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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第三部 主と突き進む道 第一章 海底の世界へ向けて

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第二百九十四話 花と思いを

「ルイン! また女ひっかけてきたわよ!」

「本当っしょ。うわ、すごい綺麗な顔何この人」

「密着してるわ! 許せないわ! ポット出の癖に!」

「おい落ち着け。どう見ても普通の人じゃないだろ」

「ブネ。久しい。元気? ツインと結婚?」

「ええい騒がしいぞ、人の子よ! ブレアリア。息災か」

「うん。息災。試練、終わり?」

「少し困った事になってのう」

「ティソーナの試練、まだ受けてないんだよ。なんか、力はもらったんだけど。

神魔とやらになれるようになった。俺と先生が」

『ずるいわ! 私もなりたい!』

「そう言われてもな……なかなか大変な試練だったけど、そういや先生は受けてないような?」

「ベルローゼは試練を受けるまでもない。それにルインよ。貴様にはこのブネから与える力がある。

利き腕はどちらだ」

「なんか、左手が利き腕になったんだよな。こっちで剣を使いすぎたのかな」

「それは第七感の影響だろう。本来持つ器用さが際立ったのだ。左手をこちらへ広げて向けよ」


 言われた通りにすると、手を絡めてくる。やたらと冷たい。


『ちょっと、何してんのよあんた!』

「この娘たちは何を言っておるのだ?」

「いや、そりゃね……これで力が得られるのか?」

「まぁ待て……星の手の導き、アンディグラフォ」

「うわわわ、ちょ、え? 何これ。手? 手ぇー!?」


 俺の左腕とは別に、蒼黒い手甲がブレて形成される。動かせてしまうが動かそうとすると

体が気持ち悪い……。


「動かすな! そのままじっとしていろ。封印……よし、これでいい」

「はぁ……はぁ。死ぬかと思った。何だいまの」

「レピュトの手甲を植え付けた。神魔形態の時、貴様はもう一本手を振るう事が可能だ」

「なんだって? 手がにょきっと生えるのか? どんどん人と遠ざかっていくんだけど」

「貴様の意思で操れる武器と思え。そもそも既に剣を二本持っているだろうが」

「そうだった。あると便利そうだけど、平常時使ったら死ぬぞあれ」


 神ってのは本当に無茶苦茶だな。

 アーティファクトみたいなものだと思うことにしよう。


「ルインの手を放せ! 俺様だってしばらく握ってないのに!」

「ふむ。人の手は暖かくてよいな。お主がメルザか。小さいな」

「むー、俺様、苦手だよ、この人」

「人ではない。神の遣いだ。さて、本題だがこれより貴様らは衣装作りと武道会、舞踏会の

支度をせねばならぬ。泉を貴様らの領域へと繋げてやる。

ルインよ。貴様だけは別行動だ」

「まぁ、そうなるよな。ティソーナを取りにいくにはどうしたらいいんだ?」

「ブレアリア。私の代わりに案内しろ。貴様も別行動でよいだろう」

「ブレディー、領域、行きたい。興味、楽しみ」

「ならぬ。ルインと共にティソーナを取りに行く許可を出した後だ」

「ずるい。ブネ、ずっこい。反則。イネービュ様、いいつける」

「こ、こら余計な事を言う出ない。これは貴様のためだ。ルインと二人きりがいいのだろう?」

「ツイン、二人きり? いい。ブレディー、行く」

「俺に選択肢って無いのか!?」

「ない」


 膝から崩れ落ちる俺。でもそうだな。凄いしょげて拗ねてる主がいるから少し、時間を貰おう。


「神魔解放! メルザ!」

「えっ? 何!? どーしたんだルイ……」


 俺は一瞬でメルザを抱きかかえ、桜の木の上をぴょんぴょんと飛び回り、皆から少し離れた。


「すげー-、ルイン。こんなに動いて飛び跳ねられるんだな!」

「この形態はやばいぜ。アニメの主人公顔負けだろうな」


 木々をすり抜け一気に加速して滝付近まで出る。一本の桜の木の脇にたどり着いた。


「剣戒! 一閃!」


 滝を横凪に斬り、滝が大きく水しぶきをあげた。その場所からキラキラと輝く美しい虹色が投影される。


「わぁ……綺麗だ」

「虹だ。綺麗だろ? ほら、手をだして」

「んー!? こうか? あっ……」


 桜の木の下で、虹を背に、メルザの手をしっかり握りながらキスをした。

 誰にも邪魔されない一時の思いを噛みしめて。

 先ほどまで少しむすーっとしていたメルザは、慢心の笑顔でこちらを見ていた。

 紅色の髪をなびかせる片腕の少女は、舞い落ちる桜の花びらと虹に彩られ、美しい一枚の絵のようだった。

 俺は忘れていない。こいつのために生きるって決めた事を。


 懐から少しよれた洞庭藍の花を取り出す。

「メルザ、これをカカシに渡して育てて欲しいんだ。

お前にぴったりの花だ。頼めるか?」


 少しぼーっとしているメルザ。ハッとしてコクコクと頷き、不思議そうに。


「貴重な花なんだ。誰よりもお前にぴったりの花だ。

この花を守れたように、メルザを、その微笑みを。俺が必ず守ってみせる」


 そう告げて、メルザの肩を引き寄せながら、しばらく二人で美しい景色を眺めていた。

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