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異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー  作者: 紫電のチュウニー
第四章 戦いの果てに見出すもの

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第二百六十話 ベッツェンの最期

「あいつがジムロだ。だが……様子がおかしい」


 イーファがジムロを指しながらそう告げる。

 後ろを向いた白髪の老人が、ただならぬオーラを纏っている。

「イビン。ここからはやばそうだ。術が切れないうちに外に出て、ミドーでルーンの町に向かい報告してくれ。これも大事な役割だ!」

「う、うん。わかった。絶対無事に帰ってきてね!」


 イビンを見送った後、ゆっくりとジムロの元へ歩き出す。


「……死兵に気づかれず、ここまでどのように来たかわからないが、よもや

こんな形で相まみえようとは。イーファウルトリノ王。随分と探したぞ」

「決着をつけにきた。ジムロ……今までよく仕えた褒美をやらねばな。終わりという褒美を」

「あんたの目的は一体なんだ? 何を企んでいる」

「企み? ふふふ、そうだな。ジムロはこのゲンドールを統べる企みを持っていた。だが……」

「ジムロは……だと?」

「別系エルフと一体化し、神に近しい存在となり、海星に至る。それが奴の望みだった」

「お前は一体何者だ。何を言っている? 何が目的だ」

「さて、何者だろうな……一人だけ、気づいているやつがいるようだ。なぁベルローゼ。

いや、ベルーロゼ。ベルー家直系の宿命。他者を超越する力……それを欲する

心が! お前にもあるはずだ。さぁ真化しろ! 俺と戦え! 

八つ裂きにしてやる。弱っていたベルータスを取り込み! 使役し! マガツヒ

なる力も得た、この俺と!」

「……博打打ちのベルーシン。且つて封印された妖魔。そのなれの果て……貴様が黒幕だったのか」

「本来ならてめぇの力を奪うのは、ここではなくベルータスの役目だった。

だが奴は残虐より報復を選んだようだ。

本来ならニンファを連れだしたそこの小僧だけが来る予定だった。

そいつの戦いっぷりは部下から聞いてる。

貴様の弟子だろう? まさか赤星をこんな奴に託すとは」

「……黙れ。俺はベルローゼだ。お喋りはもう終わりだ」

「先生? まさか……」

「何も言うな。貴様には才能がある。ただそれだけだ。奴の戯言に耳を貸すな」

「おいおい、いいのか? 俺が何者なのか。なぜ俺がここにいるのか。なぜベルータスを取り込めたのか。ここで一体何をしているのか。どうしようとしているのか。円陣の都を落とし、何を

しようとしているのか。ベルローゼがベルーロゼであること。気になるだろう?」

「……お前がジムロではなく、俺たちの敵で倒す相手って事だけはわかった。それ以外は別にいい。

俺は先生を信じている。先生が何者だろうと、仮にベルータスってやつの身内だったと

してもそれは関係ないことだ。今こうして一緒にいる先生こそ、俺の全てだ!」

「……ちっ、くだらねぇ。いいだろ、もうジムロの恰好をすることもねぇし、戯言もいらねぇな。

ここにいる全員、ばっちり殺しつくしてやる。おっと、ベルーロゼ。お前だけは別だ。

ちゃんと取り込んでやるからな」

「何度も言わせるな。俺の名はベルローゼ。妖貴戦、黒星のベルローゼだ。

貴様はジムロという呼び名のままでいいのか?」

「クックック、いいぜ。もうベルーシンの名前は捨てて久しい。こいつも殺したばかりだがなぁ。

くそみてぇな大陸で、散々殺してきた。亜人殺しも飽きた所だ。妖魔の面々を殺しに行くぜぇ」


 ジムロは無数の顔を持つ四本の腕を携えた怪物に変貌した! 

 今まで見た敵の中でも、一、二を争う程狂気に満ちている。

 こいつは強い! 間違いなくボスクラスだ。ギルドーガより威圧感があるかもしれない。


 考える事は全て後だ。今はこいつを倒すことに集中。気になる事が山ほど増えた。

 この戦い、絶対に負けられない! 


「真化はまだするな。こいつも様子見でくるはずだ」

「はい! 変幻ルーニー! 狭いが頼むぞ!」

「ホロロロー」


 ルーニーを呼び出し、ジムロに身構える。


「黒星の双鎌!」

「術は無効だぜ。まぁ可能だったとしても効かねぇがな」


 先生の黒星が跡形もなく消える。術無効エリアってことはあっちもだよな。

 あいつは一体どんな攻撃をしかけてくるんだ……斬撃か、格闘なのか……わからない。

 そう考えていたら、俺たちの身体が宙に舞い、天井に叩きつけられる! 


「ぐはっ! ……重力を操るっていうのか……」

「くっ……空術……いや、術ではない。空間を圧縮して放つ技だ……」

「ベルディア、サラ! 奇襲だ! レウスさん、ベルディアを浮遊!」

『任せて!』

「ファナ! アルノーで遠距離から奇襲! 

ここは狭い。適切なモンスターは出せない……イーファ、ドーグル、あの重力技、対抗出来る術はないか?」

「少しの間なら防げるはずだ。やってみよう」

「私はルインの一部となって戦おう。重術を飛ばされたら私を使え。防げるかもしれん」


 腕にグルグルと変異イーファが巻き付く形で青銀色の格闘武器に変貌した。


「小賢しい雑魚が。無重空破!」

「きゃあーーー!」

「クッ……まるで近づけぬ」


 全員勢いよく吹き飛ばされる。暴風を無重力にして飛ばす技か? なんてやつだ……。

 イーファの格闘武器が勢いを消してくれたおかげで、どうにか耐え凌ぐ。


「雑魚共が、まずはてめぇらを……」

「剣戒! 一閃!」

「黒曜石の剣、一閃! ダブルクロス!」


 コラーダの一閃に先生が生み出した剣が合わさる。初めてみる武器だ。美しい。

 四本の腕のうち一本を落とした! 


「グッ、てめぇらそれは! その武器を寄越せ! てめぇも殺さんでおいてやる。

必ず手に入れてやるぞ! 神話級!」


 怒り狂った奴が、こちらへ次々と重力技をぶちかましてくる。

 イーファのおかげで回避は出来ているが、防戦一方だ。

 ルーニーが時折攻撃してくれているが、ダメージは大して与えられていない。

 だが……要所要所動きが止まるのでとても助かる。


「このまま押し切れえええええ! コラーダ、二連閃!」

「黒曜の彗星剣!」


 先生の斬撃が天井を大きく破壊する。そうか! ここに展開されている術防止の結界を

破壊すれば、こちらに分がある! 


「イーファ、天井を破壊しつくせば、術は使えるんだよな?」

「どうかな。この城建国以来そんな事態には至っていない。やってみる価値はあるかもしれぬ。

宝物庫事海底に沈んでしまう可能性もあるがな」

「迷ってる場合じゃない! 全員一旦封印に戻れ! 変幻ルーニー! レウスさん、俺を浮かせてくれ」

「任せろ! 大活躍だな? な!」

「ああ! 先生、行くぞ! ダブルクロス!」


 先生と息を合わせて天井を崩す。大量に落ちてくる壁を

ドーグルがジムロにぶつけて攻撃を阻害する。


「この城もろとも心中するつもりか! 無重闊歩」


 ジムロが宙を歩き、悪くなった足場から離脱して上空へ上がる。

 俺もレウスさんのおかげで浮遊している。落ちてくる壁をかいくぐり、バネジャンプで地上を目指す。

 どういった仕組みで地下にあったかわからないが、海水が城を覆い尽くし、今にも水没しそうだ。




 ――――ベッツェン港付近に全員で出る。ベッツェンの町は既に崩壊が始まっている。





「さぁ第二ラウンドといこうか、ジムロ」

「あのまま生き埋めになっていれば楽だったものを。苦しみながら死を望むってか……妖真化!」


 みるみる変貌していくジムロ。巨体になり、切り落とした腕は再生している。


「それはお前だ! いくぞ!」


 カットラスを引き抜きジムロに構える。

 先生は……黒曜石の剣にもう一本、黒星で作った鎌を構えている。


「剣戒」


 俺ももう一本剣を構える。


「極重圧破壊!」

「赤星のダブルクロス!」

「真、黒星の鎌、一刀両断!」


 黒と赤の星がジムロへ飛び交う。さらに変貌したジムロの重力技とぶつかり、激しい

衝撃を起こした! 

 地上のあらゆるものが吹き飛び、崩れていく。


「黒星が赤星を喰っている。もっと力を出せるか?」

「今の俺じゃコラーダに赤星を乗せるのが限界です! それにしても……あいつ本当に

ベルータスを取り込んだんですか? それにしては……」

「ああ。弱い。といっても俺たちより強いがな。様子を見ているのだろう」

「勝機は?」

「ある……貴様だ。いつも天地がひっくり返る発想をしてのけるだろう?」

「そりゃそうですけど! 参ったな。考えよう、今の俺に出来る事を」


 俺はベルータスの事をよく知らない。だが都市程の戦艦を動かす程の妖魔。

 それをそのまま取り込んだわけじゃないだろう。

 なにせ相当フェルドナージュ様に追い込まれていた……そしてこいつは

ベルータスそのものではない。


 最大級の攻撃を繰り出せば倒せるってわけでもない。ああいう輩がいるときは……。


「そうか、封印! でもあんな存在、封印出来るんですか?」

「妖魔の武具に封印するには存在が大きすぎる上、認められなければ難しい」

「ドルドロスだったか。あいつ封印出来ないのか?」

「無理っすよあんなの。ブレディーだって不可能っす!」

「ドルドー、ばかにした? 死刑? 生き埋め?」

「だはーー、起きてたっす!」

「もう平気なのか? ブレディー。あいつ、どうにかする方法ないか?」

「……何、あれ。分身体? 存在、複数。分離、分裂」

「どういうことだ? あいつが本体じゃないのか?」

「変。妖魔、違う。異常。神? 憑依?」

「そういうことか。あいつは地上に封印された後、例の霧神に取り込まれたのだろう。

その過程でベルータスを取り込み、複数体となった。つまり……俺が

円陣で確認したベルータスは本体。こいつに取り込まれたベルータスは分体か?」

「その通りだ。ベルローゼ」

「うわぁ!? アルカーンさん? 驚かさないでくださいよ!」

「貴様が勝手に驚いているだけだ。こちらアルカーン。

現在円陣の城にジオと潜入した。こちらにもベルータスがいるが、こいつからもベルーシンのような

気配を感じる。だがベルーシン本体ではない。分体だ。つまりこちらはベルータス本体。

先ほど到着したフェドラートたちもベルータスを倒したというが、そちらはベルータスの分体だ」

「ちっ、ややこしい。話は後だ。来るぞ!」

「クックック、おとなしくしてやがるから、観念したと思ったぜ。重牢縛層!」

「うおお、鉄格子が! ぶち破れ! ドラゴントウマ!」


 トウマを呼び出し、その巨体で牢をぶち破った! あぶねぇ。


「なんだその術は。ドラゴンを招来した? てめぇ、本当に妖魔か? あぁ?」

「ただの妖魔じゃない。お前には関係ないけどな! 戻れトウマ。赤星の矢・爆!」

「ちっ、こざかしい。なんだこのゴミみてぇな威力は。うっとおしいビノータスを思い出すぜ」

「くそ、結局本体探さないとこいつの分体やらベルータスっぽいやつと永遠に戦わないといけないってことかよ」

「汝、目、特殊。見える? 見えない?」

「……そうか。ソードアイ! 弱点を見る目があるけどもしかして、本物を見極める目もあるのか?」

「ツイン、忘却? 認知症? 爺?」

「……悪かったな。ジオなら瞬殺オーバーキルだぞそのセリフ……それよりあいつの

本体はここにいるのか?」

「魂の問題。ベルータス、魂、核、共鳴。ベルーシン、魂、ここ。肉体、仮染め」

「魂を感じろってことか? どうやって」

「汝、目、頼りすぎ。本来、目、必要無い。それこそが、ツインの、真実、力」

「何をぼうっとしている! 黒星の盾!」

「ベルローゼさん! そこはだめだ!」

「あばよ、ベルローゼ。重力天災破!」


 ベルローゼが両手でルインをかばい、黒い重力の玉に貫かれて下に落ちる。


「あああああああああ! やめろ! もう、これ以上抑えきれない。だめだ。頼む、意識を

失わないでくれ!」


【妖真化】


「ぐっ、飲み込まれて、たまるか。破壊したい……でも、今は、今は破壊を……

俺の意思で!」

【妖真化】


「ダメ……だ。下賎のもの……を殺す……のは俺、だ」


【妖真化】

「……全てを、我が主のために。我が主の名は、イネービュ。海星神……」


 ルインが大きく変貌する。全てを取り込み発現する、その姿は。


【幻妖混合真化】

「否! 全ては我が主のために。我が主の名は、メルザ。メルザ・ラインバウト。

我が名は幻妖魔、海星ルイネ。失明の力、その断片をお見せしよう」


 青黒い髪を靡かせ、目を閉じ、背後にうっすらと様々なモンスターが映る。

 今にも飛び出しそうなそれらは鎖につながれ、出番を待っているかのようだった。

 その男は美しい指を開き、右手の人差し指である箇所を示す。


「な、なんだこいつは。さっきの奴だとでもいうのか? この威圧感

……てめぇ! どこ狙ってやがる! まさか……」

「万物を見通す力……そこか。イーファよ。お前の力で片を付けよう。積年の恨みを

晴らすがいい。我が力を持ち貫け、ミスティルティン!」

「くそ、やめろおーーーーー! 重牢縛層! 妖神真……まにあわねぇ!」


 すべての鉄格子を一瞬で回避。

 ルイネという存在は、一本の青銀色のオーラがほとばしる槍を、海底に向け投げつけた。

 それは真っすぐ突き進み、海に大きな穴を開け、何かを貫く。

 その槍は上空に浮き上がり、大きな玉を貫いて、ルイネという存在へ戻る。


「ドーグルよ。ベルローゼを救い上げてくれ」

「念動神力。生命の陽動」


 傷ついたベルローゼが空中に浮かびあがる。ルイネという存在が優しく抱き上げた。


「赤星よ。ロゼへ赤き力を戻す。死なせてはいけない。黒き力を吸い上げ、赤き力を流せ。

黒星に転じていた力を白星に。これがお前の真の力……我が元にお前も来い。ロゼよ」

「ぐっ……な……ぜ」


 何かをいつくしむように、ルイネはベルローゼを抱きしめる。神々しさが漂うその光景を

到着したリル、カノン、そしてメルザはその光景を見ていた。


「ルイーーーーン!」


 その呼び声にルイネという存在の、全身の力ががくっと抜け崩れ落ちる。

 慌ててリルがメルザを連れて支えに入る。


「よかった。生きてるよ、二人とも。僕の技は一人用なんだけどね。カノン、支えるの手伝ってくれ!」

「一体何があったんだ。ベッツェンの町、めちゃくちゃだしよ。みんなは?」

「封印の中だ」

「ぐおおーーーー! まだだ、てめぇら全員、道連れだ! もう助からねぇ!」

「ジムロ!? まだ生きて……」

「呪縛無重大爆発! くたばれや、ゴミ共が! 俺が最強だぁあああ!」

「うぐっ……死なせん、守りとおす……妖赤白の吸盾」

「全員封……中に……ザ……が守……」


 盛大な爆発が起こるが、ベルローゼの盾が発動して、ルインを救う。

 だが……全員無重力の爆風に吹き飛ばされ、海底へと飲み込まれていった。


「く……そが。最後の最後まで、邪魔、しやがって……兄弟。霧神……俺ぁ死ぬのか?」

「安心なさい。核が落ちても存在意義は消えぬ。器を探し再び……時はかかる……」

「そう……か。クククク、おめぇもまだ殺したりねぇよな、ベルータスよぅ。ククククハーッハッハ……ぐふっ」


 その後ベッツェンの一面に残るのは、静寂と廃墟と血と海。それだけだった。

ここからしばらくは間話を挟みます。

本編第三部を開始するにあたり、少々キャラ図鑑などを構築する予定です。

(誤字修正含めこちらも少しずつ作成していきます。気づいたら膨大なキャラを

構築していた……)

続きをお楽しみの方はぜひ、ブックマしてくれると今後のモチベに繋がります。


第三部は来週半ばあたりから開始出来たらと思っております。

引き続きよろしくお願いいたします。

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