間話 駆け出し幻妖団メル卒業
幻妖団メルは妖魔の活躍により、グリーンドラゴンを七匹も討伐してしまった。
二人が使用していた奴は、今度じっくり聞いてみよう。
ドラゴンの素材は勿論お土産に持ち帰ってきた。
レンズへ報告に行き報酬も受け取った。
既に十分な貯蓄が出来たが、ここで滞在して仕事をこなしている間に、ポイントは
かなりたまったようだ。
「そろそろ格の引き上げ、出来るよな?」
「ええ。リーダーの方、こちらの箱に手をいれてください!」
「俺様がやっていいのか?」
「ああ。入れてみな」
メルザが箱に手を入れると……箱の表面に文字が浮かび上がった。
「あなたたちの傭兵団の肩書は……! それなり! それなり幻妖団メル!」
「チェンジでお願いします!」
なんで駆け出しからそれなりなんだよ!
もうちょっといいネーミングは付けてもらえないのか。
ニーメが聞いたらかっこ悪いって言われるに決まってる。
……だが、結局チェンジは出来なかった。
一万ポイントを消費して残り三万ポイント程だったので、皆で話し合った結果
そのまま貯めておくことにした。
今しばらく、この町で依頼をこなしてもう少し成長してからキゾナ大陸を
目指そうという話になる。
あのグリーンドラゴンを退けた殆どが、アルカーンさんとフェドラートさんである
以上、俺たちの実力アップは必要。
周囲に俺やリルのプログレスウェポンへ吸い込むモンスターが居れば、早い段階で
強くはなれる。
――レンズの外に出ると、俺たちは一旦宿屋に戻る道を進む。
途中で皆に報奨金の一部を渡して、各々好きな物を購入していた。
俺が買ったのはメルザの好きそうな果物。パモがいたらなー。パモに会いたい。
この旅にはモフモフ癒しは無い。ブリキの玩具ココットはいるが……騒がしいので
基本置いていってる。マーナとニーメが相手をしてくれているけど。
――宿屋付近に戻ると……あれ? ベルローゼさん?
「なぜベルローゼさんがここに? どうやって来たんですか?」
「ここまでは星黒影の流星で来た。アルカーンに帰還命令。代わりにそちらへ私が同行する」
「わかった。弟と妹を頼む」
「ああ。早く行け」
あの人絶対ここまであっさり来たよ……俺も似たような技が使えるか試してみた
が、そもそも影になんて潜れないし影は赤くない。諦めた。
ベルローゼさんの話を聞き、アルカーンさんは自らの空間を広げた。
本人だけの専用通路か何かなのか?
「アルカーンさん。お部屋は西の個室エリアの奥から三つ目です。好きに使って下さい」
「……わかった。早速時計部屋に改良しよう。あちらの時計文学はニーメに
良く学ぶよう伝えて欲しい。俺も見たかったんだがな」
「ええ、わかりました。伝えておきます」
アルカーンさんは空間の中に入って消えた。あれで簡単に移動できるのか。
妖魔国へはホイホイ行けないはずだから、領域まで戻れるのだろう。
本当にとんでもない妖魔だ。ここまでの旅では時術のほんの一部だけしか見ていない。
リルが劣等感を抱くのも無理はないが、味方で良かったとも思う。
アルカーンさんがいなくとも、ニーメは大きく成長出来るだろうし、大丈夫だろう。
そういえば、借りてた鍛冶用ハンマー返してないんじゃ?
戻ったらでいいのかな。
「そういえば貴様ら、ここにはしばらくく居ると聞いたが?」
「ええ。依頼をこなして実力を伸ばさないと。グリーンドラゴン一匹で苦戦……はっ!」
今確実に余計な事を口走った。
「ほう。竜一匹に苦戦とは、なまっているようだな」
「ついでに砂カバにボコられて死にかけたんだよな、俺様たち」
おーいトドメを刺さないでくれ! お仕置き確定してるのに!
「どうやらここで相当しごく必要がありそうだな。この黒星のベルローゼの弟子として
恥をかかないように、とことん鍛えてやろう」
「せ、先生。この町には沢山甘い物がありますよー」
「ほう。ならば貴様をしごいている間、それを見ながらゆっくり食すとしよう」
やべえ! 動揺して手順を間違えた! 甘い物を差し出すのはきつくなってからだった!
――こうしてアルカーンさんと入れ替わったベルローゼ先生に死ぬほどしごかれる
日々が始まろうとしていた……。