第二百七十一話 第二層、海底のラビリントス
二層手前でよく休ん俺たちは、身支度を整え気合を入れる。
上を見上げれば相変わらずの海。その海まで伸びる金属のような壁。
コンコンと叩いてみたりするが、到底壊れそうにない。当然といえば当然か。上空千トンを超える重みに
耐えているような代物。勇者だろうが魔王だろうが破壊などできないだろう。
地球の深海にもこのような金属があるのかも……知れないな。重さ千トンに耐えうる硬度……それこそ
それらを求めて戦争が起こる。
争いは何かを求めて起こるケースが多い。暖かい港、多くの食料、人、土地。
所業無情で行き交う人もまた旅人也……さて、行くとするか。
「道は広くない。俺と先生が前、メルザにパモを乗せ真ん中で、リルとサラに後方を守ってもらいたい。
二人は空を飛べる貴重な戦力。瞬時に前方もサポートできる。イーファとファナはいざってときに
盾化して守ってもらえるか? ドーグルとベルディアは奇襲用。特にベルディアは一番素早く突進出来る。
レウスさんは仲間がやばい時に死神の使いで援護を。ブレディー、ドルドー。お前らはきっとこの中で
一番強い。本当にやばくなった時だけ助けてほしい。カノンは傷ついたら仲間の治癒を。
何か質問、あるか?」
「やっぱり君は最高だね。封印されてる僕ら一人一人の事、ちゃんとわかってるんだね」
「やっと出番ね。待ちくたびれちゃったわ」
他のみんなも納得してくれた。
「それじゃまずマップの把握にコウテイとアデリーを……」
「待って。ツイン。それ、進めない。二層からは、私の、周囲だけ」
「どういうことだ? あまり遠くに離れると危険ってことか?」
「危険でないとこいつの修行にならんのだが?」
「違う。二層から、神、領域、近い。進める、限定。賢者、勇者、魔王、神、他」
「そういや海底に行けるやつが限られるって話したな。俺は賢者パーティだから向かえるってことか」
「そう。それ以外。ある魔物。襲う。絶対、勝てない」
「絶対勝てないだと? それはどういう意味だ」
「実体、無い。無秩序に、攻撃、する。神の、魍魎。ブレディーと、いれば、出てこない」
「海底にはそんなのもいるのか。いや、四つの神が存在する領域なら、それくらいでもしないと
秩序が保たれないってことなのかな」
「普通の魔物も、強い。危険。気を付けて」
「わかった。ゆっくり進んで行くことにしよう」
一通り説明を聞いたので、残念だがここからは歩いていこう。メルザの体力が少し心配なので、アデリーを呼び、メルザを乗せていくことにした。
アデリーに乗ったメルザはご機嫌だった。封印中からファナが羨ましそうな声を上げる。
パモもおおはしゃぎしていた。気持ちはわかるよ!
幅四メートル程しかない通路を歩く。横一面は壁で、無数の曲がり角が存在する。
さて、これはどの方向に行けばいいのか。ブレディーマップさん、お願いしますよ。
「ここ、二層、海底ラビリントス。左右から、魔物、来る。正面からも、来る。背後からも、来る。
道、説明する。上、上、下、下、左、右、左、右、ビー、エー」
「そりゃ有名な自爆コマンドだろうが! ……はっ、思わず素で突っ込んじまった」
しかも上に二回いって下に二回行ったら元の場所だろ! ビーエーはどないしろっていうんだよ。
まったく。
「ツイン、疑った? 本当、私の、行った通り。進みんし」
「でもなぁ。ビーエーはどうするってんだ」
「いいからいきーし! わかる、きっと。多分」
「はぁ。他に頼りもないし行くか。イーファもわからないのか」
「ああ。なんせラビリントスの仕組みがわかるのは、ブレディーくらいのものだろう。
通常は多いに迷いながら進んで行くのだ」
「さっさと行くぞ。立ち止まっていても始まらん。案内しろ」
「はい……もうどうにでもなれだ!」
俺たちは最初の道を真っすぐ進む。左と右の曲がる道を見てみると……同じ道がひたすら
続いていた。まじかよ、こんなの目印付けても迷うループダンジョンに見えるわ……。
二本目を真っすぐ……のところでターゲットに反応。しかも上空……いや海からだ!
そうか、確かにこれなら後ろから襲われたりするのも納得だ。全面から敵が来る可能性があるってことか。
「上から三。また秋刀魚か? いや、でかいぞ!」
「来た。深海の悪魔。クラークル」
「クラークル? イカか? イカだよな? イカにしといてくれ!」
降って来た巨大なイカ……クラーケンとクラゲを足したようなそいつは、足が八本あり、合計
二十四本の足でこちらを襲ってきた!




