第百九十五話 コラーダの探索その一
俺たちは今、三夜の町に来ている。この町といえばあれだ。
「いらっしゃーい、あらぁ、いい男ね。久しぶりだわぁ!」
飛びつこうとするスケルトンをさらっと躱して戦闘態勢に入る。
……違った、挨拶する。
「せっちゃん久しぶりだな。セシルも元気そうだ」
「元気でした。また起こしくださいました」
相変わらずの過去形返しに安堵する。
「こっちがカノンだ。リルも初めてだったか?」
「あら、お似合いねお二人さん。焼いちゃうわ!」
「そしてこっちが……」
「なんと美しい! 俺と結婚してくれ、な? な?」
おい、スケルトンジョーク続行してる場合か。
「熱烈だけど残念! タイプじゃないわ」
あ、振られた。レウスさんのハートが心配です。
「だっはっは! 振られたわ! 即答だわ! だっはっは!」
問題なさそうだ。早速要件を済まそう。
「三日分の食料が欲しいんだけどいいか? 久しぶりにせっちゃんの料理が恋しくて」
「待ってて! すぐ作るわ! ファナちゃん手伝ってくれるかしら」
「うん、せーちゃんの厨房に行くのも久しぶりだなぁ」
「私も行くわ。美味しいもの作ってくるわね、主ちゃん」
「おー、俺様も……」
「メルザはこっちだ。ほら」
「むぐっ スッパムだ。久しぶりに食べたな! やっぱうまいな!」
「ぱーみゅ!」
「ほう、これは珍味だな。ちみらはこんなものを食べているのか」
俺たちはコラーダを取りにガルドラ山脈へ向かう。
畑仕事をやる予定だったドーグルには、念話のために結局ついてきてもらった。
途中の食料を用意するためセサミの宿屋で休憩してから向かう予定だ。
あの山脈にはいい思い出が無いので、要件を済ませてさっさと戻りたい。
――しばらくして、沢山の食料を抱えながらせっちゃんたちが戻ってくる。
パモに収納してもらい、せっちゃんにお金を渡して三夜の町を後にした。
ミドーに乗っているから移動は楽でとても速い。
数十分でガルドラ山脈へ着いた。
風斗車と違い、ミドーは生き物なので、道の荒さで部品が壊れることも、落ちることも
無い。
「もうしばらく先へ進みそこから下へ降りて穴に入るのだ」
「ああ、この辺懐かしいな。昔落下したのこの辺りだよな」
「うう、嫌なこと思い出すぜ……」
「全くだわ。死ぬかと思ったわね。あの時は」
三人ででかいため息をつく。トラウマだ。
「この辺りだ。下にキメラがいるかもしれぬ。気を付けるように」
「ああ、よく知ってるよ。リル、サラ。キメラを封印していくぞ」
「そうだね。戦力も上がるし丁度いい」
「ええ。アルカーンにもらったこの靴に封印するわ」
「キメラは手ごわい。油断せぬことだ」
「あの時は結局一匹もしとめられなかったから……な! いくぞ!」
ミドーを指輪に戻し、バネジャンプで跳躍して一匹に狙いを定める。
「赤星の突!」
「ギギイーーーーー!」
「ブリッツナックル!」
「ギイイイイイイイイイイイ!」
赤星とナックルの連続攻撃で大きなダメージを与え封印出来た。
っていってもまだ空中だけどな!
「レウスさん、浮遊を頼む」
「おう、あいつら友達だからちっといってくるわ!」
「えっ? 俺はどうなるの?」
「おーいキメラちゃんよー」
なんて奴だ。
じゃなかったなんて骨だ。
ここぞって時に足を引っ張る習慣があるままです。
「よいしょっと。全く困った仲間だね。本当」
「リル、ありがとう。レウスさんはいつもああなんだ。放っておくと嫌な予感がするよ」
リルに引っ張られてどうにか真っ逆さまは免れたが、レウスさんは……。
「もう遅いみたいよ、ほら」
「なんだお前ら!? 俺のこと忘れたのか? いけ、死神の使い! こらしめろ!」
「ふわー」
「ふわー」
「ふわー」
「いけ!」
「ふわー」
おいそのコントやめろ! うわぁ、十匹は来やがった。
あ、骨がバラバラに砕け散った。
バラバラの骨が戻っていくシーンはいつもながら怖い。
「ここは僕に任せてよ。模倣、邪眼!」
灰色の視線が一匹を襲いあっという間に封印する。
模倣であの威力。その技の本家本元が怖すぎる。
できればお会いしたくはないものだ。
「邪術燃強糸」
灰色の糸がキメラに絡みつき、灰色の炎を上げながら燃えていく。
サラも力をかなり戻したようで、強力な邪術を使えるようになってきていた。
こちらも封印完了。
「んじゃリル、やろうか。昨日の練習の成果を」
「ああ、そうだね。レウスさんはいいのかい?」
「うん。罰を与えないと」
「ん? 俺に何かくれるのか?」
『赤星のプラネットフォール!』
俺とリルは協力技の練習をベルローゼさんとの特訓でずっとしていた。
ようやく完成した技がこの第一弾だ。
プラネットフォールの隕石に俺の赤い星を乗せる。
だいぶ二人で疲労するがその威力は申し分ない。
「それたのは俺様がやるよ! 風刃斗! 邪臥斗!」
「え? 邪臥斗?」
「フェル様に温泉で習ったんだ。へへへ、すごいだろー!」
すげー、怖いです。フェルドナージュ様にまた一歩近づきましたね……将来は可愛い
フェルドナージュ様を目指して下さい。怖い路線には走らないでおくれ。
――俺たちがキメラ数十匹を倒し終わると、イーファは驚いていた。
「ここまで強いとは、恐れ入った。協力技といい、息ぴったりだな。私もいつか其方と協
力して戦いたいものだ」
「王様と協力って恐れ多いきもするが」
「なに、元は武器を取り戦う野蛮な王だった。戦闘は十二分に行える。それより先を急ぐ
としよう。そこの穴だ」
「げっ。よりによってここかよおーーーーー!」
再び三人でトラウマを思い出し、穴に入っていくのだった。




