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第百七十一話 ヘンテコな岩だと思ったら

 無事に小屋で夜を明かした俺たちは、奇岩海道の先を急ぐ。

 ここから円陣の都への道は、海道を抜けて知床農林を通り、幸福の絶壁の洞窟部を抜けて

辿り着く。 

 ミドーが通れない幅しかないので、現在は徒歩。

 リルは少し作業があるらしいので、俺の中に封印したらカノンが困惑していた。

 そりゃそうか。

 説明しても上手く伝わらないので、妖魔の力という事にしておいた。

 妖魔でも出来るのは俺だけなんだけどね。


「この海道ってかなり長いよな。後何日かかるんだ?」

「そうね……まだしばらくかかるわね。他の道より安全な分、少し遠回りなのよ。

三人なら安全な道を行かないと不安でしょう?」

「そうだな。リルのシャドウムーブだって、リルが疲れたら徒歩だしな」

「あら。安全に行く方法まで持ってるの? 本当に凄いわねあなたたち」


 あきれ顔のカノンだが、俺たちは自分たちの事を凄いとは思っていない。

 あまりにも凄い者たちが周りにいるせいで、感覚が少し麻痺しているのかも

しれない。

 ベルローゼさんやフェルドナージュ様、師匠たちを見たら、きっとカノンは

卒倒する。


 ――そのような事を考えて進んでいると、ふと俺のターゲットに反応がある。

 あれ? いつもと少し違う気がするな。敵の気配って感じじゃない。

 なんだろう? こっちの方だな……と岩しかないや。

 あれぇ? なぜだろう。俺のスカ……いやいやターゲットは故障しやがった

のか!? 

 目元で爆発はしないで欲しい。

 しかしこの岩がなんだってんだ? 


 カノンも俺の行動を訝しんでいる。

 慎重にヘンテコな岩を調べる俺。

 何してるんだろ。

 触っても叩いても何もない。

 ただの岩に見える。

 めんどくさいからぶっ壊してしまおう。

 どうせ岩だし。


「赤星の突」


 岩にカットラスをぶっ刺して切り刻んだ。

 ずずーんと岩が壊れる。

 なんとその下には! 


 また岩があった。

 なんで岩の下に岩があるの? 

 そこは隠し通路でしょう? 


 その岩に触れると―――――あれ? 

 ここどこだ? 


 さっきまでとは違う場所? 

 というより違う空間のようだった。

 なんだここ。領域に似てるような? 

 空気間というか温度間が違うな。


「人間がここに何しに来た」

「え? 誰かいる? 俺、人間じゃないけど」

「二足歩行で喋る生物を我は人間と呼ぶ」

「はあ……じゃあそれでいいです」

「して人間が何しに来た。ここは海星神イネービュ様の庵。ただの人間が

来れる場所ではない。何しに来た」

「や、何かターゲットが反応したから岩切って岩に触れたらここに」

「世迷言を申すな。海星に沈めるぞ」

「本当なんですって! そもそも海星って何ですか。星は宇宙にある物でしょう? 

ヒトデか?」

「何故人間がそれを知る。あり得ぬ。お主は何者ぞ」

「地球で死んで生まれたら全盲で半幻半妖になった、いびつな存在だよ」

「……噓はついていないようだ。神に嫌われ、そして神に愛された者よ」


 ……は? 神ってだけで胡散臭いのに、神に嫌われ愛される? 

 意味がわからん。腹立だしくなってきた。


「……俺のどこが神に愛されてるって?」

「お主がここに来れたからだ。星の使い手に相違ない」

「ああ。確かに赤星なんて技の適性があったよ。上手く使えないけどな」

「赤星に導かれる者か。何れ海底に参り我を訪ねよ。力を与える。水に嫌われ

ぬようにしてやった。それから――――」

「はい? 水に嫌われない? 赤星に導かれる? おい! おい!」


 頭が真っ白になり、気付くと元の位置にいた。

 あれ、目の前にあったはずの岩が無い。何だったんだ? 

 リルが封印から出ていたので聞いてみよう。


「リル、さっきのってなんだ?」

「うん? 僕は何も見て無いよ?」

「カノン、俺何してた?」

「岩切ってぼーっとしてたわよ。呼んでも反応無いし」

「……海って星とかあるのかな。神様とか」

「あら、あるわよ。遊魔の常識ね。海星神イネービュ様を祭る歌もあるわ」

「そのイネービュってのに会ったって言ったら信じるか?」

「まさか。伝承でしょ? いるわけないわよ。そんなの」

「そうだよな……はぁ」


 俺は今日あった出来事の意味がさっぱりわからなかった。

 海に星。俺の赤星。もしかしたらベルローゼ先生なら何か知っているのかも。

 あの時聞いた会話の内容だけは忘れずに覚えておこう。


「皆、先を急ごう」


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