第百六十一話 メルザ用杖作り
フェドラートとニーメは杖作りについて詳しく知るべく
ロッドの町のスティッキースティッキーという店に来ていた。
「凄く変な看板だね、フェドお兄さん」
「そうですね。地上のお店はとても興味を惹かれますが、ここは特に……アネスタへの
いい土産を買っていけそうですね」
「お土産かー、僕も買っていきたいけど親分の新しい杖の材料買わないとなぁ」
「実はニーメ君にお願いがありましてね。材料は私が買うので、アネスタのために
杖を作って欲しいのです。報酬はそのお土産を私が買うという事で如何でしょう?」
「いいの? 僕頑張って作るよ! 有難うフェドお兄さん!」
二人は話しながら店内に入る。所せましと並べられた杖、杖、杖。
それに、グリップに着ける装飾品や素材など。
術使いなら誰もが憧れるような品揃えの豊富さ。この店に
敵う杖店は殆ど無いという。
「いらっしゃいませー。素敵なお店、スティッキースティッキーへ
ようこそ。素敵なお兄さんと可愛いお子さん」
「私の子供じゃありません! こちらで杖の素材を買いたいのですが……それと
杖作りに関するお話も伺いたい」
フェドラートとニーメは店員の話を聞き、買い物を済ませ宿屋ルールーへと戻った。
ニーメはフェドラートと早速杖作りに取り掛かる。
現在使用している金槌は、アルカーンより借りているオーシンの槌という物。
大抵の物は加工出来るが、あくまで借り物なので大切に扱っている。
鍛冶師として修練を積んだニーメは、幼いながら筋力にも洞察力にも優れる。
また、研究熱心でひたすら鍛冶に打ち込む姿勢から、アルカーンにとても気に入られた。
アルカーンが本来誰かに自分の物を貸すような事は無い。
フェルドナージュ様に献上するような事はあれど、貸すという行為は
ニーメが初めてだった。
そのハンマーを用いて、ニーメはある物を加工出来ないか悩んでいた。
その方法を考案してくれたのがフェドラート。
そのアイテムの特性を即座に理解し彼に助言する。
相当な知識を持っているからこそ可能となる。
ニーメはそのアイテム……以前ルインに託されたククルカンの宝珠を加工して
スティッキースティッキーで教わった通り、古代樹の節くれを削り杖を
二本作った。
一本はフェドラートの知人アネスタ用。
もう一本は主メルザ用。
杖先は少し蛇のような形をしている。
二対の美しい杖は主への献上品として十分な物だろう。
久しぶりの大作に、ニーメは満足した。
グリップの持ち手の片方は紅色、片方は緑色。
双方の身長を考慮しているため長さは違う。
ニーメはフェドラートに緑色のグリップの方を渡して、主のメルザの許へ赴いた。
部屋には多くの女性がいる。
姉と言い争ってる綺麗な人もいるので、ちょっと怖い部屋だ。
「親分の杖出来たよ! 握ってみてくれる?」
「おー、ニーメじゃねーか。俺様のために杖作ってくれたのか?」
「うん。僕が出来るのはこれくらいの事だから。いつもありがとう!」
親分が嬉しそうにしている。よかった。喜んでもらえて。
住む所も、鍛冶場も与えられてニーメはいつも貰ってばかりで負い目を感じていた。
親分であるメルザに少しでも喜んでもらえた。満足だった。
マーナもその部屋にいたのでフェドラートさんのお土産を渡す。
「マーナちゃん。これあげるね。僕のとお揃いだよ!」
「いいの? 有難うニーメちゃん。大好き!」
マーナの首のところに杖の飾りがついた首飾りをつけてあげる。サイズはぴったりだった。
マーナは可愛いぬいぐるみだけど、元々は人間の女の子。喜んでくれて良かった。
僕は精一杯出来る事をして皆を助けよう。僕を育ててくれるのはみんな。
みんなの事を棒は大好きなんだ。
いつもありがとう。




