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第百六十七話 同行者

 突如話しかけられた俺とリルは、少し警戒しながら返事をした。


「僕らが向かうのは古代樹の図書館だけど」

「だから円陣に向かうんでしょ? 円陣の都のすぐ近く、知令由学園の

中にある古代樹の図書館に」


 そういえば現地の詳しい場所は着いてから聞こうとしてたので、知らないな。

 地図は持ってるがこの町周辺までだ。


「俺たちそんなに現地の事、知らなくて」

「なら案内してあげてもいいわ。その代わり一緒に連れて行って欲しいのよ」


 俺と女性が話していると、珍しくリルが小声で割って入ってきた。


「外で話そうか。ここだと他の人に聞かれるよ」


 リルの言う事はもっともだ。


 ――俺たちは店主に礼を言い、店を後にする。

 鈴鈴の町で、あまり人がいない場所を探した。

 警戒したまま周囲に人がいないかを確認して、リルが話しかける。


「君、遊魔だろう。どうして僕らを狙った?」

「え? 何言ってるのよあなた。私はどう見ても人間でしょ」

「人間の定義って何だい? 僕にわかるように説明してみなよ」

「そんなの……人同士の間に生まれたものでしょ?」

「つまり人以外から生まれたらそれは人間と認めないって事かい? 君自身

の事だけど」

「ちょっと何言ってるのよ、失礼じゃない!」

「僕らも人間ではないけどね。妖魔だから」

「何言ってるの? 妖魔がそうそう地上にいるわけないじゃない。どう見

ても人間よ」

「だから人間の定義って? 外見でわかるものなのかい?」

「あ……」

「それで、俺たちに何のようだ? 別に危害を加えないなら、こちらも

無用な争いはしたくない」


 一応これでも先を急いでるんだけどな。

 あまり出発が遅れると主が心配する。


「言ったでしょう? 円陣の都まで行きたいのよ。その……わかった。

隠してご免なさい。私はあんたの言う通り遊魔よ。ほら」


 そう言うと、変身していたのか姿が変わる。

 綺麗な紫の長い髪をしているが、小さい角が二本生えた女性。

 両腕には赤の紋様と紫の紋様が刻まれている。

 遊魔特有のものだろうか。


「キゾナ大陸だと、この外見ならほぼ間違いなく襲われるわ。聞いた事ある

でしょ? 長く変身してられないのよ」

「俺たちもそれを聞いて仲間の何人かは家に置いてきたからな。その遊魔が

なぜ円陣に行きたいんだ?」

「……今は話せないわ。ただ足手まといにはならないから。お願い!」

「そう言われてもな……俺たちも一応妖魔だから、行動は目立つし。

リルはどう思う?」


 あれ、さっきまで喋ってたリルが大人しいな。

 どうしたんだろう。


「喜んで連れていくよ! いいよねルイン? 僕はリルカーンて言うんだ。

君の名前を教えてくれないか?」


 えー!? リルさん? リルさんやー!? なぜこうなった? 

 もしかしてこれは……リルに春が訪れてしまったのか? 


「え、ええ。ルインにリルカーンね。私は遊魔カノン。よろしくね。

ところで妖魔なんて初めて見たけど、本当なの? 見た目はただの美男子

じゃない。ずるいわよ、そんなの」

「そう言われてもな。そもそも俺だってリルに言われるまで人だと思って

たし」

「へぇ。あんた物知りなのね。尊敬するわ」

「そうかい? わからない事があったら何でも尋ねておくれよ。

答えられる内容ならなんでも答えるからさ!」


 ……お花畑が見えるぞ。綺麗だなー。俺置いてけぼりだわ。

 続きはミドーに乗りながらだな。誰かに聞かれていいような話じゃない。

 ついでにカノンの衣類や帽子なんかも必要だろう。

 旅の準備を入念にしていこう。しばらくは三人で動く事になる。


 ――俺たちは港町鈴鈴で身支度を整えて、念のため傭兵斡旋所レンズに寄って

言伝を頼んだ。


 レンズでは同じ団員宛にメッセージを残す事が出来る。

 どのレンズからでもメッセージを確認出来るので、かなり便利だ。

 ミリルとはこれで連絡を取ったが、先に学園にいるようだ。


 準備を済ませた俺たちは、目的地とルートを確認する。

 ……神の空間も無いから道中の寝泊まりに不安が残る。

 食料も補給しないといけない。

 徒歩といってもミドーはいるから、ある程度町から離れた後にでも、使える

か確認しよう。


「ところでカノンは戦えるのか? 俺たちはそれなりには戦えるつもりだが」

「ええ。そうでなければ徒歩で向かうなんて考えないわ。この辺りのモンス

ターは強いから、覚悟しておかないと」

「それなら道中、お互いの力をある程度話し合って確かめよう。

全部は知らせなくてもいい。隠しておきたい事もあるだろうしな。お

互いに」

「わかったわ。それじゃ改めてよろしく。行きましょう」

「うん。楽しい旅になりそうでよかったね! ルイン」


 ……いやー、俺としては辛い旅になりそうな予感だぞ、リルよ。

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