第三百話 強大な相手・固有技で貫け
気付いたら三百話にもなっていました。
読んでくれているみなさん、本当にありがとうございます。
まだまだいくぞー!
地響きはどんどん強くなる。辺りは視界があまりよくない。今のうちに準備しておかないと!
「妖雪造形術、コウテイ、アデリー!」
すーっと雪の結晶が集まり、コウテイとアデリーを形成していく。この術にも大分慣れたな……あれ?
いつもの元気な声が聞こえないぞ?
……と思ったら、二匹とも平伏して腕を胸に当てかがんでいる。
「ウェーイ」
「ウェィ」
「まさかクリムゾンいいなーとか言って作ったから真似してるのか……」
その仕草、満点です。
いやいや喜んでいる場合じゃなかった。ここは総力を挙げていきたいところだが、問題はある。
トウマやター君を呼び出して戦い、もしあいつらがやられて死んでしまうと、消滅する。
特にトウマはここまで一番戦ってきた仲間。消滅させるわけにはいかない。
呼び出す時は慎重にだ。コウテイやアデリーも心は痛むがまた造れる。
今の状態なら神魔解放は出来る。真化はあまり使用したくないな。
……どんどん地響きが激しくなったと思ったら地中からとんでもないでかい奴がでてきた!
「なっ? 機械? いや……ゴーレム! 魔造兵器なのか?」
「違う。幻魔兵器。アスタリスク三。行け」
「お前が造ったんかーい! はっ……ブレディーが造ったってことはクリムゾン並みの相手か!?」
「そう。強い。大きい。かっこいい」
ブレディーはこんなものまで造れるのかよ。とんでも少女……いや何歳なのかも不明だ。
聞いたら猛毒を吐かれるので聞かないけどな!
ゴーレムはこちらをまだ捉えていない。しかし巨大だ。このフィールドは高さ数百メートル程、全長数キロ程度の面積。その中央に湧き出た奴は、百メートル程の高さと数十メートルの巨体を持つ。
武器は所持していないが、拳を振るうだけで相当な範囲をなぎ倒すだろう。
多少の攻撃ではびくともしない……足から狙ってみるか。
「コウテイ、俺を乗せてくれ。アデリー。いつも通り挑発しながら引き付けてくれ! 変幻ルーニー!」
「ホロロロー」
「弱点が見えない。上空から奴の弱点がないか探りたい。隙があれば視界を攻撃してくれ!」
準備は整った。まずは一発お見舞いしてやる!
「剣戒! 赤閃!」
十分使えるようになったコラーダの一閃に赤星の力を乗せて斬撃を放つ。
恐ろしい程の切れ味のはずだが、ほんのちょこっとゴーレムの足を削っただけだった。
「ゴロオオオオオオオオオオオオオ!」
「違います、ルインです!」
けたたましい雄たけびにツッコミを入れつつ接近する。余裕を見せているが余裕などない。
敵として見定められたようで、こちらにでかい拳を叩き込んできた……が、コウテイは一気に加速して
拳とその風圧範囲から逃れれる。
大爆風があがるが、こちらは問題ない。うちのペンギンズは素早いぜ!
「赤星の連閃! ……くそ、なんて体格の差だよ。ただの妖魔にゃ荷が重すぎるだろ、これ」
「そんなこと、ない。ツイン、変な、妖魔」
「ぐはっ。ゴーレムに攻撃もらってないのに凄いダメージが入ってくる!」
ブレディーの攻撃にのされる前に対処しないと。まず属性系から試してみるか。
「氷塊のツララ! だめか。赤海星の水鉄砲!」
……お? 水を嫌ってる風に見えるが……でかすぎてよくわからないな。
俺の使える属性といえば氷か雪か海水。海水だからかもしれない。
しかし弱点が出るっていう能力があるはずなのに、全然作動しないな。
そうそう弱点をさらすわけがない……か!
跳躍して上空から再び赤海星の水鉄砲で攻撃してみる。
ルーニーも必死に応戦しているが、あまり効果がみられない。
神魔解放するには決定打を与えられるポイントを見つけてからだ……しかしこんなの
どうやって破壊すればいいんだ。斬撃もあまり効かないし、ねじ込めないと奥には……ねじ込む?
試してみるか。
「黒星……渦、海水……黒海星……黒海星、牝牛の渡渉の黒きアブ、海嘯!」
黒いうねりがアブ蛇となり、黒い水を纏いながら巨大ゴーレムを襲う。
フォーサイトから黒星の力を引き継いだ時、最もイメージしやすかったのが
海星との力を統合した黒海星。先生には使えず俺には使えるものを考えた結果がこの技だ。
ただこの技は対人型に対してでないとそこまで効力を発揮しないだろう……が、それでも
海水が弱点なら効果があるはずだ。
「ゴロオオオオオオオオ! ゴロオオオオオオオオオ!」
「だいぶ嫌がってるな。踏みつぶすにもそいつは海水に近い性質。そうそう無くなりはしない。神魔解放!」
神魔化して一気にけりをつける!
「ツイン、コラーダ、固有技、試す?」
「神魔解放! ああ。ここしかないだろ! 神剣コラーダよ。その力を解き放て。リーサスレテク!」
握っているコラーダが真っ赤に染まり、ギリギリと勝手に動き出す。
フッと消えたと思ったら、一直線にゴーレムへと飛来し、赤き閃光を放ちながらゴーレムを貫いていた。
「これが固有技……リーサスレテクか。単発でも凄まじい威力だ。最大まで極めれば四剣で撃てるんだよな」
「そう。まだまだ。修行、必要」
しかし今の一発でゴーレムを倒せたわけじゃない。死闘はまだまだ続く――――。




