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第二百七話 兵器ココット

 休憩を終えた俺たちは、ココットに関する書物を見るため受付に赴いた。

 以前アナライズした折、兵器と表示されて以来ずっと気になっていた。

 見た目はただのブリキの玩具。ココットとしか喋らない。

 朝の目覚まし役となるほど賑やかだ。


「ケンサ―、古代の戦闘兵器に関する書物が見たいんだが、案内してもらえるか?」

「御案内イタシマス。コチラデス」


 ケンサーに案内され別の棚へ。

 今更だが、どれも新品の本であるかのように綺麗だ。

 間違いなくマジックアイテムだろう。なにせ書物は劣化しやすい。


「古代ゲンドール兵器……これか」


 本を持ちミリルの下へ戻ると、設置場所へセットする。

 トップに表示されるのは各大陸の映し絵だ。

 場所毎に兵器一覧が見れるのか? 目次からココットを探すと……あった! 


「ミリル、これ見てくれ。驚きだ」

「……かつて世界を半壊させた古代兵器、ココット。その力はあまりにも強大がゆえ、制

御出来る者はいなかった。七十二の守護者が、それぞれの体内に一つずつ兵器のパーツを

封印した。七十二の守護者はそれぞれ、兵器が持つ力の一端を受け継ぎ行動に制限を掛け

られて封印された。これによりココットの力は失われ、世界は崩壊を免れることが出来た

のである……これってあのココットちゃんのことではないですわよね?」

「そう思いたいが、古代兵器のココットなんてそうそういるもんじゃないだろ……見な

かったことにしておきたいが、見てしまったな。はぁ……」


 世界を半壊させる力を復活なんてさせたら、それこそ大罪人の仲間入りだろう。

 ココットが悪用されるとは思えないし、七十二守護者なんて知らない。

 これについても調べる必要があるか。この本には……載ってない。

 ひとまず置いておき、次の目的を調べよう。


「ココットのことはさておき、次は神についてだ。イネービュと霧神とやらについて知り

たいな」

「今度はわたくしがケンサーに聞いて持って参りますわね」


 そう言うと、席を立つミリル。

 しばらくすると、ゲンドールの神々という本を持ち、戻ってきた。


「こちらの書物にきっと載っていますわ。見てみましょうルインさん」

「ああ。恐らく殆どわからないと思うけど見てみたい」


 ミリルがセットして本の目次が開くと同時に、小さく表示される神々と思われる者が

映し出される。

 どれも神々しく描かれているが……水ないし海に纏わるのはこれか? 

 両手に水を巻いた美しい造形のそれは、時折渦を上空に巻き上げている。

 海星神イネービュ……間違いない。


 四海神の一柱。海の星を司る。

 海底神スキアラ、海冥神ネウスーフォ、海炎神ウナスァーと並びゲンドールの海を司

る。

 遥か昔、海に星を呼び込み、海宇宙を作り異世界を繋げたとされるが、海の星に届いた

者は発見されておらず、実在したとされる文献は存在しない。


「……よくわからないな。四海神ってことは海にも様々な場所があって司る神が違うっ

てのか?」

「わたくしもよく分かりませんわ。封印のイーファさんなら御存知ではなくて?」

「ドーグル、頼む。……イーファ、わかるか? 俺には難しすぎてよくわからないんだ

が」

「場所というよりは海の層による違いだ。私が封印したティソーナは海底の領域。

海星神や海底神はその層の話だろう。海冥神や海炎神はよく分からぬ。エルフといえど海

をくまなく調べられる種族ではない。私に比べればまだモラコ族の方が詳しいだろう」


 ……そうするとティソーナを得る過程でイネービュってのに遭遇する可能性はあるか。

 先生には結局知らんと一瞥された。知ってる感じだったんだけどな。

 自分で調べ考えろってことだろう。頭で考えない者を先生は嫌う。

 ムーラさんにも話を聞いてみようかな。


「次は霧神について調べよう。この大陸の神だから載ってるよな」

「霧神という項目はありませんわね。名称が違うのかしら」

「本当だ。参ったな、霧関連の神を調べたいんだけど……そうだ! 災厄や祟りに関する

神はわかるか?」

「災厄をもたらす神……ありましたわ! これですわね」


 ミリルが目次から選択すると、小さなそれが映し出された。

 モヤがかかっていてよく分からない。これを霧にみたてたのか? 


「マガツヒ……二神一対。ヤソマガツヒとオホマガツヒ。悪しき心に忠実なる神と、悪し

き行動を悪とする心の神。一神は不合理で大いなる災いをもたらし、一神は断じる者の手

助けとなる。両神は反発する原理で、禍いの平行を保っている。祈りを捧げ祀る事で、そ

の者たちへ降り注ぐ災いを退けるとされる……書き方が難しいが恐らく当たりだろう。カ

ノンが話していた村が祀っている一神は、恐らくマガツヒのどちらか……」

「けれど神というのは逸話ではないのでしょうか? わたくし、未だに信じられません」

「俺はこの世界に来るまで別の世界で生きていたと言ったら信じるかい?」

「……わたくしルインさんが嘘をつく人だとは思いませんわ。信じられない話ですけれ

ど、信じるしかありませんわね」


 ミリルは俺を信用してくれている。それだけで十分嬉しい。

 こんな話、仲間じゃなければ信じないだろうしな。


「つまり、俺がここにこうしているってことは、神がいてもおかしくないってことだ。

前世でも散々神の逸話がある。人が想像したものでもあり、人の領域を超えたものでも

ある。この世界であれば、そういった存在がいてもおかしくないと考えている。何せ地

底にまで世界があり、モンスターなんてのまでいるくらいだしな」



 それにしてもここでは多くのことを学べた。有意義な時間だった。

 後は守護者に関して調べるのと、もう一つ……「スライムになってしまった人を元に

戻す方法とか、探せないか?」

「そちらはライラロが調べたはずだ。恐らく見つかってはいないのだろう」

「そうするとライデンから直に聞き出すしかないのか?」

「いや、アグリコラという人物が、もしかしたら私の身体を戻す術を知っているかもし

れぬようだ。宴の際にライラロと意思疎通で確認した。其方の用事を優先出来るよう話

すべきではないと判断した。其方は自分より他者を大事にしすぎる。今は成すべきこと

を成せ。その後でよい」

「……有難うイーファ。じゃあついでに馬語を話す方法を調べるか」

「それは難しいと思いますわよ。ドーグルさんでも意思疎通が出来ないのでしょう?」

「やっぱりそうか。どうしたら天馬と話が出来るんだろう……」

「ヒヒーン!」

「そう、お前と話したいんだよ、俺は! はぁ……宝の持ち腐れだよな。これ」

「それでしたら、ドラディニア大陸でしたら何か分かるかもしれませんわ。何せ竜の聖

地。飛翔する生物が多く存在します。わたくしの故郷ですし、その……一度はいらして

いただきたいですわ」

「キゾナ大陸からも近いんだったな。やることは多いが、向かう先としてはアリだ。だ

がまずは常闇のカイナ、ライデン、それにイーファの件を片付けてからだ。トリノポー

ト大陸の未来がかかってるし」


 ライデンとケリをつけるためには戦力を上げる必要があるだろう。

 イーファの件はそうそうばれようがないし、常闇のカイナとも出会ってはいない。

 奴らの企みが何なのか……いや、それよりもトリノポートのジムロ。

 あいつには注意しないといけない。現状トリノポートを支配しているのは奴だろう。

 俺たちの領域周辺に常闇のカイナが出たら大変だ。用心しないと。


 その後、守護者に関して調べようとしたが、書物は結局見つからなかった。

 調べ方がわからないっていう方が正しいのかもしれない。


 俺たちは調べものを終えて外に出ると、もう真っ暗だった。

 書物を見ていると時間経過が本当に早い。


 明日はジオと会う。領域へ戻り休むとしよう。

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