第二百九十七話 神殿地下一階
ブレディーにツッコミを入れながら、グリドラの背中に乗り着いた場所は、大き目の部屋だった。
このままグリドラに乗って降りられそうだ。よかった。
地面に着き辺りを見渡す。上空は真っ黒な闇だが、側面の壁は明るく白い。
神殿の地下とは思えない、アルカーンの空間のような場所だが、扉などがちゃんとある。
「ありがとうグリドラ。戻って休んでくれ」
「荷運び、ご苦労。苦しゅうない。下がれ」
「なんでブレディーが偉そうに言うんだ……」
「お姫様抱っこ、まだ?」
「ここからはブレディーも封印に戻っててくれ! 危ないからな!」
「えー」
「えーじゃないの。試練なんだからモンスターとかと戦うんだろ」
「戦う。一杯。うじゃうじゃ。用意した。盛沢山。盛りすぎ?」
「……嫌な予感しかしないな」
不安要素ブレディーを封印し、扉の方面へ歩く。変な紋様が刻まれている扉だ。
扉を押して開けると細い通路になっており、両脇にはコラーダを取りに行った時のように
道を進むと左右の明かりがともっていく。奥にもう守護者でもいるのか?
そう思って進むと、最初の部屋らしきものがみえてくる……と思ったが部屋っていうよりフィールドだ。
巨大なジャングルフィールドのような場所が、目の前に広がっていた。
上空は相変わらずの闇だが、目の前に広がる光景にびっくりした。
そして、ブレディーが言っていた通り……ここから見る限りでも、数匹の飛行モンスターが見えるし
木々は揺れている。最初の肩慣らしにはちょうどいいか……出来る事も増えたし。
「ツイン。ちょっと待って」
「ん? どうした? このまま進むとまずいか?」
「うん。ツイン、出来る事、整理、した?」
「いや……全くしてないな。早くティソーナ取りに行きたくて」
「ツイン、あわてんぼう? あわてん坊主? ツルツル?」
「なんだあわてん坊主って! 新しい単語を登録するな!」
しかしブレディーの言う事も最もだ。激戦になるなら出来る事を確認しよう。
ついでに使用できるようになったモンスター技も確認しておくか……使える技かどうかも
確かめないと。新たに使用出来るのは、キメラ、バジリスクウィングを除く魔吸鼠の術吸収と
ブルーリーベアーのアングリークロー……この二つは使える気がする。
キメラとバジリスクウィングは馴染むのが遅い。
この二匹は封印から出してみたが、パッとしない感じだ。対術相手で魔吸鼠を出しても、やられると
困るだろうし、ブルーリーベアーは対して強くはない。
強いモンスター程出せるようになるまでの経験がかかるから、モンスター関連はもっと後だろう。
今の戦力でもホー君やター君、グリドラやトウマなどは恐ろしい程強いと思う。
次に妖術だが……黒星の一部が使用出来そうだ。白星? とかいう先生が使用しているのは無理だろう。
更に他の星が使用出来るが、試してみるのがここだと怖い。対守護者の時にでも実践してみよう。
「ツイン。コラーダ、だいぶ、使える?」
「ん? ああ。悪い、考え事してた。そうだな、剣戒してもかなり消えなくなったぞ」
「そう。コラーダの使い方、知ってる?」
「えーと剣戒以外になんか、数本似たようなの出したりできるんだろ?」
「それ以外。コラーダ、固有、技」
「なんだって? 武器の固有技なんてあるのか? いくら振り回しても
そんな技使える気がまったくしないけど」
「それ、神剣。人、本来、知らない。妖魔でも、知らない」
「つまりイーファでも知らないってことか?」
「うん。知らない。神や、魔王、知ってる」
「……それって結構やばい技か? その辺ぶっ壊すような」
「? 知らない。ブレディー、使い方以外、わからない」
「ここから先の事考えると、覚えておいたほうがいいよな。お願いできるかい?」
「わかった。一旦手前の部屋、戻る。そこで、ブレディーの闇の幻魔、出す」
「……あいつか! まさかあれと」
「戦って。ツインなら、きっと、平気」
「まじかよ。あいつ、先生並みの強さだったぞ……」
「加減は、する、はず。多分。もしかしたら。するかも?」
「……入口で、まず難題だな」
再びブレディーを封印から出して、一度手前の部屋へと戻った。
十指の剣士。果たして俺にどうにかなる相手なのか。




