表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第二章 神と人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

362/1120

第三百八話 そんな結末、許さない

 俺を拾ってくれたあいつは、気紛れなんかで拾ったんじゃない。

 一人で寂しかったんだ。

 拾われた俺も、寂しかった。

 あいつと沢山冒険した。洞窟に行ったり島を渡ったり、地底に行ったり別の大陸に行ったり。

 あいつのお陰で色んなものを見た。あいつのお陰で生きてこれた。

 あいつがいたから世界が明るく光り輝いて見えた。

 そしてあいつは俺が人として思う最後の望みも叶えてくれた……はずだったのに。


 俺の体は元に戻って、守るべきあいつは両腕を失った。

 あいつは優しいから、きっと俺を助けようとする。でもあいつは俺の願いも叶えようとする。

 なのに俺は……ブレディーを見捨てられなかった。

 その影響で、あいつが苦しむ事になるなんて。

 

「なぁ神様、頼むよ……俺の止まらない涙を止めてくれないか。

なぁ頼むよ。苦しむのは俺だけでいいんだよ。頼むよ、頼むよ。頼むよ! なぁ……なんで

メルザばかりがこんな目にあわなきゃいけないんだ。俺の腕をやるから、なぁ! なぁ……ああ……」


 ルインはメルザを抱き寄せ、止まらない涙を流していた。隣にいるブレディーもまた、意識がない。

 ブネは冷たい表情でずっと様子を伺っていた。


「ばかものめ。どのみちディーンは死ぬ。なぜベリアールだけ助けなかった。先ほども説明したであろう」

「それが人だ! あんたらにはわからないさ! 大切になった相手を見捨てる事なんて……そんなこと、人

として生を受けたら、できるはずが無い。できるはずが無いんだ……俺たち人間はそうやって、生きている

んだから……」

「それが人間……か。かつてベルーファルクが亡くなった時、フェルドランスは助けに向かい、死んだという。他者の心配ばかりをし、自らの命を投げ捨てようとする。神にはわからぬ感情だ」

「こいつは……こいつは誰よりも優しい。俺が出会ったどんな女性よりも優しい。俺はこいつが大好きだ。

温かくて実直で、こいつと居るだけで俺は幸せなんだ。平和に暮らしたい、こいつの笑顔が見ていたい。

そう願っただけでどうしてこいつが傷つく。俺だけで十分だ。こんな試練、受けた俺がバカだったのか?」

「うぬぼれるな! この娘が今お主に使った力を、別の機会に使った可能性は十分にあるだろう! 

そしてその時はもしかしたら、命までも失っていたかもしれぬ! 今現状生きている事を幸せと考えぬか! 

ティソーナ一つ手に入れられぬものが、アルカイオス幻魔であるこの娘を、守れるものか! 未熟者め!」

「……アルカイオス幻魔? それのせいでメルザが苦しんでいるってのか?」

「……そうだ。アルカイオス幻魔……原初の幻魔の血を引くもの。かつてこのゲンドール……幻ドールを

創設せし者たちと言われておる」

「つまり世界そのものを創造した一族だとでもいうのか」

「それは神の遣いたるこのブネにも計り知れぬこと。イネービュ様なら或いは知っておるやもしれぬ」

「それがなぜ苦しまなければいけない? なんでメルザはこんな酷い仕打ちばかりうけるんだ」

「力が強大すぎる。お主、そう感じたことはないか? この娘に」

「……ある」

「その力を制御することが出来なければ、多くの幻獣たちに飲み込まれてしまうかもしれぬ。

それは賢者の石を持たせたディーンも同じ事だったのだがな」

「ディーン……賢者の石……なぁ。さっき聞こえた、ブレディーと戦わなきゃいけないって

どういうことだよ」

「そやつの使命は闇を守る事。そして、神剣を守る事だ」

「守るために俺と戦うって、だからどういうことだよ。俺は奪いにきたんじゃない。

モリアーエルフの力を引き継ぎ、ティソーナを封印から解放しにきた。それだけだろう?」

「その封印そのものが、ディーンの体内に眠る賢者の石だ。そやつは身を全て闇に落とし、ベリアールと一つとなり、自らを献上してお主と戦わず、ティソーナを受け渡そうとしていたのだろう。

守護者の役目を放棄してでもな」

「……それが、神の所業かよ」

「そこまでは知らぬ。この海底神殿に封印したのはディーンと先祖のモリアーエルフだ。だが鍵は

賢者の石だ」

「ふざけるなよ。おまえら神がどうしようと、どんな理屈をつけようとも、俺は……俺はブレディーを

殺さない! ブレディーを救い、ティソーナを手に入れ! メルザの腕だって元に戻して見せる!」

「……不可能だ」

「人ってのは諦めが悪くてね。何でもはいそうですかってならないんだよ! 特に命に係わる事はな! 

俺は死んでも諦めない。だって見ろよ……こいつらの顔。こんなにも安心したような顔、してるだろ。

どっちも、俺を助けてくれて、安心したからこんな表情してるんだぜ……ここで俺が諦めたら、バカ野郎は

俺だけじゃないか。おおばかだよ、本当にさ……」


 ルインは下をうつむき、ポタポタと涙を流し続け、二人の眠る顔をじっと見て髪を撫でていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ