第二百三十九話 ウガヤの洞窟
「ここへ来るのも久しぶりだな」
「ああ。なつかしーな。初めて来たときは気絶してたんだよなー」
俺とメルザは明日の別行動前に、二人で攻略するガラポン蛇の洞窟……いや、ウガヤの洞窟へ来ていた。
戦力アップにつながるといいのだが、新しい装備類の確認や、この洞窟について
調べたいこともあるからだ。
俺たちが巨大樹の図書館へ向かった頃、ベルローゼ先生とシーザー師匠はこの洞窟を訪れた。
しかし中には何も無く、宝箱も見当たらなかったらしい。
ミリルと二人でも洞窟へ入ったようだが、結果は同じだった。
この洞窟は、俺かメルザのどちらか……あるいは双方がいて初めて効果が発生する洞窟なのかもしれない。
「さて、まずは看板を調べるまえに。みんな出れるか?」
「ええ。これってルール無用の使い方よね。以前みたいに」
「なんなのよ、ここ。不思議だわ」
「僕ら妖魔の国にはない、不思議な感じのする洞窟だね」
「びっくりっしょ。ルーンの町だけでも凄いのに」
「町から直接向かえる洞窟か。凄いね、これは」
封印からみんな次々と出てくる。
ドーグルとパモは中にいるままだ。
結局二人専用洞窟に、俺、メルザ以外でいうとリル、サラ、ファナ、ベルディア、イーファが
来ている。
カノンも来ようとしていたが、リルに決戦前だから休むよう言われて止めた。
レウスさんは一人で絡みにいくので置いてきた。毎回危ないんだよ!
「相変わらず立て札と小さい宝箱があるな。どれどれ……」
看板にはこう書いてある。
ここはウガヤの洞窟。これより先は二人で進む道。一人で進むことなかれ。
当たり洞窟じゃないのは残念だ。しかし……おかしいな。
初めて来たときは、ガラポン洞窟と書いてあった。
ウガヤと俺が認識したからなのか?
考えてもよくわからないので、小さい宝箱を開けると、幻薬(小)が二つ入っていた。
メルザのポーチに詰めて、宝箱を持ちあげる。相変わらず地図がそこにある。
手に取りよーく見てみる。
行き止まりっぽいのが四か所。
青いマークがうち三か所、黄色いマークが一か所。
奥にでかい部屋があって赤丸三角と四角いマークが書かれていた。
最初の洞窟と似てるな。時間はそれほどないだろう。手分けして探索するか。
「みんな、見てくれ。ここが入口で東に伸びる道に青いマークのある部屋が三か所、西に一か所ある。
手分けして探索しよう。チームはメルザとファナ、リルとサラ、イーファとベルディアで青い印を。
俺はドーグル、パモと西に向かう。危険と判断したら他のメンバーとすぐ合流してくれ」
全員から承諾を得て、封印のドーグルと共に西へ向かう。
メルザとファナパート――――
「ここに前来た時、けろりんがいてよ。まぁまぁうめーんだ、そいつが」
「けろりん? それってルインが前に言ってたレインフロッグとかいうモンスターよね……食べたの?」
「おう! ちょっとぷよぷよしてるけどよ、それがうめーんだ! にはは! またいねーかな」
「……いても食べるのは嫌ね」
指定された部屋付近へ近づくと、遠目に何か動くような気配がする。
「ゲッコゲッコ」
「おお、いたぞファナ! けろりんだ! でかい方だからでかけろりんだ!」
「何あれ。葉っぱからずっと水が出てるわ……不思議なモンスターね」
そこには以前メルザが倒したでかけろりんが三匹いた。
「よーし俺様が……」
「ちょっと待ってメルザ。私も試したいことがあるのよ。変身! 藍ペン!」
ファナが藍色のペンギンに変身する。片手を挙げてメルザに挨拶した。
「ファナ、可愛いな! けどよ、それでどーやって攻撃するんだ?」
ファナは喋れないようだが、口から雪のブレスをでかけろりんに吐き出した!
猛烈な吹雪が、でかけろりんの一匹を雪まみれにする!
「おお、すげー! 俺様雪は使えねーけど氷で攻撃だ! 氷刃斗!」
メルザも別のでかけろりんに、巨大な氷の刃を叩き込む。あっという間に二体のでかけろりんが倒れた。
藍ペンのファナは腕を組み考えるようなポーズをとる。とても愛らしい。
刹那、地面に向けて雪を吐き出し、足場を雪で固める。出来た足場で滑りながらでかけろりんの周りをクルクルと回り……牛鬼に変化してタックルした!
「おおー、変身ってそんな風に使えるのか、すげー! ファナかっこいいな……俺様より目立つぞ」
クルっと回転して戻るファナ。しかし変身を連続で行うとかなり疲労するようだ。
そもそも義足の彼女は装備に頼らないと歩く事もままならない。だが彼女はいつでも元気に振る舞い、ルインたちに心配させぬよう努めている。
「ふぅ。やったわね、メルザ。お宝はあるかしら?」
「探してみよーぜ! こういうのこそファナに向いてるだろ?」
「うん! お宝を手に入れるときはいつもご機嫌よ! うふふっ」
メルザとファナの戦った場所には通常の宝箱があった。
罠がある可能性もあるので、通常の宝箱の場合は気を付けるように言われている。
「罠があるかもしれないし、とりあえず報告に行きましょ」
「そーだな。俺様が行ってくるからファナはここで待っててくれ、疲れただろ?」
「そうね、そうするわ。ありがとね、メルザ」
メルザはバタバタと部屋を出て、嬉しそうにルインの方へ向かった。
その姿を見てクスリと笑い、自分もあれくらい素直だったらな……と考えるのであった。




