第百九十六話 コラーダの探索その二
「いたいのいたの、飛んでけー! はい、もう大丈夫。痛くない」
「ありがとうカノン。とても癒されたよ。感謝する」
「ううん。お疲れ様。危なくなったらすぐ治すからね」
「ルインは平気? 私もいたいのいたいのしてあげようか?」
「おいおい、ファナのは術じゃないだろ。俺は大丈夫だ」
見つめあう二人を後目に俺たちは穴の先を急ぐ。
中は相変わらずかなり暗いが、ソードアイになってから視界は広いし見えやすい。
ぶっちゃけ二百二十度も視野があるのは反則だと思っている。
ファナたちは封印して先頭をレウスさんに進んでもらい、メルザを背中に背負いながら
前に進む。
蛇がきてもレウスさんとドーグルの念動力でどうにかなるだろう。
今は蛇籠手もある。
そう思って進んだが、レウスさんにびびったのか蛇が全く襲ってこなかった。
あの時は蛇の大群で引き返したから、ここから先は未知数だ。
まさかこの先に神話級の剣があるなんて夢にも思わなかったな。
まぁ、普通に転がってるわけじゃないと思うが。
「このあたりでいいだろう。レウス殿をしまいメルザ殿を抱え、前に言っていた土潜りを使うのだ」
「え? ここで?」
「ああ。掘る手間が省けて助かる」
「土潜り! えぇ? うわぁーーー、また落ちるのかよ!」
土潜りを使用した瞬間するりと地面が抜けて落ちる。
トラップに近いだろ、これだと!
ただ着地しても赤銀靴のおかげで骨折はしないが、今はメルザも抱えてるし危ない。
「レウスさんの技を今度こそ。浮遊!」
着地付近でレウスさんの技を使用してふわりと浮く。
下は水脈になっていたのか。水辺が続いている。
この中は明るい透き通った青色で照らされていて、不思議な感じがする場所だった。
「そのまま左手を壁につけてまっすぐ進みなさい。決して手は離さないよう。主殿をお
ぶったままいけるかね?」
「ああ。メルザは軽いからな。左手を付けながらじゃないと辿り着けないのか?」
「そうだ。結界でループする仕組みを作ってある。知らなければそうそう辿り着けぬ
上、それ以外にもしかけがある。順次手筈を告げる」
言われた通りメルザを背負ってしっかりくくりつける。
「ミリルは置いてきてよかったな。ミリルくくりつけたらまたダーリンて呼ばれてた
ぞ!」
「ありゃ酔ってたからだろう。二日酔いで今頃泣きながら寝てるぞ。可愛そうに……
あんな無理して飲まなくていいのに」
「けどよ。ああいうミリルも可愛いだろ? ルインは好きじゃないのか?」
「ん? そうだな。ミリルは可愛いというより美しいとか華麗って表現の方があうん
じゃないかな。無理して可愛くしなくてもそっちの方がしっくりくるだろ?」
「ばーかばーか、そういうことじゃねーよーだ! ふんっ」
「そろそろいいか? ここからは手順を間違えると最初からになる。心して進んでく
れ」
「ああ、すまない。この壁か?」
「そうだ。そこを二回叩いてくれ」
コンッ、コンッと言われた通り叩く。少し金属に近い音が鳴った。
すると叩いた部分の壁がどんどん後ろへ下がっていく。
開いた道にまた手を添えて進んでいく。同じ動作を全部で三回行いながら先へ進んだ。
すると薄く赤く光る場所があるのを目にした。
「あそこだ。その前に立ち手を触れてこう唱えるのだ。我は挑戦者にして勇敢なるもの。
其の封印を解き放ち其を求めん。我は受け継ぎし証の一族が一人、イーファウルトリノ。
盟約の下モリアーエルフの封印を解除し道を開かん。これで奥に進めるようになる。その
先は守護者を倒せば神話級アーティファクト、コラーダが手に入る」
「わかった。やってみる」
赤い部分に手を触れ、イーファの言葉を真似した。
「我は挑戦者にして勇敢なるもの。其の封印を解き放ち其を求めん。我は受け継ぎし証の一
族が一人、イーファウルトリノ。盟約の下モリアーエルフの封印を解除し道を開かん」
するとパリーンと音を立てて赤い部分が割れ、人が一人通れるスペースの道が出来る。
「上手くいってよかった。やはり私は既に、其方の一部のようだ。後は守護者を倒すだけだ
が、抜かりないか」
「ああ。ミリルが来れなくなったのが想定外だが、沢山仲間がいる。きっと大丈夫だ。その
前にここで腹ごしらえしていいか?」
「ああ。ここまできたのなら大丈夫だ。準備をしてから向かうとよい」
俺たちはせっちゃんに用意してもらった食料品を食べて英気を養った。
この先にいる守護者と戦うために念いりに装備を確認した。




