第二百二十六話 お友達になりたいミリル
水虹の源を取りにドラディニア大陸へ向かうミリルたち。
ミリルはベルディアと一緒にミリルの竜、ルーに乗っていた。
尻尾にはレウスさんが捕まっている。
ルーは今や大きく成長して、空もスイスイ飛べるようになっていた。
「ルイーー、ルイルイー」
「ベルディアさん、あまりお話する機会がありませんでしたが、これからよろしくお願い
しますわね」
「あんた最初からいたっけ? 覚えてないっしょ。けどドラゴン凄」
「ああ、わたくしの存在感って……ルーに比べれば小さくて当然ですわ……」
「槍使いは兄貴がいるから肩身がせまいっしょ。あいつまじ強」
「ベルドさんですわね。あの方は確かにお強いですわ。わたくしは竜騎士。竜がいて初め
てその真価を発揮しますのよ」
「へぇ。それじゃ一対一は駄目っしょ。つまらない」
「ガーン。ベルディアさんは一対一がお好きなんですね……」
「当たり前っしょ。突撃して打ち倒すとスッキリ!」
ミリルはベルディアがサラと似た雰囲気だと感じた。
けれどサラより一直線な気がするとも感じていた。
――一方その頃ベルドとファナは、こちらもあまり話をしたことがないため、自己紹介
をしていた。
「ドラディニア大陸まではもう少し時間が掛かる。僕のことは聞いているかい?」
「ええ、多少は。ルインと闘技大会の決勝で戦った人よね。私、ドジって見れなかったのよ」
「常闇のカイナに連れ去られた話は知っている。僕らも大会を襲撃されたときに襲われたからね。
一人一人がそれなりに実力を持っている、厄介な闇組織だ」
「そうね。私は三夜の町にいたある人物と修行して、少し調子に乗っていたのもあるわ。
いい薬だったのかもしれないわね」
「それは初耳だな。君は変身して戦うのが得意なら、制限ありの大会じゃ不利だろうし
変身するのに時間もいるからサポートは必要だろう?」
「それを負けた理由にはしたくないのよ。そのための工夫をしろって言われてるのだけれど
まだまだ上手くいかないわ。もう少しルインのように動きたいのだけれど」
「彼のようには僕でも動けない。あれからかなり修行を積んだのに、逆に突き放された
気分だよ」
「あら、あれでも大会後、ゼロからのスタートなのよ。一度全ての力を失ったって聞かな
かった?」
「なんだって? それであんなに強いのかい? なんてやつだ」
二人ともふう……とため息をついてルインに呆れる。
「もう一人、リル君だっけ。少し手合わせしたが恐ろしい強さだった」
「リルもサラも強いわね。フェルドナージュ様の親族だしね。ところであなた、戦闘のと
きに私と協力出来る技とかない? 基本は支援なのよ、私」
「僕は接近戦主体で幻術が使える。現地に着くまで何か考えておこうか」
四人はしばらく話し合い、ドラディニア大陸のドラグアマウントという滝が流れる山に
到着した。
「ドラディニア大陸はやはり広大だね。恐らく僕らが一番遅くなるだろうね」
「ルイー」
「わたくしもこの辺りに来るのは初めてですわ」
「さっさと探すっしょ。どんなもの?」
「キラキラと輝く虹色の水が湧き出る源泉……分かれて探しましょ。私とおじさんとベル
ド、ミリルとベルディアとルーで」
ミリル達は西方面に向けて歩く。
「この辺りは気温が低いですわね。あら、あれは何かしら?」
「もう見つけたっしょ!? ……これ、スライムっしょー!」
「るぴぃーーー!」
ルーがすぐさま炎を吐いてスライムを攻撃し、消滅させた。
「すみません、きらきらしていたからてっきり……」
「あんた、迂闊すぎっしょ。ある意味私より突っ込む」
「あら、あれは何ですの?」
「ちょ、待つっしょ! それもモンスター!」
「るっぴぃーー!」
再びルーがモンスターを燃やす。
「この組み合わせ、絶対外れっしょ……」
「さぁベルディアさん、どんどん行きますわよ!」
「おかしいっしょ。私が一番最前線に行くのに」
――東方面に歩いていくベルドたちは……。
「なんか反対側が騒がしいが、仲良くやれているのかな、妹は」
「そうみたいね。案外気が合うのかも。でもミリルってしっかりしてる風に見えて案外抜
けているのよね」
「いいとこのお嬢さんという雰囲気だが、そうなんだね。僕は彼女のようなタイプは好み
だが」
「あら、ベルドでもそう思うのね。女子には興味無い誰かさんみたいにみえたけど」
「ルインのことかい? 僕はそうはみえないが、意識しないようにあえてそうしているん
じゃないかな。ここには綺麗なお嬢さんが多いからね」
「その中に私も入っていると嬉しいのだけれど」
「おや、君はとびきり美人で熱い羨望を受けていたと、闘技大会で認識しているが?」
少し赤くなるファナ。
「あら、あなたも聞いてたのね。あの司会……今でも腹が立つわね」
「ははは、それはいいとして、そちらの骨はマジックアイテムで出来てるのか?」
「おじさんのこと? そういえば喋ってないわね。どうしたのよおじさん」
「いやな、男女の語らいに入っていっていいのか迷ってたんだわ! いや青春だ!
な? そろそろ我慢しなくていいよな? んじゃ友達探して来るわ!」
「まずったわ。ベルド、構えておきなさい」
「え? どうしたんだい? あの骨はどこに?」
「ほぼ必ず、モンスターを連れてくるわよ」
「おい俺だ! バシちゃんだぞ! 聞いてるのかピュグちゃんよ!」
十数匹の二足歩行型竜を連れてくるレウスさん。
「あー! やっぱりやった! この骨!」
「これは随分と大量だね。困ったな」
「アルノーでフォローするわ!」
「まぁ肩慣らしには丁度良い……か!」
二槍を構えるベルド。何匹かはレウスさんを狙っているが、八匹程は一直線にベルドた
ちは向かう。
「シッ!」
「ギュルウウウウウ!」
二本の槍を次々とねじ込み倒していく。
歩行竜はベルドの横をそれてファナの方へ。
「雷斗」
ベルドから雷が放たれてファナの方へ向かった歩行竜はしびれて倒れる。
ベルドを襲おうとした小型竜へは矢が飛来してベルドを襲えないでいる。
「お前ら俺を無視しやがってもう許せん! 燃え尽きろ!」
レウスさんの傍にいた奴は、炎で焼かれ動かなくなった。
「さて、こいつらだけで済んでくれるといいんだけどね」
「おじさん野放しにしてると次々巻き込まれるわよ」
アルノーから戻ったファナがそう告げる間もなく……「おう、ラフレシア
じゃないか。俺だ、バシちゃんだよー」
ファナがレウスさんに近づいてバチコーンと思い切り突っ込みを入れ、レウスさんは砕
け散るのだった。




