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第二百六話 古代樹の図書館

 ベルディアと一緒に領域へ戻ると、その近くにベルドとミリルがいた。


「二人とも。遅くなったみたいですまない」

「いえ、私たちが早く終わってしまいましたの。その……いい講師がいなくて」

「今日で絶級まで試したんだが、僕より弱くてね。講師にならないかと誘われたのを

断ってきたんだ」

「こっちも似たようなものだ。そもそも槍なら師匠に学べるだろうし、ミリルもその方が

いいとおもうぞ」

「ああ。君を案内するのが目的で、武芸講義はことのついでだからね。ルインも成果はな

かったのかい?」

「いや、ジオっていう神級の講師がいてね。少し気味が悪いくらい察しがいい」

「ジオ? どこかで聞いた気がするな。そんなに強かったのかい?」

「ああ。剣だけの勝負じゃ歯が立たないな。真剣ではやり合いたくない相手だ」

「君がそういうなら余程の相手だね。ベルディアも嬉しそうだ」

「型決まったっしょ。まじ兄貴越える」

「ほう。僕も負ける気はない。明日時間あるなら訓練しよう」

「望むところっしょ」

「俺は明日、古代樹の図書館へ向かう予定だ」

「それならわたくしが一緒に行って案内しますわね。何度か訪れてますの」

「それは助かる。よろしく頼むよミリル。今日はもう、休むとしよう」


 俺たちは各自食事を取り、明日に備えて早めに休んだ。

 メルザたちも一旦戻ってきてにこやかに食事をする。

 勉強とかひと段落したらお金も稼がないとな。

 ライデンとケリをつけ、最悪傭兵団ガーランドの傘下から抜けないと。


 ――色々考えながら、その日は早めに休み、翌日を迎えた。

 ミリルと泉前で待ち合わせていたのでそちらへ向かうと、イーファとドーグルも待って

いた。


「我々も古代樹の図書館へ行くぞ。ルイン。ちみに足りない情報や知識を王様と共に補う」

「それは助かるが、いいのか? 折角休んでいたのに」

「問題ない。あの中は快適だ。どこよりもな」

「……」

「イーファとはドーグルがいないと意思疎通できないしな。それじゃお言葉に甘えよう」

「では案内しますわね。参りましょう!」


 そういえば……ミリルと二人で行動するのはこれが初めてだ。

 お嬢様っぽいし少し緊張するな。

 堅苦しいのは苦手なんだよ。

 スラっとして凛々しく格好いいミリルが傍にいると、こちらが目立たなくて済むか

ら、カモフラージュになっていいけど。


 泉から浮上して再び知令由学園へ着いた。

 古代樹の図書館はここから直ぐ。

 どれほどの知識が詰め込まれている場所なのか。

 どっさりある書物があるだろうことへ、期待に胸を膨らませて、中に入った。


「ヨウコソ知識ノホウコ。古代樹ノ図書館ヘ。

ワタクシ、受付ノ、ケンサート申シマス。ルイン様トミリル様デスネ。確認シマシタ。

ドウゾ、ゴリヨウ、下サイ」

「受付は機械か? それにしても分厚い本が凄い数あるな」

「ええ。本を見たらもっと驚きますわ。それこそ時間を忘れてみる事になりますもの。

何日でも通えますわよ」

「確かに本は好きだが、これだけの本を一冊見るのだけでも大変だろう?」

「そうでもありませんわ。まずは試してみましょう。ルインさんは試験で何科目合格され

ましたか?」

「製作技術と教養以外かな。三科目か」

「では知識の棚から参りましょう」

「ああ。幻魔の宝玉について調べたいんだけど」

「ではケンサーさん。幻魔の宝玉についての書庫へ案内してくださいますか?」

「承知シマシタ。ゴ案内イタシマス」


 ケンサーがすーっと無音で移動していく。

 俺たちは後についていった。


「コチラデス。ゴユックリドウゾ」


 目的物場所まで案内してもらえるのは助かる。

 これほどの中から目的物を探していたらそれだけで何日かかることか。


「幻魔獣が生み出す神秘。これか?」

「どうかしら? 一緒に見てみましょう、ルインさん!」

「あ、ああ。持って行っていいのか? これ」

「その本をお持ちになってこちらへ。ここにその本をはめてくださいね」

「ん? 本を見にきたのにここへはめるのか?」


 持っているサイズの本を入れるスペースが確かにある。セットしたら自動で朗読

してくれるデイジーサービスのようなものでもあるのか? 


「こちらの椅子に座ってください! 楽しみですわ」

「楽しみって言ってもこれじゃ見ることは出来ないだろう?」


 訝しみながら椅子に座ると、ミリルが本についているボタンのようなものを押した。

 すると……本から次々と小さい謎の生物が出てきた! しかも注釈がついている。

 本に記された物が立体的に出てきて、しかも動くだと!? 

 本当にこの世界は不思議だ……本自体がマジックアイテムなのか? 


「いつみても面白いですわね。ルインさんが見たことのある幻魔獣は、この中におります

の?」

「驚いて声も出なかった。俺が見たことがあるものだと……一番大事な奴がいた。ガラポン

蛇……いいや、こいつの名前はウガヤか。万物を生みあるいは福を、あるいは死を生む龍神

の化身……ね。つまりこいつから幻獣が生み出されたりもする。幻獣の創造神ともいえる存

在だな」

「こんなすごいものをメルザさんが? 凄いですわ!」

「……だが何の対価もなくそんな力が使えるものなのか? ウガヤの説明にはこれしか載っ

ていない。実在するかも不明と書かれている。ん? この鳥は砂カバの時にウガヤが出した

幻獣か? スパルナ……こいつを呼び出せればメルザも空を飛べるな」

「ドラゴン以外で飛空ですの? ルーもまだちゃんと飛べませんのに」


 そういえばルー、また大きくなったな。あんなに小さくて可愛かったのになぁ。

 可愛くないわけじゃないけど。そのうちカドモスとピュトンに並ぶサイズまで育つんだろ

うな。


「幻魔の宝玉について調べたいんだが、幻獣以外を調べるにはどうしたらいいんだ?」

「テーブルに目次がありますわ。そちらから選べば映りますわよ」

「本当に便利だな。……あった、幻獣が生み出す宝玉一覧……ウガヤ以外も出すってことだ

よな、これ」


 目次から選ぶと先ほど映っていた幻獣たちは跡形もなく消えた。代わりに玉のようなもの

がいくつも出現して説明が出る。


「あった! 俺が使ったの、これなんだな。赤い玉だ。いや、赤紫……オペラモーヴ

のような色だ。ウガヤから生まれ、使用者のあらゆる状態を癒し力を与える。しかしその

後、強い呪いを受け最悪死に至るが、助かる者もいる……どういうことだ? 何ともな

かったぞ俺」

「助かる者もいるということは、ルインさんはその呪いを克服したのでは?」

「身体には何の変化も無かったぞ。その後ってどのくらいなんだろう。呪い……呪い関連

……そういえばイーファを助けたときも呪われなかったな、俺」

「……横やりを入れて悪い。ちみは呪いに驚異的な耐性を持つ妖魔なのではないか? 

イーファもちみに話があるようだ」

「ドーグル,有難う。ルインよ、其方強力な呪いのアイテムを一時所持していなかったか。

持つだけで対象を死に至らしめるような」

「あ……持ってた。パモが吸い込んじゃって大変だった。なぁパモ?」

「ぱ! ぱみゅ……」

「すまん、寝てたか。声を出すと気づかれるな。今はいい。それでその呪いが関係している

とかか?」

「いや、やはり呪いが効かない妖魔家系だろう。だが……いや憶測にしかならぬな。

ここにも妖魔に関する書物は殆ど無い。妖魔関連は妖魔の国で調べると良いだろう」

「……そうだよな。地上には殆ど妖魔はいないって話だし。幻魔の宝玉以外の玉に関

しては調べても仕方がないか。ひとまず幻魔についてはいい。一度休憩しよう。その

後はココットについてだ」

「そうですわね。汚さなければここは飲み物を飲むのも自由ですわ。お持ちしますわ

ね」

「ああ、有難うミリル。助かるよ」


 俺はしばし考えて大きく背伸びをした。

 読書したわけじゃないんだが、少し草臥れたようだ。

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