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第二百話 領域というより町

 ルーンの領域へと戻った俺は、温泉へ直行する。

 そこで領域に何を追加して、どう区画を決めるのかは決まっている。

 追加する場所は再検討して吟味する。


「プールは場所さえあれば水造石で出来るな。

排水は地下へ。うーん、後は洋裁場かな。巨木の外で飲み食い出来るテーブルと……泉か

ら花火を打ち上げれば見れるようにして……ああ、なんならせっちゃんも呼ぶか。料理す

る人が多いに越したことはないな。それに美しさを好む者が多いし彫刻場でも作るか? 

夢が広がりすぎるな……場所と道具さえあれば、人はあらゆる物を生み出すとんでもない

生き物だからな」

「ほう、領域のさらなる検討か。よかろう、今言ったものは計画に加える。

時計への発想が広がるというものだ」

「うわぁ!? いるならいるって言って下さいよ! アルカーンさん! あっ……一個閃

いた。時計塔を作りましょう。この巨木の上部に木形のデザインで」

「……貴様の発想には呆れて何も言えん。だが気に入った。形状はどうする?」

「そうですね。俺たちは傭兵なので……剣戒! こいつが交差するようなデザインがいい

んだけど出来ます? できれば東西南北それぞれに色違いで」

「誰に言っていると思っている。出来るに決まっているだろう。ああ……だめだ、我慢出

来ん。早速記憶を形にしてくる。ではな」

「アルカーンさん? ああ、行っちゃったよ。いきなり現れていきなりいなくなった……」


 はぁ、どっと疲れた。こういうときは、空を見上げて綺麗な星……は領域に無いんだよ

な。

 そうだ、プラネタリウムが欲しい。

 せっかく赤星なんて使えるし、いろんな星を見ながら温泉に入れたら綺麗だよな。

 温泉プラネタリウム場にすることだけ伝えよう。

 何も一つの温泉にこだわらず、色々な温泉に入れるようにすればいいし。


 そのうちルーが大きくなれば、でかい竜が入れるような温泉もあっていいしな。

 あー、昔やった竜に餌をあげて一緒に成長するゲーム楽しかったー。

 そんなことを考えながら温泉で疲れを取った。


 それからしばらくは、ノックしても返事のないアルカーンさんの部屋に必見! と書い

た追加資料を投げ入れて領域拡張の計画を広げていった。

 時折感嘆の声が上がるので、ちゃんと見ているのだろう。

 発想がぶっ飛んでいる自覚はある。

 それは前世が刺激に溢れた世界だったからか。


 ――――そしてついに領域拡張予定日……から一日伸びた、宴から十一日目の朝。


「みんな一日遅れてしまってすまない。今回は大掛かりな領域拡張道具をアルカーンさん

が作ってくれたらしい。フェルドナージュ様の領域区画を中心に拡張できるらしいので大

きく変化する予定だ。一度外に出る必要があるから、ジャンカの森……が一番目立たなく

ていいよな。そちらへ出てもらっていいか?」

「どのくらい時間が掛かるんだ? すぐ終わるものなのか?」

「こんな便利な場所あるだけでも凄いっしょ。ここから大きくなるとかマジ凄」

「僕らは外に出たら、君の封印の中にいるね。終わったらまた出てくるから」

「俺ぁベルローゼと一勝負してぇんだが、終わったらいいか?」

「ダメよダーリン。結婚式が先のはずよ」

「ちょっと、ちょっと待って! みんな騒ぐのは後にしよう。アルカーンさんが怒る」

「……時間は直ぐだ。ルイン。貴様にこれを渡しておくぞ。外に出たら時計にはめてその

場所を押せ。吸収される」


 上からかぶせるようなものを受け取る。ヘンテコなボタンがついているがよくはわから

ない。何せ幻想級アーティファクトを作り出す奇人だ。


「……わかりました。それじゃみんなジャンカの森へ」


 モラコ族も含めると相当な人数がジャンカの森へ揃う……そうだ! 泉の前で全員この

場所に会するなんて、もう無いかもしれない。


「全員いるうちにロケットに写真を残そう。みんな俺の方向いてくれるか? そうそう。

えいっ」


 以前購入しておいてよかった。それなり幻妖団メル……と。

 肩書きをさっさと変えたい! 恥ずかしいぞこれ。


「これを被せて、こうか? お、時計の針が太くなった? 色も前と違うな」

「これが貴様の渡した資料の結集と、芸術性を組み込んだ新しい領域の形だ。よく確認し

て泉へ飛び込め」


 しばらく資料を念入りに確認してイメージを叩き込む。

 さすがだ。アルカーンさんはとんでもないな。


「ありがとうございます。行ってきます」

「俺様も一緒に行っていいか?」

「ああ、行こうかメルザ」


 メルザの手を引いて泉の前に来た。

 メルザはぎゅっと俺にしがみつき、押し倒して泉へ飛び込み泉の中でキスをして、二人

で深く潜っていった。


 そのままメルザを抱きしめながら浮上する。

 とても、懐かしく感じる。にっこりと笑うメルザが目に入った。

 泉から浮上すると……目の前は既にまるで違う風景が広がっている。


 ここは最も南側に出来た泉。その隣に泉が幾つかある。

 三つかと思ったが、他と繋がった場合を想定してのことだろう。

 泉の前には十分なスペースがあり、花火打ち上げ場所としては十分だ。

 

 南エリアは温泉街。いくつかの建物がある。

 せっちゃんのお店をイメージした宿屋も用意してもらった。

 温泉宿として利用出来る。

 足湯から直接温泉に行けるようにしてもらった。


 西は特訓、修練街用に相当なスペースを用意した。高い塀でないとあちこち破壊される

ので、数十メートルの塀で囲まれている。

 南北東からは確認できない程に高い。


 東は商店、娯楽街。

 プール、彫刻展示場、書物展示場、武具展示場、鍛冶場、茶室、洋裁場、劇場、セ

ラー、アトリエなどが点在する。

 他空きスペースも幾つか存在する。


 北は牧場、畑街。最北には湖があり、こちらでもモラコ族がゆったり出来る。

 モンスターを出した後、その装備をそこに置いておくと、モンスターたちは勝手に動くよ

うになった。

 その装備の周りを僅かに動くだけだが。

 自由にさせてやるには丁度良い。

 完全無外の放牧場みたいに出来ないかな。 

 ある意味恐ろしい光景だが、多くのモンスターが見れていい気もする。

 生体も分かるし。

 今のところ妖魔下妖の一装備などはそこへ置く予定だ。

 封印穴はこれから取り付けてもらう予定。


 そして中央のスペースには巨大な中をくり抜かれた木、ルーンの安息所がある。

 上部には四方から見て取れるコラーダ模様の入った時計。

 ティソーナの形状は分からないので、コラーだの色違いを木材加工で施してある。

 安息所正面には木で作られたテーブルや椅子が並び、いつでも外で宴会が出来る。

 


「すげー! 今まで見たどんな町より凄い! これが俺様たちの領域……これは町じゃ

ねーか?」

「そうだな。ここがルーンの領域……いや、ルーンの町だ。俺とメルザ二人きりだった頃

の領域が懐かしいな」

「ああ。小さい穴倉の中、食べ物もなくてよ……なぁルイン」

「そうだな。色々あったけど、やらなきゃいけないことはまだまだある。常闇のカイナ

も、イーファの件も。それにこの世界のことをもっと知りたい。メルザの故郷のことも

だ」

「……ああ。そうだな。でも今は、もう少しだけ二人でいさせてくれよ」

「俺も、そうしていたいよ。メルザ」


 俺たちは手をつなぎ、しばらく自分たちの大きくなったその場所をじっと眺めていた。

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