第三百五話 ジェネスト対?????
「冗談じゃないぞ。お前、そんな隠し玉まであるのかよ!」
「まずい。ツイン。試練規格外」
「そうだろうよ! どう考えても今の俺じゃ倒せないぞ」
光輝くジェネスト。圧倒的な威圧感を誇るそれは、俺に向けての敵意がビシビシと伝わってくる。
確実に仕留めるつもりだろう。更に力を高めているのか上空の闇を仰ぎ見ている。
「ツイン、ブレディー、止める。出る」
「だめだ。今こうしてる間も、きっとイネービュってやつは見て楽しんでるんだろ? ここで
誰かを頼ったら、俺にティソーナの持つ資格は失われると思う。だから手出しは無用。
その代わりブレディー。封印から出て避難しててくれ、頼むよ。もしもの時は止めてくれ。
妖雪造形術、コウテイ……ブレディーを頼む」
「ツイン。ダメ、ダメ、ダメぇー!」
「いけえーーーーー、コウテイ! 神魔解放! ……妖真化!」
これまで味わったことのない激しい衝動に駆られる。壊したい、破壊したい、全てを――――。
「なんですか、あれは。あれがただの妖魔だとでも? 神格化した幻魔の力を越える存在?
どうにかしてディーン様を解放させないと、御身が危ない!」
悪しき獣のように身を縮こまらせ、小刻みに震えるそれに向けて、斬撃を放つ……しかし
何かのプロテクションに覆われまるで攻撃が通らない。
「斬攻撃無効……? 神の領域か! いや……どうみても悪魔……魔人……魔神の類だとでもいうのですか!?」
突撃して一気に六剣を突き刺すが通らない。赤い目がギロリと光り、ジェネストを睨む。
「セロ……」
「……動き出す! しかし神格化した今なら! シャル・ティー・レクイエム!」
「ムカチナオレニオマエヲトリコマセロオオオオオオオオオ!」
プロテクションを解放し、技を放とうとしていたジェネストを思い切り吹き飛ばす。
獣のようなそれは、両腕を下げ、ジェネストを獲物として認識した。
そのままぶつぶつと何かをずっと呟いている……と、背後から緑色の竜の顔が出現した!
「ま、まずい! 従属魔幻影召喚ですって? なぜ妖魔が超高位幻術を! ブレッシブディフレクションズ!」
「ゴアアアアアアアアアアーーーー」
強烈な緑竜のブレスが、ジェネスト一帯を焼き尽くす。
急いでブレス結界を張ったが相当なダメージを負い、膝をつく。
「神格化してなおこのダメージ……しかも本体はまるで力を見せていない……完敗……です。
ああ、ディーン様……どうかご無事で……」
次の瞬間、獣のように襲い掛かるそれにジェネストは飲み込まれていった。
相対するものを飲み込んだそれは、パタリと倒れ、身動き一つとらなくなった。
「ジェネスト……ツイン。終った。ツイン、体、心、ボロボロ」
「ウェーイ……」
悲しそうな声をあげるコウテイを撫でて、ブレディーはゆっくりとコウテイから降りる。
パテパテと歩いてルインの許へ駆け寄ると、煙を上げながら倒れている。
全身が変化に耐えられなかったのか、裂傷や火傷がひどい。
「イネービュ様。見てた? なぜ。彼、平気?」
だが答えはなかった。ブレディーはルインの体に手をあてて、あちこち確認してみた。
すると……封印の一か所に、ジェネストがいるのが見えた。
「ツイン……きっと、あれと、戦ってた。だから、ジェネスト、無事。
ジェネスト、幻魔人形。幻魔人、違う。あの子も、ツインの、一部……不思議な人。
起きた時、激痛、苦しみ。救えるの、ブレディーだけ」
ツインの手をぎゅっと握り、悲しそうな目をしながら、ブレディーはしばらくルインの
髪を撫でていた。




