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第二百十二話 落ち行く四人

「うわあーーーーーーーーー、死んじゃうようーー!」

「イビィーーー-ン! 落ち着けー-ー-!」


 俺たちは数万メートルほどの高さからフリーフォール中。

 婆さんとベルディアをしっかり抱え、しがみつかれている。

 このまま落ちればニーメ作の靴といえどぺちゃんこになるのは間違いないだろう。

 だが俺には頼れる仲間、巨体のドラゴントウマさんがいるのだ。



「よーし、トウマ頼むぞ!」

「キュピィ?」

「キュピィじゃなくて頼むぞトウマ!」

「キュピィ?」

「……」

「キュピィ?」

「ちょっとトウマさん? どうしたってんだ!? なんだそのキュピィ? とかいう可愛

らしい返事は! いつも通りやばそうなギイイイイイイイはどうした!? 喋ってないけ

ど! いつも喋ってないけども!」

「キュピィ?」


 おかしい。トウマが絶対おかしい。なんでこうなったんだ。

トウマの封印は、ベルディアがあられもない姿でしがみついてるから確認出来ない。


「うおーー、やべぇ、詰んだ。緊急事態だわ。婆さん! さっき術がどうとかいってたよ

な? なんとかしてくれ!」

「なんだってぇ!? 着地出来ないのかい? 全く仕方ないねぇ。 わかったよ。上の坊

やはあんたがなんとかしな……雄大なる魔の世界より這い出て力となれ。汝を纏う水の塊

となり、浮き上がれ。シャボンボール!」


 突然俺たちの身体を球状の水が包み込みゆっくり降りれるようになる。

 このままだとイビンがフリーフォールでここを貫通する。

 


「ドーグル! あいつ念動力で拾えないか?」

「やってみよう。あやつ一体だけならどうにかなるかもしれん」

「わああああああああ、僕だけ死ぬよおおおお、いやだよおおおお! たずけてよおおお

お!」

「おいベルディア。俺に足だけかけて受け止めてやれ」

「いやっしょ。あいつ好みじゃないし」

「言ってる場合か!」

「いやだもーん。ルインにくっついてるっしょ」

「婆さん! 頼む!」

「年寄りに無理させるんじゃないよ!」

「私が受け止めよう。この可愛いスライムボディなら受け止められる」

「イーファ! 王様なのにすまない」


 イーファを水珠の中に出して、落ちてくるイビンに位置を合わせる。


「念動力! ふぬ!」


 イビンの動きがかなりゆっくりになり、水玉を貫通して中に入る。

 そのままポヨンとイーファが受け止める。


「うわあーーーー! 魔物だーー! スライムだー--! 襲われる! 助けてぇーー!」

「おいおい、助けたのはその魔物の方だぞ! イーファに感謝しろって」

「そもそも君が落ちても大丈夫って言ったんじゃないかー! 死ぬかと思ったよ……でも

有難う」

「そうだった。いやー予定違いで。着地したらトウマを確認しよう」


 俺たちは水玉中でふわふわ揺れながら下へ落ちるのを待つ。

 定員オーバーなのか、それなりの速さで落ちているが、この高さからであればペシャン

ココースは免れるだろう。


「にしても婆さんの術は凄いな。魔術なんてこの大陸に来るまで殆ど見ることが無かっ

た。便利なもんなんだな」

「わしは適性がある水の魔術しか使えんよ。他に無数の魔術がある上、この大陸には

多くの魔術使いが存在する。見ることも多くなろうて。水術に関してはそれなりの腕

じゃよ」

「私も魔術なんて全然見たことなかったし。使ってみたいっしょ」

「ベルディアは適性あるか調べてないのか?」

「調べてないっしょ。兄貴が術に興味無かったから」

「そういやベルドとミリルの方は大丈夫なのかな。ジオのやつが最後、仲間は平気とか

言ってた気がするが、信用できないし」

「もうちょっとで地面に着きそうだよ。

こんな怖いのはもうこりごりだよ……」

「あんた、情けないっしょ! それでも男?」

「ぼ、僕は臆病なんだ。自信もないし……」

「ふん。ルインみたいになれるよう頑張るっしょ」

「む、無理だよ。彼みたいにはなれっこない」

「そう自分で決めつけても仕方ないだろ? それに今すぐ変わる必要はない。俺だってず

っと自分を役立たずだって思っていた。それより警戒しておけ! ここは町じゃない。何

時モンスターに襲われてもおかしくはないんだ」


 と話していたら、パチンっと突然水珠が割れた。


『えっ』


 まだ高さがある。

 俺が一人でイビン、ベルディア、婆さんを抱える。

「わあーーー! やっぱり死ぬーー!」

「三人は重い! イビン、放り投げていいか?」

「私、ダイエットするっしょ……ひど」

「年を取ると瘦せづらくてねぇ」

「ぼ、僕は軽いよ! 力も無いし! 捨てないでよ!」


 落ちている場所が悪い! 葉の無い木が真下にある! 


「うおー! 剣戒! コラーダ、木を切ってくれぇぇぇ!」

 

 真下にあった木をコラーダで両断した。

 そのままだと絶対痛い! 


「念動力! わらが木をどかす!」

「ぱみゅー!」

「おい、パモ。合図ないのに出てきたら危ないぞ!」

「何この生物!?」


 パモが動かしきれなかった木材を吸い込んだ。

 この高さなら普段跳躍して落ちてるくらいの高さだ……が重かった。

 少しばかり足を痛めた。


「パモ、地上で勝手に出ると何時狙われるか分からないからちゃんと中にいてくれ」

「ぱ、ぱみゅう……」

「手伝ってくれる気持ちは嬉しいが、お前に何かあったらメルザが悲しむぞ」


 俺はパモを撫でまわした後、封印に戻した。

 ……しかし大変だったがどうにかみんな無事だ。


「まじ死ぬかと思ったし。落下はこりごりっしょ」

「すまんのう。わしも魔力の限界じゃった」

「僕、高いところ苦手になったよ……ちょっと休もう」

「いやー、すまん。本来ならドラゴントウマって仲間を出して着地するはずだったが、な

んか出てこなくて」


 俺は全員を地面に降ろしてトウマの様子を確認しようとした……。

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