表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

243/1120

第二百八話 ベルディアの格闘跳撃コース

 ――ぐっすり眠った翌日のこと。

 俺とベルディアは再びジオの許を訪れるべく、武芸コースの建物へと来ていた。


「あいつ何処っしょ。ここ広いから探すの辛」

「そういや武器毎に場所が分かれてるけど、剣のエリアには行きたくないよな」

 

 先日騒ぎを起こしたばかりなので、出来る限りあの場へは行きたくない。

 とはいえジオは見渡す限りいないようだ。

 ……俺たちがしばらく悩んでいると、急に上空へターゲットが反応した! 

 こんな場所で狙い撃ちだと!? 


「よっと! よう、待ってたよ。 びっくりしたかい?」

「な……どっから湧いた? 天井には何も無いだろ!?」

「うん? あそこからだけど」


 何も見えない遥か遠くを指さすジオ。

 あんな遠くからジャンプして、俺を上空から一瞬で奇襲出来るのかよ。

 冗談じゃない。こんなやばい奴に教わる予定なのか。


「別に狙ったわけじゃないけど、よく気付いたねぇ。何かの能力なのかな?」

「そんなところだ。そっちもそうだろ?」

「いや、僕のはただの身体能力だねぇ。それより早くやろうか。時間がもったいない

し、君らも忙しいんんだろう?」

「……ああ。まずはベルディアの方を見てもらっていいか?」


 ジオの動きをよく観察したいので後回しにしてもらった。


「私が先でいいの? それじゃ早くやるっしょ」

「そうだねぇ。それじゃベルディアちゃんの方から。ベルディアちゃん。僕を思い切り蹴

り飛ばしてもらえるかい?」

「……変態っしょ」

「え? 何で? 何もしてないのに変態って言われた……」


 落ち込みやすい性格だなおい! とりあえず言い方が悪いから変態って言われても仕方

がない。


「僕の右腕めがけて蹴りを放ってみて。高さはこっちで調節するから次々と。はい!」

「……わかったっしょ。変態先生」


 ベルディアの言葉に動揺しながらも蹴りの講習を開始する。

 流れるようにジオの腕の高さに合わせて容赦なく打ち込んでいく……がこれは。


「シッ! シッ! はぁ! 噓っしょ!? ハアアっ! えいっ!」

「うーん。殺意があっていいけどねぇ。軸足がもろい。それから角度も甘いねぇ。もっと

股を開いて」

「変態っしょ! どこみてるっしょ!」

「だから違うのに……うう。女の子の指導は難しいねぇ」

「いや言い方が悪いんだと思うぞ。足を開けでいいんじゃ」

「足? 足は開いてるけどねぇ? 正確に物事を言うのは大事だ」

「あー、うん。それもそうだ。女の子の指導は確かに難しいと俺も思うことにしたわ」

「えーい、これでどうっしょ! うそ……私の全力っしょ、今の。まじ怖きも」

「ぐふぅ。きもいと言われた……」


 あ、蹴りじゃなく精神的ダメージで倒れた。

 けど直ぐに立ち上がった。平気なようだ。


「君の蹴りはけん制にはなるけど、威力としてはゴブリンを吹き飛ばす程度だね。殺傷力

にかける。これは脚力の強化だけじゃなく、蹴り技に術を混ぜて発動する練習がいるね。

才能はあると思うから、僕が指導してあげるよ」

「本当っしょ? 蹴りであんたを蹴り殺せるようになる?」

「……教える人を殺さないで欲しいねぇ。まぁ僕を殺すのは難しいかな。格闘術では特に

ね」

「……どういう意味だ?」

「僕は殆ど打撃が効かないんだよねぇ。そういう体質で」


 スライムかなにかで出来てるのかジオは。

 強さの底が見えない。久しぶりに見るやばい奴だな。


「次は格闘の方を見てみよう。そっちは得意だろう? 僕の顔面目掛けてパン……」


 喋り終わる前に一発いいのが顔面に入った。これはヒドイ。


「打撃が効かないならいいっしょ。あースッキリした。どんどんいくっしょ」

「とほほ。元気だねぇベルディアちゃんは。その思い切りの良さは僕好みだけど」

「無理無理あんたは生理的に対象外っしょ本当無理」


 無言で膝から崩れ落ちた。そういう意味で言ったんじゃないと思うけど、どんまい! 


「今日一日で三回も崩れ落ちるとは……やるねぇ。この瞬剣のジオともあろうもの

が……」

「さっさと教えるっしょ。格闘の秘訣! シュッシュッ」


 元気なベルディアと異なりしょげくれているジオ。

 ここからが本番だろ? 平気か? 


「では改めて、顔面に狙いを定めて打って来て」

「行くっしょ! シュッ……シュッ! エイ!」


 幾らベルディアが打ち込んでも当たらない。

 簡単に躱してる。ベルディアの格闘術はそれなりだと思うのだが。


「足も使っていいよ。そうしないと相手にならないからねぇ」

「怒ったし。絶対あてるっしょ。シッ!」


 ワンツーから回し蹴り。回転蹴りに連打。

 手数も勢いも踏み込みもあるがかすりもしない。

 ただ躱してるだけじゃない。ジオはほとんど動いていない。 

 フー・トウヤの動きでもぶっ壊れてておかしかったのに、こいつの動きはあの時のフー以上だ。

 格闘最強はフーと聞いていたんだがな。


「よし一旦ストップ」

「シッ! ……ちっ」

「ストップ言ってから攻撃しないの。ほい!」


 尻をぽーんと叩かれる。これは……言われるぞ。


「エッチ」

「なんで!? うう、追加攻撃されたのは僕なのに……」


 落ち込むジオは無視して話を進めよう。


「ベルディアの動きは悪く無かったと思う。ジオ、あんた何者なんだ。 動きがおかしすぎる」

「んー? そうだねぇ。かなりの才能を持ってると思うよ、ベルディアちゃんは。た

だ、レベル的にはまだまだ。君のお父さん、バルドスでも僕には全く歯が立たないから

ねぇ」


 それを聞いてベルディアが身構える。俺もだ。

 なんでベルディアの父親の名前まで知ってるんだこいつは。


「俺たち、バルドスなんて名前言ってないよな。なんで知ってる」

「少し調べさせてもらっただけだけどねぇ。僕は情報通だからさ。ただ突然過ぎて少し信

用を欠いたかな?」

「……ああ。敵とも限らないからな。今は絶対に敵対したくはないけど」

「安心してくれていい。僕は敵対するつもりないから」

「僕は……ね。まぁいい。俺の暗器術も見てくれないか?」

「ああ。その前にお茶飲もう」


 そういうとジオはとてつもない跳躍を見せてどこかへ飛んで行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ