第三百四話 ジェネスト対ルイン
「星の手の導き――――レピュトの手甲」
蒼黒い手甲がぶれて現れる。神魔形態であれば確かに使用可能だ。三本目の手……
「剣戒! 驚、懼」
二本のコラーダが展開され、レピュトの手甲と左手に一本持つ。右手にカットラスを構えた。
「神の手……まさしく認められたもの。相手にとって不足無しということですか」
「悪いが時間があんまり持たないんでね。さっさといくぞ」
バネジャンプで跳躍して距離を詰める。当然かわされるが、先ほどとは違い、好きな方向に動かせる
新しい手は、回避した方向へ簡単に追撃出来る。
もう一本手を動かす気持ち悪さに慣れるまで、幾度も使用しないといけないだろう。
これも修行だ……な!
着地と同時に後方へレピュトの手甲を操る。ギンギンという音とともに相手の剣さばきを受け流す。
上空に飛翔しながら攻撃を続け、相手の背面を取りに行くが、右側へ大きく避けられる。
「ふう。コラーダ、まだその程度ですか。今のあなたにティソーナはふさわしくない」
「くっ。時間をとらせるわけにはいかない!」
再び凄い速さで迫ってくる。冷静に見極めろ。六つの剣の動きに集中して、剣先を見極める。
……前方は囮! 背面に回り込みまわし蹴りから上空へ来る!
そう呼んで左側へ跳躍し、赤閃を放つ。
「チィッ……動きを読まれてきましたか。この速さについてこれるとは」
「修羅場結構くぐってるんでね。そう簡単にやられるわけにはいかない」
「ふん、ディーン様に比べれば、あなたの修羅場など可愛いものでしょうね」
「どういう意味だ?」
「問答無用! いきます!」
再び連撃を重ねてくる。まずい、そろそろ片を付けないと時間切れだ!
「妖赤海星の大海嘯!」
「ふっ……」
大海嘯とともに大荒波がジェネストを襲ったが、奴は上空へ飛翔して、天井の闇部分に消えた。
くそ、あんなのありかよ!
ぐるりとターゲットが俺の上空部分へ反応する。
「ぐっ……」
「へーえ。これも見切りますか。不思議な力を持っているのですね。それもディーン様のおかげかですか?」
「違う! ぐっ……神魔解放」
「おや、もうおしまいなのですね。あはははは! その程度の時間しか神魔化出来ないとは!
やはりあなたはディーン様に相応しくないようだ」
どうにか弾き飛ばして距離を取る。レピュトの手甲は消滅し、海水はもう引いた。
さて、どうしたものか。
「これで終わりにしましょう。終焉に見舞え! シャル・イー・テトラ!」
「う、ぐああああああああー----!」
左の三剣を真横に斬り、右手の三剣で背後から縦に一撃。
右肩をばっさり斬られた……斬られた傷が熱い。これはまずい。
「致命傷は避けましたか。反応と感、それに運だけはいいようですね」
「運がいいだと? 二度生まれて一度も……いや、前に一度リルに言われたっけ。はは」
「まだ笑っている余裕がありますか。いいでしょう。あなたをギリギリに生かして
ディーン様を取り出す方法を探るとしましょうか」
「はぁ……はぁ、ふざけろよ。んなことさせるか。俺の中にはブレディーだけじゃない、多くの
仲間がいるんだよ」
「ならばその者たちの解放方法も探してさしあげます。あなた如きに捕らわれていては
さぞやお辛いでしょうから」
「言ってくれるね。何発かもらったが、もうくらわないぜ」
「その体で何が出来ると? まぁいいでしょう。それならば絶望の淵に落として差し上げましょう」
ふわりと浮かび上がり、上空で両手を胸の前でクロスさせるジェネスト……何をするつもりだ。
「幻神魔解放」




