ってるよ。俺の左腕にはずっとお前がいて欲しい。
お前の帰り、待ってるからな」
「ホロロロー……」
少し寂しそうにルーニーはひとなきして、フッと消えた。
ルーニーとカットラス。ここまで随分と頼ってきた相棒。
我が相棒の更なる進化を待っている。
手に持った札の方を見ると、知とかかれていた。これも何かのアイテムだろうか。
一応持って帰ろう。
「ディーン様はその石の中でしょうか?」
「どうかな。ブレディーを戻す方法、賢者の石にヒントがあればいいんだが……」
「なぁルイン。ブレディーもそーだけどよ。剣はいいのか?」
「そうだった。俺はここにティソーナを取りにきたんだよな。
ここから先はイーファもよくわからない未知の領域。これ取る前にブレディーを戻したら
また守護者になったー! って言われても困るし。早く手に入れないと」
この部屋の最奥に、これでもかというくらい封印が施してある壁の剣。
その封印へと近づいてみると、変な文字がびっしり書かれていた。
コラーダの時とはまるで違う。こちらはとにかく厳重だ。
「さて、どうやったら入手できるんだ、これ」
「燃やしてみるか? 俺様の燃刃斗で」
「絶対無理だろ! それで手に入ったら苦労はしな……ん?」
賢者の石が剣と呼応するかのように光が発せられる。
その光により、びっしり書かれた文字が一つ、また一つと賢者の石へ吸い込まれていく。
「これは……どうなってるんだ。なんなんだこの石は」
「すげー-。文字を吸い込んでくぞ! 不思議な石だな」
「ヒヒン! 賢者の石。別名神の石。貴重な石だよ。欲しいよね。誰でも。ヒヒン!」
「一体どこの誰が作ったんだ、こんなもの。だが俺が持ってても知識が入ってくるってことは
ないみたいだけど」
「ヒヒン! 使用には条件がいるのさ。闇の中でないと使用できない。でも闇の中では普通何も
見えないよね? だから限られた者にしか使えないのさ! ヒヒン!」
「だからブレディーはこいつを見ることができたのか。賢き者の石……皮肉だな」
「ヒヒン! 読んだ者が賢くなる。その石自体が賢いわけじゃないね。そうだよね」
すべての文字を吸い込むと、光がもとの淡い状態に戻る。
俺は封印されているその場所へ更に近づきよく見てみる。
「あなたは本当にティソーナを手にするに相応しいのですか?」
「さぁな。だがイーファに託された。それにイネービュにも会いに行かなきゃいけない」
「絶対神イネービュ様に? ……それが事実かどうか、私もついていき確かめます」
「そうは言ってもお前、封印しちゃったからもうずっと一緒だぞ?」
「……不本意ではありますが、お仕えせねばならないようですね」
「悪いとは思うけど、襲ってきたのはお前だからな。全く、これからはちゃんと俺の話
聞いてくれよな」
「考えておきます」
はぁ。ジェネストとは後でちゃんと話をしないとな。それよりまずはティソーナだ。
「封印の文字は解けたけど、肝心のティソーナは一体どうやったら手に入るんだろう。
守護者を倒して……えっ?」
俺の意識の中に何かが流れ込んできた――――。




