第二百二十四話 それぞれの目的地を決めて
「しっかしこれだけの人数よく集めやがったな、やるじゃねえかマブダチ」
「俺様じゃなくて、殆どルインが集めたんだぞ。すげーんだルインは!」
「どんどん仲間に入れてくのはメルザだけどな。それはおいといて、サラとカノンは?
ベルローゼ先生とフェドラートさんも出かけてるのか?」
「任務みたいだよ。僕は荷物置きに帰らされたけどね。そのおかげで君の元へ
向かえたから、サラは後悔するだろうな」
「無事ならいい。今いるメンツで手分けして探したいものがあるんだ。
それ以外にも常闇のカイナやライデンの居場所も調べないといけない。
重要な話だ」
「俺達ルクス傭兵団は数人案内役としてつけてやる。
ありがたく使いな。しょば代と足代で相殺だぜ」
「助かる。まず王様を戻すのに
幻泉草、円環の糸、水虹の源っていう三つの素材が必要なんだ」
素材の所在地を調べたら、幻泉草はミッドランド島、円環の糸はキゾナ大陸、水虹の源は
ドラディニア大陸にある事がわかった。
一番楽なのは幻泉草。ここにはハーヴァル、イビン、セフィア達で向かってもらう。
水虹の源はミリル、ルー、レウスさん、ベルド、ベルディア、ファナに頼んだ。
円環の糸は俺とメルザ、リルにパモで行く。念のためイーファとドーグルも封印のまま連れていく。
婆さんやルシアはここで待機だ。アルカーンさんやニーメは多分作業中だよな……そっとしておこう。
シーザー師匠、ライラロさん、シュウは情報収集に長けているため、トリノポートと
円陣の現状を探ってもらう事にした。
カカシは勿論畑の番だが、フェドラートさんやベルローゼさんがもし戻ってきた時に言伝を頼める。
「それじゃみんな……嫌な顔してるのも何人かいるが頼むぞ! 安全第一で!」
『おー!』
全員ルーンの安息所を出ていき、それぞれ支度に移る。
俺とリル、メルザ、パモだけが残った。このメンツは凄い久しぶりだな。安心する。
「そうだ。何か封印されたみたいで俺のトウマがおかしいんだ、見てくれないかリル」
「うん? 封印ねぇ……どれどれ……本当だ。ドラゴンパピィに見えるけど、いつからこうなったんだい?」
「牢屋に放り込まれてからだ。イーファやドーグル、パモは問題ないんだが、無機質系以外のモンスターが
軒並み使えない。後から封印した魔吸鼠なんかは普通のままなんだが」
「それなりに時間が経っても戻らないってことは封印されてるのかもね。
原因がわかるまでは外しておくといいんじゃないかな。僕も外せたらなぁ」
「そういえばリルのプログレスウェポンはどのくらい成長したんだ?」
「じゃあ見せ合おうか。僕は取り外しなんて出来ないから、封印に気を遣うんだよね」
「俺のはその点楽だからな。なんかすまない」
「いつか僕も出来るように努力して見せるさ! じゃあ僕から」
ジュミニ
STR 150+341
DEX 150+185
VIT 150+375
SPD 250+179
CHR 500+188
YP 500+297
リルのもかなり成長してるな。だが! 俺のを見よリル!
蛇籠手の目を押す。
アドレス
STR 1+422
DEX 1+293
VIT 1+554
SPD 1+288
CHR 100+246
YP 100+421
「……君はどこまで封印するつもりなんだい。はぁ……これじゃ僕が足を引っ張ってしまうよ」
「基本性能としてはジュミニの方が高いから、そんなことはないぞ!」
「いや、君がこのまま成長したら果てしなく置いていかれる未来しかみえないなぁ」
「そのころにはきっとより強い武器を!」
「そうだね。そう思う事にしよう……さて、主ちゃんの準備はどうかな?」
「あれ、そういえばメルザとパモはどこいったんだ?」
「温泉じゃないかい? 僕らもせっかくだし入っていこうよ……そうだ! アネスタの事すっかり
忘れていたよ。少し妖魔の国へ行かないか? ここへ連れてきたい妖魔がいてね。
フェドラートの姉なんだけど」
「フェドラートさんのお姉さん? それはぜひお会いしてみたいな。誠実な方なのだろう?」
「そうだね。僕の知る限り最も頼れるお姉さんかな。氷術の達人だよ」
「なんですとリルさん。それは実に興味深い。メルザは少し氷術が苦手なんだ。
パモも少し使えるんだが達人となると氷彫刻も作れそうだ」
「どのみち一度会わないといけないだろうし、主ちゃんが来たら温泉前に行こうか」
「ああ、メルザ呼びに行ってくるか。ゆでだこになってそうだし」
温泉まで行きメルザを呼びに行く。結局混浴になってしまったが仕方ない。
「おーいメルザ。いつまで入ってるんだ? 出かけるぞー! ……二人とも寝てる。
おい! 温泉で寝るなって言ってるだろ! 危ないんだぞ!」
「うーんもうちょっと……」
「ぱみゅぅ……」
「全くしょうがないな。なんて恰好で抱っこさせるんだお前は……これでも一応男なんだぞ」
ゆでだこの主人を風呂から出して、手をうちわ替わりに仰ぐ。
「うーん? 寒いぞー。あれぇ? ……なっ!」
「言っただろ、温泉で寝るなって!」
「うう、ごめんなさい……」
「お、やけに素直だな。大丈夫か?」
「だってリルと二人で話してて、俺様ほったらかしなんだもんよー」
「いじけてたのか。ごめんな。ほら服着て出かけるぞ」
「……んー、ちょっとだけ。えいっ」
「……仕方ないな」
二人でこっそりキスをした。
「……君たち、何してるの?」
「ち、違うんだリル、これは……」
「キャーーー! 見るなー!」
ぼんっと赤くなるメルザ。やれやれ、主をほったらかしにした俺が悪いな。
――――
メルザの着替えを待ち、フェルス皇国へ赴いた。
「アネスタは家にいると思うんだ。こっちだよ」
久しぶりに妖民エリアへ来た。妖魔は他人に興味がないが、相変わらず俺は見られる。
少しリルに隠れながら、メルザの手を引いていく。
しばらく歩くと一件の大きな屋敷に辿り着いた。
「でっけー家だなー! フェド先生の家か?」
「そう。彼の家はフェルス皇国でも代々伝わる家系でね。今連れてくるよ」
リルは家の中にすーっと入っていった。アポとか必要ないのか。余程信頼されてるんだな。
しばらくして女性を連れて戻ってきたリル。どことなくフェドラートさんにも似てるような気がする。
「あなたがルイン君でそちらがメルザさんね。初めまして。ラートの姉のアネスタよ。よろしく」
「こちらこそ初めまして。いつもフェドラートさんにはお世話になってます」
「おう! 俺様フェド先生好きだぜ! よろしくな!」
メルザが初っ端からやらかした気がする。おそるおそる彼女を見た……が
優しく微笑んでいるだけだった。あれぇ?
「ふふっ、ラートから聞いていた通りだね。そっちはラートが頑張ってるみたいだから
私は気にしないよ。さぁ、ここで立ち話もなんだから行こうか」
「おー! 凄い優しそうなお姉-さんだ。俺様憧れるなー。アネスタさんだから姉さんだ!」
「メルザのお姉さんてわけじゃないと思うが……いいのか?」
「構わないよ。こんな可愛い妹が出来るなら嬉しいね。妹欲しかったからさ」
微笑むアネスタさんが仏様に見えた。うちの女性陣は怖い人が多いので、アネスタさんには
出来ればずっとルーンの町にいて欲しい……とみんな思うだろう。
「ところでこの後何か取りに行く予定なんだろう? 私も同行していいかな。
最近身体がなまっていてね」
「いいんですか? そうしてもらえるとこちらとしても助かるんですが……」
「やったー! 姉さんが一緒ならもっとたのしー旅になるな! にはは」
「その前にルーンの町で温泉と行こう。主もまた入ればいいさ」
俺たちは泉に戻り、アネスタさんをルーンの町へ案内した。




