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第二百一話 ルーンの町発足宴の準備

「……おせぇ」

「遅いわよ! 中で変なことしてたんでしょ!」

「まぁまぁ。新しい領域に戸惑っていただけじゃない……かな?」

「どうでもいいっしょ。早く中いこ」

「いいから行くぞ」

「……すみませんでしたー!」


 メルザと二人でぼーっとしすぎたので素直に謝る。

 いやー、あまりに壮観で時が経つのを忘れてしまったんだ。


 全員で新しい領域へと向かう……が、やはり全員泉から出てしばらくぼーっとしてい

る。


「ほら、気持ちわかるでしょ?」

「あ、ああ。予想より遥かにでけぇ。あっちの塀の奥が特訓場だろ? レジンの快鉄屋

はしまいだな。この町に全部移す」

「私とダーリンのマイハウスは何処?」

「住むところは全て温泉街に。いつでも温泉に入りに行けますよ」

「畑は北か。湖が出来てていいのう。ふぇっふぇっふぇ」

「ぱみゅ!」

「ああ、果樹園も北だ。行ってみてくれ」

「僕とカノンは封印に入っていたんだけどねぇ。見せつけてくれたね……」


 やべぇ、気づかなかった! カノンとメルザが真っ赤だ。


「早速特訓するっしょ、兄貴」

「いや、その前に一旦食事にしよう」


 落ち着いてから皆直ぐ、バラバラに行動へ移る。

 大事なことを伝えておかないと。


「みんな! 行動するのはいいけど新しい領域のお祝いを兼ねて、あの時計が六の所まで

いったらルーンの安息所に集まってくれ! それまでは町を見て自由にしてくれて構わな

いから」

「ルインはどうするんだ?」

「俺はせっちゃんのとこへ行ってくる。うちの領域に来ないか誘ってみたいんだ」

「それなら俺様も行く。ファナとパモもいくか?」

「ぱみゅ! ぱーみゅ!」

「ええ。せーちゃんが来るなら大歓迎だわ。骨だけど他にも骨いるし」

「今度こそわたくしも行きますわ!」

「おー、ミリル。だいじょぶか? 随分おいてかれていじけてたな」

「平気ですわ! サモンにルーを連れてきてもらいましたの。ルーがいればわたくしの存在

感は跳ね上がりますわよ!」

「おー、たった数日で連れて来れるとか、やっぱドラゴンはすげーな!」

「もしかしたら俺も空を飛べるようになる……かもしれん」

『えっ?』


 封印した守護者のセーレ。こいつには意思がある。

 守護者としての使命を全うしたためか、その呪縛より解放されたのだろう。

 ヒヒーンしか喋れないが呼びかけにヒヒーンで答えてくれる。

 無論俺には馬語を理解することは出来ないので回答はヒヒーンだ。


「知ってたら教えて欲しいんだが、馬語ってわかるか?」

「馬って会話出来るのか? やってみたいぞ、それ!」

「すまん、図書館で調べるわ……」


 イーファにも聞いたけど分からないし、仕方ない。

 それは後回しにして、まずは三夜の町だ。

 前回向かったときに話しておけばよかったと後悔している。

 さくっと行って来よう。


 ――俺とメルザとパモ、ファナとミリルで三夜の町へと出掛ける。

 ミドーを使うとあっという間だ。昔はここを走って向かったんだよな。

 セサミの宿屋に入ると、せっちゃんはセシルと一緒だった。


「いいわよ、ここより繁盛しそうだし。お客も少ないのよぉ」


 あっという間に快諾してくれた。泉まではセシルと一緒に後日向かうらしいので、今日

の料理だけお願いしてみた。


「手伝ってくれる? ファナちゃん」

「ええ。ミリルもいいかしら?」

「もちろんですわ」


 そういって厨房へ向かう。メルザは諦めたようだ。


「メルザ、今のうちに食器類を増やしたいんだ。パモと一緒にきてくれ」

「わかった!」


 俺たちは久しぶりにブルザの鍛冶屋へと赴いた。相変わらずの職人気質。

 ニーメとは違ってこちらは武器より家庭製品専門だ。

 ぜひうちに来てもらいたいが……少し誘ってみると興味を示してくれたので、もし来る

ならせっちゃんのところへと伝えておく。

 当然せっちゃんもブルザさんも領域許可を出すのに問題はない。

 この町は襲われる可能性がゼロってわけじゃないが、俺たちの領域であれば襲われる心

配などない。

 一通り説明して商品を購入し、それらをパモに預けた。とても助かる。

 せっちゃんのところへ戻ると、出来上がった料理の数々が。


「ぱ、ぱみゅ!」

「あー、うん。少しなら食べていいぞ。いつもありがとなパモ」


 パモにはとことん甘い俺。メルザがうらやましそうにみている。ダメです! 

 メルザは食べ始めると止まらないからな。


「ルーンの町ではきっとカノンが料理してくれてますわ。今日は大量ですわね」

「入りきらない分はミドーに乗せる。俺は走ってくからその分乗せてくれ」

「ルインさんがいなくても大丈夫ですの?」

「どうかな。それも試したい。もし動くなら、そのミドーについていけないようじゃシー

ザー師匠にどやされる」

「それじゃ競争だな! ミドーは大分荷物持ってるからな。ファナはどーするんだ? 俺

様と一緒にミドーに乗る?」

「私はルインの封印に入ってるわ。頑張って」

「ではわたくしが町の入口で合図を出しますわね」

 

 せっちゃんの料理をしまい、残りを両手で抱えながら町の入口に行く。

 いつもの兵士に軽く挨拶し、町を出てミドーを出した。

 俺の命令に従い、問題なく動いてくれそうだ。


「ミドー、ジャンカの泉まで競争だ! ミリル、合図を」

「シュルー」

「行きますわよ、用意、はじめ!」


 シュルルーと動くミドー。やっぱ速い! 

 けど、俺も尋常じゃないほど速いのだろう。

 ついていけるどころかミドーを追い抜ける。


「これはあれだ、やるしかない。キーーーーーン」


 手を横に伸ばしながらそう叫びつつ走った。

 決してそれ以上は喋れないが風に乗った気分にひたる。

 あ、封印からファナがクスクス笑ってるのが見えた。あのポーズはおかしいのか? 

 ……と思ってよそ見してたら目の前の木にクラッシュする。

 ぶっ壊れ少女と違ってなぎ倒せないらしい。

 どうやら俺の体は正常だったようです。


 ――あっという間に泉まで戻ると、全員でルーンの町へ戻った。

 時間はもう四を示している。早いな、もう午後四時か。

 バカでかい時計があると目印になっていいな。


「ルーンの安息所に荷物を持っていったら宴の準備だ。盛大にやりながらそれぞれの行動

を聞こう」


 真っすぐに伸びる道を進み、巨木の中へ入る。

 以前よりずっと広く四十人程は入れるスペースだ。

 中にはカノンと……ベルディアとライラロさんが前掛けをしているだと!? 

 後ろにフェドラートさんが怖い笑顔でいるので、そういうことかと納得した。


「俺も手伝うよ。料理するのは好きだし。パモ、せっちゃんの料理と買ってきたお皿とか

を出していってくれるか?」

「ぱみゅ!」

「メルザはお皿とか並べてってくれ。ミリルは案外しっかり手伝ってくれるレウスさん

を。ファナはムーラさんを呼んできてくれ」

「わかったわ」

「ええ。行って参りますわね」

「僕も何か手伝えるかい?」

「リルは作業に没頭しすぎて、来ないかもしれないアルカーンさんとニーメを呼ん

おいてくれ。その後ベルドたちと合流してエールとワインを汲んでくれないか?」

「任せて。行って来るね、カノン」


 俺にじゃないんかーい! 二人はもう新婚認定しておこう。


「わらも手伝うか? あまり多くは出来ぬが」

「ドーグルはイーファと会話してあげてくれ。王様、あの姿じゃ一人寂しいだろうし」

「わかった。ちみは優しいな」

「俺はいつも、みんなが楽しく喜んで過ごしてくれるのが嬉しいだけだよ」

「それが優しいというのだ。本来ならみんな自分が第一なものだぞ」

「俺にはよくわからないな。自分ばかり大事にしても、そこから先何も生まれないだろ

う?」

「……そうかもしれんな。だからわらたちは、ちみに惹かれるのかもしれん」

「さ、料理の支度に戻るか」


 と思ったらサラが覗き込んでくる。どうしたんだろう? 


「これから宴だよね。この場所任せていいかしら? 女性陣集合よ! 着替え、妖魔国か

ら持ってきたの! フェルドナージュ様も来るわよ!」

「仕方ありませんね。フェルドナージュ様がいらっしゃるなら恰好を改めませんと。残り

は私とルインさんでやりましょう」


 女性陣はバタバタと安息所を出て何処かへ行った。着替えか……俺も以前ベッツェンで

着た浴衣にでも着替えたいな。

 今度手配しよう。さてあらかた準備は出来た。盛大な宴。

 そして明日からの行動を決めよう。

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