第二百四話 神級の講師ジオ
「早かったね、待っていたよ。お茶でもどう?」
「もらおうかな。少し喉が渇いたのとイライラしたから」
「私ももらうっしょ。まじうざここ」
「いやー、悪いねぇ。この国は武器の扱いに長けるものが少なくてね。君ら講師やらな
い? それなりにお金、稼げるよ?」
「ご免だね。生徒を選べないなんて大変だろう? くそ野郎とかにも指導しないといけ
ないだろうし」
「いや? 僕は教えないよ。気に入った奴しか。多分僕だけだけど」
「……それが許されるってことは、あんたは特別なんだろうな」
「あんたは嫌だな。ジオって呼んでくれ。呼び捨てで構わないよ」
「わかった。それでジオは俺たちに武芸を教えてくれるのかい?」
「そもそも君、先生いるんだよね。ベルローゼっていうんだっけ? 彼はいないの?」
「試験官に聞いてたのか。先生は別行動中だ。それなら目的も何となく気づいてるのか」
「ああ、そうだね。視察だろ? この国の実力を見るための」
やっぱ気づいてる奴いたか。俺の目的に。
「そうなの? 知らなかったっしょ。まじ驚」
「仲間にも伏せてるのかい? その冷静さにも驚かされたな」
「この国っていうよりこの大陸はモンスターが強い。だから武器の扱いも上手い奴がいる
のかと思ったんだけどな」
「強い奴はいるけどね。多くはない。術使いも魔術師が殆どだしね。さて、そろそろ話は
止めて、すこーしだけ戦おうか」
「いいのか? 神級がいきなり手合わせしても」
「いいよ。その代わりその武器じゃなく、木刀にしよう。真剣だと殺し合いたくなっちゃ
うしね」
「それでいいが、二本借りていいか?」
「へぇ、二刀流かい? 君」
「いいや、一刀一拳だがちょっとね」
話し終えた俺たちは、戦う配置につき武器を構える。
相手は一刀片手持ち。構えは無い。こいつはやばいな。
俺は二刀で右手を前に伸ばし、もう一方は坂手持ちで後ろ構え。
「なるほどね。一刀一拳の型戻しか。悪くない。右手に持つ武器の見当はついているのか
い?」
「そこまで分かるのかよ。本当何者だ、あんた」
「神級講師ジオ。別名は……」
「ああ、今はいいや。始めようぜ、ジオ」
「そうだな。開始!」
俺は低い姿勢から右回りに進む。木刀二本は装備として重いが、練習はしていたので十
分動ける。
奴は……動いていない。目だけ追ってるな。
間合いにはまだ入っていないが、俺は回転切りの構えを行う。
遠心力で後ろ構えの左手で持つ木剣を相手に浴びせる方向にして……投げた。
ソードアイの視野があってこそ正確に投げれる位置。
「シッ!」
予見していたのか木刀で弾く。
そのまま右手の木刀を相手に突き刺しつつ弾いた木刀を左手で受け取る。
「器用だね君。だけど……瞬剣!」
「うお、まじかよ!」
一瞬で俺の右手の木刀を弾き飛ばした。
しかもそれだけじゃない。左手の木刀も弾かれている。
「まだだ!」
「おっとそこまで。これ以上はダメダメ。確かに剣のみだったら僕に分があるけどね。
君、色々やれすぎて手数が多すぎだよ」
「っ! なんでそれを」
「いいかい。パターンが豊富なのは戦闘にとって大きな利点だ。だがやれることが多
いってことは迷いも生じやすい。二刀にしたのは何れ使用する武器に心当たりがあるん
だろうけど、慣れてないね。まずは一本に集中して戦おうか。それと格闘術より君は暗
器の方があってるんじゃない? あっちの可愛い彼女より、思い切りが足りないね」
「そうそう私彼女っしょ。思い切り大事」
「そっちの思い切りじゃない! はぁ。その通りだ。元々剣格闘と暗器スタイルだよ。
あんたの言う通り思い切りが良い方じゃない。慎重な方だ」
「君の危惧しているのは至近距離で用いる剣の弱さだろう?
今、かなり至近距離で僕に剣を弾かれたよね。なぜだか分かるかい?」
「いや、見えなかった。瞬剣とか言ってたよな」
「ああ。僕の持ち技の一つ、瞬剣。僕より早く腕を動かせる人はいないと思うよ、ほら」
「ほらって、見えないんだが。音しか聞こえないぞ……」
ソードアイの俺で見えないなら誰にも見えないだろ、これ!
「まぁ見切られても困るか。それより君。型にはまらないのはいいけど型自体は好きなん
じゃない?」
「そこまで分かってると気味が悪いぞ、ほんと」
「これでも剣一筋だからねぇ……一刀二刀の型、見せるとしよう」
「頼む。俺独自のスタイルを構築したいんだ」
「私も気になるっしょ。教えて」
「それじゃ神級講師ジオ、君ら二人の専属講師となろう。受講料は金貨二枚にしといてあ
げるよ!」
あー、やっぱお金取るのかーい!