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第二百二話 それぞれの明日

「シュウさん、本当に毎度いいタイミングで」

「え? かなり遅くなったと思っていたんだが。何せ道に迷ってしまって」


 女性陣以外全員揃ったかなーというタイミングでシュウさんが来た。

 あまりの人の多さに驚いている。無論俺も驚いているわけだが。


「フー・トウヤさんには会われましたか? カッツェルの町は?」

「ああ。しっかり指導してくれている。何人かに才能があったようで町の巡回警備は万全

だ。今カルト兄弟が来ても返り討ちだろう」

「それはよかった。少々問題があったので心配してたんだけど」

「問題? 後で詳しく話してくれ。それと呼ぶときはシュウで構わない。俺もルインと呼

ぼう」

「分かった! 宜しくシュウ!」

「こちらこそ、ルイン!」


 拳を前に突き出し挨拶した。すると色んな奴らが同じく拳で挨拶してくる。

 ……いや、ここにいない女性陣以外全員か。嬉しいな。


 ――ほどなくして衣装直しを行った女性陣が来る。

 全員なんとも美しい衣装だが、最も際立つのはフェルドナージュ様だ。

 傍らにいるカドモスとピュトンも衣装を着ている。

 威圧度が薄れて少し可愛く見えた。

 大型のルーやミドーも出してあるので、今日は外のテーブルへ、びっしりと並べた料理

にエールの樽やらが並んでいる。


「メルザ、一言だけ挨拶を頼めるか?」

「俺様が? ひっ……」


 フェドラートさんが物凄ーく嬉しそうに微笑んでいる。これは怖い! 


「み、皆さん。俺様たちの町がでっかくなったのを祝って、たらふくくおーぜ!」

「海賊か!」


 いかんいかん、思い切り突っ込んでしまった。やばい一味の仲間入りだよおい。

 ……けど、主らしくていいか。食事は世界共通の楽しみだ。


「んじゃ、食事にするか! 新しく入ったメンバーも含めてよろしく! フェルドナー

ジュ様もお越し下さり有難うございます。お好きなだけ召し上がっていってください」

「うむ。メルザよ、もう少し手ほどきが必要なようじゃのう。フェドラートよ……」

「申し訳ありません。まだまだ教育が必要なようですから、指導役として傍にいようと

思います」

「ああ。しかし妖魔国にも動きがあるやもしれぬ。その時は直ぐに」

「はっ」

「フェルドナージュ様、地上の件が片付いたら俺も……」

「よい、ルインよ。其方はまだ未熟ゆえ精進するのだ。それより其方、神話級アーティ

ファクトを入手したのであろう? 見せてくれぬか?」

「はい。剣戒! あ……剣戒! お願い今だけ消えないで! 剣戒!」

「……修練が必要じゃのう。心して励むとよい」


 今カドモスとピュトンが鼻で笑った気がする。ちくしょう! 

 頼みますよコラーださん……はぁ。


「美味い食べものが一杯で幸せだ……俺様、しばらくここにいよーかな」

「駄目ですよメルザさん。あなたは教養と術の勉強をみっちり叩き込みますからね」

「ひぃ……助けてくれー」


 そうだった。全員明日からどうするか確認しないとな。


「メルザとフェドラートさんは術と教養の勉強か。メルザたちと一緒に行動する者は他に

いるか?」

「私が行くわ。変身だけじゃなく術も使えればルインの手助けになると思うの」

「それならファナとメルザとフェドラートさんは一緒だな」

「僕とアルカーン先生、それにマーナとココットは一緒だよ! 勉強沢山してくるね!」

「すまないが私は知令由学園へ行けるのだろうか?」

「シュウさん、恐らく行けますよ。試験を受ける必要はありますけどね」

「それなら僕が案内するね! シュウ兄ちゃん、よろしくね!」

「シュウ兄ちゃん……すまないがもう一度言ってくれるか?」

「? シュウ兄ちゃん?」

「おお、なんという良い響きだ。そう、俺はシュウ兄ちゃん。君のお兄ちゃんだ!」


 あ、シュウさんがニーメの癒しに落ちた。こいつぁちょろそうだ。


「……それじゃシュウとニーメ、アルカーンさんにマーナとココットは一緒……と」

「私とベルディスは新婚旅行に行ってくるわね。ついでに王様の戻す方法とライデンとジ

ムロをどうするか考えるわ」

「ついでが逆なんじゃ……」

「おい! 勝手に決めるんじゃねえ! 新婚旅行なんか行くか! 目的地はハーヴァルの

野郎の場所だろうが」

「またまた、照れちゃって」

「えーと師匠とライラロさんは新婚旅行と……次は」

「おい待てルイン!」


 放っておかないと先に進まないので次にいく。


「僕はカノンを連れて妖魔の町を案内してくるよ。あの大陸にはどのみち連れていけない

しね」

「私もお兄ちゃんと一緒かな。本当は神話級アーティファクト探しもしたいんだけど」

「それなら俺とライラロに心当たりがあるっちゃある。そっちは後回しにした方がいいだ

ろ」

「なんと、まことか。入手可能であれば童も出ること、やぶさかではない」

「それじゃリルとサラ、カノンは妖魔国ね」

「わらと王様、それからルーとレウス殿はここに残ろう。あの大陸には居づらい」

「イーファとレウスさんとドーグル、ルーは町に残る……か」

「僕らは君と行動を共にするつもりだ。まだあまり一緒に行動していないからね」

「有難く思うっしょ。あんたの強さの秘密、見つける」

「わたくしも今度こそ一緒に行動しますわ! ルーはここならいつでも会えますし!」

「ルピィ?」

「パモはどうする? 俺と一緒なら一応行動出来るが、外にはそうそう出れないぞ?」

「パミュ!」

「一緒に行くか。後、ベルローゼさんは?」

「俺は一度城へ戻る。用事を済ませたら図書館へ向かう予定だ」

「分かりました。それじゃ俺はベルド、ベルディア、ミリルとしばらく行動を共にしよ

う。先にあの学園の武芸講義を受けたいんだがいいかな?」

「ああ、構わない。けど、君の実力で物足りるかどうか」

「無駄っしょ。まぁ行ってみるのもいいけど」

「? 少しは戦い方を学べるならそれで構わないんだけどな」


 疑問を残しつつ、俺たちの宴は続いた。

 ミリルは反省を活かして今日はジュースにしたようだ。


「さて、新しくなった温泉に入りたいから先にいくよ」

「童も参る。行くぞ、カドモス、ピュトン」

「フェルドナージュ様、彼ら用に大きい温泉施設を用意しといたのでカドモスとピュトン

はそちらへ……」

「なんと、気が利くのう。こやつらすっかり温泉が気に入って今ではせがむようになり

おったのだ」


 気を利かせたんじゃないよ! そうしないと落ち着いて入れないんだよ! 

 ルーたちが入れるようなモンスター用温泉を新しく用意した。

 そちらでなら巨体で入っても問題ない大きさだ。


 そしてついに! 男湯を手に入れたはずだ。

 男女別の敷居を用意した温泉。

 上空にはプラネタリウムがあり、星々が見える美しい温泉だ。


 ――温泉に着くと、鼻歌まじりで早速体を洗い流して湯に浸かる。

 満点の星空を見ながらの温泉。最高だ! 


「邪魔じゃのう。邪剣!」

「へ?」


 出来立ての敷居は粉々に破壊された。

 すいーと絶世の美女フェルドナージュ様がこちらへ来る。


「なんじゃあの敷居は。一緒に入れぬではないか。温泉とは男女共に入り語らう場所なの

だろう?」


 ……そう、俺は気付いてなかったんだ。

 みんなの認識が間違って定着していたことに。

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