第百八十話 ティソーナとコラーダの所在
俺たちはモンスターを退けた後、少し下り道になっている道を進んでいる。
「再度念話を可能にしたぞ」
「有難うドーグル。イーファ王、さっきの話の続きだ。神話級アーティファクト
はどんなものなんだ?」
「イーファでよい。アーティファクトはその名を神剣ティソーナ・神剣コラーダという。
二対で一振りの剣だ。一本は隠してある。二対無くても強力なアーティファクトだ」
「ほう、二つセットのアーティファクトも存在するのか。この世界は俺の知らない
事ばかりだな」
「その剣に関して提案がある。其方に所有者となってもらいたいのだ。永久的に」
「永久? つまり誰にも献上せず俺自身に使えと?」
「そうだ。其方は既に私の一部。あの剣は誰にでも扱える物ではない。ライデンは
それを理解しておらぬ」
「使用者に特別な権利が必要ってことか。つまり妖魔の皇帝だとしても無理……か?」
「ああ。不可能だ。其方も私を封印していなければ真の力は発現せぬと思われる。
ただの剣としては十分強いと言えるが。だが、そのままでは通常のアーティファクト。
名刀中の名刀であるユニークウェポンに、付与能力などで劣る可能性はある」
「そんな大それたもの、俺が使ってもいいもんかね。分不相応な気がするけどな」
「それは今の其方なら……という話だろう。修練を積めばきっとうまく使ってくれる
はずだ。私はそう信じる」
ちょっと照れ臭いが、王様に褒められてしまった。
まずは皆と合流して王様の話をしないとな……。
誰にどこまで話をしていいものかがわからない。
メルザたちはいいにしても、情報が不足している。
迂闊に傭兵斡旋所のレンズにもいけやしない。
ライラロさんやシーザー師匠には話しても平気だと思うが、念のため確認はしよう。
「……なぁイーファ。ライラロさんやシーザー師匠に話をしても平気か?」
「其方、シーザー・ベルディスの弟子なのか? これは驚いた。シーザーも
ライラロも私が信じる数少ない者たちだ。力になってくれれば心強い」
「今は俺たちの幻妖団に入ってくれてる。師匠とは三夜の町で知り合ったんだ。
生い立ちとか詳しい事は知らないけど」
「そうか。彼はこの国出身で、後に活動を広げたらしい。最終的に私が匿い
トリノポートへと導いた。シーザーとベルディス。元々は一人だったのだが」
「っ! どういうことだ? 師匠がベルディスと呼ばれているのは気になって
いたんだが」
「私の口から話していいかどうか迷う所だ。知りたければ本人に直接尋ねるがいい」
「……そうしよう。他人の事をあまり詮索すべきではないしな。先程の話に戻そう。
その神話級アーティファクトの所在を教えてくれないか」
「一本はベッツェン近く、ガルドラ山脈という場所にある。所在は私しか知らぬ。
もう一本は知人により封印の地に封印されている」
「二本で効果を発揮するのに別々な場所へ封印してあるのか?」
「一本でも私や私の同族に引き継がれた者なら十分な強さを発揮する。二本揃った
時の強さは想像もつかぬ」
「封印の地ってのは何処に?」
「海底だ。向かう手段は限られる。故にコラーダをガルドラ山脈で入手する方が
まずは早かろう」
「分かった。そっちはトリノポートに戻ってからだな。一旦念話を終わろう!
外が近いから警戒しないと」
念話を中止して出口方面を見る。
外に光は見えないから、もう夜だな。かなり時間が掛かった。
この道を辿らなければ酷い事になっていたかもしれない。
ライデンの事、常闇のカイナの事、分かったことは多い。
古代樹の図書館へ到着する前に、随分と情報を得る事が出来たのは
いいが、用心する事も増えた。
イーファの事はすぐに伝えず、しばらくは伏せておこう。
――幸福の絶壁、別通路の出口付近まで到着した。
周囲は暗いが見回して確認してみる。
ソードアイのターゲット能力に反応は、今の所見られない。
「ドーグル。ここからどう行けばいいかわかるか?」
「西に向かえば円陣の都が見えてくると記憶している。まだしばらくかかる。
用心するのだ」
「ミドーは出さないほうがいいな。ここからは目立たず慎重に動こう」
移動速度が相当早くなった今の俺なら、一人でああれば、素早く移動出来るだろう。
古代樹の図書館へ向かうにあたって、ライラロさんからは、この絶壁を境に
妖術やモンスターを出したり、明らかにモンスターの技っぽいのは、使用を控えるように
注意された。
そうしないと、通りがかった人から、攻撃を受ける可能性があるかららしい。
……そうは言ってもうまくは事を運ばせてもらえないエリアだな、本当!
目の前にターゲットが複数反応。
進めど進めど戦闘。キゾナ大陸、ハード過ぎるだろ……。




